「全然分からないけど、それでもいい!」桐島、部活やめるってよ ひゃくさんの映画レビュー(感想・評価)
全然分からないけど、それでもいい!
カナダ映画、『I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ』を観て、そういえば日本にも映画好き高校生がいたなあと思い出し鑑賞。
もう4〜5回は観ているが、やっぱおもしろい。
わたしは気が利かないタイプなので、映画の考察とか裏に潜むメッセージとかは推し量れないが、映画について思ったことを3つ。
①桐島の存在について
もう今更すぎて取り立てて言及するのも恥ずかしいがこれは個人的な感想なので。
この映画には「桐島」くんは出てこない。スクールカーストトップだった桐島くんが数日学校を休んでいる。どうやら部活も辞めるらしい。
学校全体(というか桐島くんに近い、スクールカーストの高い生徒たち)に衝撃が走り、うろたえ、泣き、叫び、走り、言い争い、「桐島」くんの凄さを分からないわたしは、ええそんなに一人の生徒に感情動く?という気持ちになる。
また、「部活辞めるってよ」というタイトル。
「辞めた」ではなく「辞める」。
「辞めるよ」、ではなく「辞めるってよ」。
たった、いち高校生徒が部活を辞めちゃうかもという伝聞だけで大リーグ選手の引退のように噂が走り、噂が噂を呼び、失望し、うろたえ、叫び、走り、言い争い(繰り返し)まあつまり人間の醜い言動を色々見られるわけだが、ええ、そんなに?なんか世紀末じゃん、なに、桐島くんって神様なの?って思ってたら、どうやら本当に桐島=キリストのもじりらしい。桐島(=キリスト、つまり信じるもの)を失った者、桐島に関わりない者(=スクールカースト下層グループ)の、色々が、なんか、面白い。(私の考察の限界)
②好きなことについて
わたしは長年、趣味などの好きな物を持つことを、心のどこかで軽蔑していた?軽んじていた?なんというか罪悪感があった。これは親のセンスない教育と真面目すぎる自分の性格由来の考え方なのだが、なんとなく言語化すると「お金(仕事)にもならないし、一生懸命やっても誰も喜ばない、人生の時間を無駄遣いするだけのもの」という感じ。
でもさ、色々経験して来て、趣味、てか、なにかを好きという感情が、私の人生にとって一番大事なものかもと思い始めて来た。趣味っていうか、なんか、生きがい。そのためだったらどんな努力もできるし、てか、努力が努力に思えない。いくらでもやれるし、いろんな工夫が思いつく。
好きなものがある前田くんとか吹奏楽部長とか野球部部長は、キリストがいなくなっても強い。誰にも寄りかからない、自分の中に自分だけの好きという信念があるから。それが、このどうしようもない世界で生きていく方法だから。
ラスト、東出くん役のかっこいい子が前田くんに「将来は映画監督ですか?」と問い、前田くんに「いや、映画監督は無理」と言われるシーン、すごく良かった。映画を仕事にするわけでもない、誰かの役に立つわけでもない、自分の才能の限界も分かっている。でもやっぱ好き!てかやらんと気が済まん!ってやつ。だけん東出はあんなに食らった表情してたんやろ?なんか、それって最強じゃん?(私の語彙の限界)
③桐島の登場シーン
終盤に、桐島(と思われる生徒)が屋上の棟的な部分から少し下のフロアに飛び降りるシーン。これは何を表しているのだろう?とずっと気になっていた。確かに屋上がキーの映画だが、久々に学校来て屋上の上でたそがれるか?そして飛び降りる?何それ?
考察サイトをカンニングすると、スクールカーストから降りる、カーストトップの位置からひらりとこぼれ落ちる(個人的超訳かも)ことのメタファー(表現間違ってたら恥ずい)と書いてあり、妙に納得した。
あと、桐島(と思われる生徒)と唯一すれ違うのが演劇部だが、みんな屋上から降りてくる桐島を見ていない。主人公の前田だけが、少し振り返って不思議そうな顔をする。
イケイケグループ(死語)たちが、必死こいて全力疾走で探し回っている桐島なのに。
え、桐島ってほんとにいるの?幽霊のメタファー?(これは確実に表現間違っている)と、いつのまにかわたしの目にはホラーに映りはじめてており、しかしそんな息継ぎはできないほどに登場人物それぞれの心情、場面が重なり合う。
キャスト、全員良かったよなあ。
特に松岡茉優がまじで嫌な女すぎて感心する。あと橋本愛が美しすぎる。スクリーンで光ってた。
しかしこれは映画館で観なくてよかった。なぜなら一度観ただけではわたしには理解が及ばないから。わたし馬鹿です!!!って言ってるみたいで恥ずかしいが、全体を把握し、辻褄を理解するのに3回はかかった。
まあさ、難しいこと分からなくてもいいよね。ちょっと観ただけでも、学生時代特有の、空気を読み合うあのうわべの会話の感じとか、窓から見える校庭の風景とか、クソ狭い教室の息苦しさとか、部活動ヒエラルキーとか、誰と誰が付き合っててここは仲悪くてとかのヒリヒリ感とか、制服の着崩し方とか前髪の整え方とか、もう一気にあの高校時代の空気を思い出した。ぎえー。
それを、余計なセリフなしに表情や声のトーン、目線で表現している感じ!やっぱ俳優さんすごいよ!!
ストーリー構成、俳優陣の演技、それぞれの心情、ゾンビ映画、メタファーの考察(そもそもメタファーって何)、まだまだいろんな楽しみ方ができるはず。あと2回は観たい。
ものすごく長くなってしまった。
でも、いいのだ。わたしは、文章を書くことが好きだから!!!!