おおかみこどもの雨と雪のレビュー・感想・評価
全195件中、121~140件目を表示
細田守監督の力
総合85点 ( ストーリー:80点|キャスト:80点|演出:90点|ビジュアル:80点|音楽:70点 )
狼人間という空想の話を持ってきておきながら、それを現実的な家族の話として愛情と人生の選択を上手に取り上げていた。夫のわずかな貯金もいつまでも続かないだろうし、家族の生活を母一人でどうやって支えたのか、助けてくれる大学の友人はいないのかというような突っ込みどころもある。でもそのようなところをばっさりと切り捨てて、描きたいところを集中して描いてくれるのは本筋がわかりやすい。事情のある特殊な子供ではあるけれども、結局は愛する我が子に惜しみない愛情を注ぐ母の姿と子供たちの成長、人生の岐路を美しく見て取れて、悲しみも含みながら幸せな気分にもなった。夫との出会い、子供たちとの関係も純粋な描き方で綺麗だった。
映像は、時々実写をコンピューターを使って取り入れたものをアニメ処理して使っているように思える。悪く言えば手抜きともいえるが、綺麗だし労力の節約にもなるので良くないことばかりでもない。それが良いのか悪いのか、このあたりの判断は難しい。
「時をかける少女」「サマーウォーズ」と細田守監督の過去の作品を観てきて、今回のこの作品で彼の演出力の高さを確認できた。私はこの監督が気にいったし、今後の日本の映画界に大きな足跡を残す人となってもらえると期待しているし、今後の作品も楽しみだ。
花の強さ
ここまで賛否分かれるアニメも珍しい。
先日金曜ロードショー録画を鑑賞。
私は比較的に面白く見れた。物語中盤の雪原を走るシーンは感動とも違う、何かこの家族の幸福感にあてられて涙してしまった。素晴らしいシーンだと思います。
ジャンルとしてはファンタジー映画ですが、多くの物語とは構造が違っている。現実世界にファンタジー素材が介入して非現実を作り出すのではなく、逆にファンタジーの人間(おおかみ)が現実でどう生きていくかの物語。結局現実社会で個人がどう生きていくか。構造的には現実の社会の映画の様に思えます。
おおかみこども達の存在が現実の差別やら子育て問題の社会構造の問題の比喩になっている様に見えて物語では全くそこには触れません。問題提起してる描写が感じ取れるのに一切をスルーされると見ている方はフラストレーションを感じざるを得ません。
先のファンタジー逆転の構造が鑑賞者を惑わせる要因となって監督がいくらファンタジーとしてその中の世界を美しく描いても観客は現実から抜け出せない。何か心の何処かで違和感や"で、これからどうすんの?実際"という無粋な感情が生まれてしまう。
要所のシーンの美しさや、こどもたちの成長の演出はとても好きだけど、以上の事から全体的に惜しい印象が否めない。
現実感と非現実感のバランス
何とも、後味が微妙な作品なんだろう。
皆さんの評価が二分化されているのもわかるなあ。非現実的なファンタジーとしてみても、面白いし、子供にも見せられる。現実感を求めて、実話としてみると設定のディテールが少し甘いし、生活って悲壮感がやっぱり甘いなって感じてしまう。だからバランスなんではないでしょうか。アニメーションって(特にジブリ作品は)どちらかに徹底されていたのでないでしょうか。だから、見る人は明確であり、、みたくない人は避ければ良かった。そういう意味では、この作品、評価に困る。キャラも可愛いし、ファタジーとも言えるが、ストーリーは微妙、突っ込み所満載です。言いづらいんだが、まあまあとしか言えない。ファンタジーに癒される年でもないし。かといって全面的に否定するほど、ひねくれ者でないし。なんか、レビューし辛い作品でした。
オタクが一般人向けに映画作ってあげました
つまんね。
ほ~ら狼子供かわいいでしょ~、とか
ここで号泣してね~、とか
監督の狙いが透けて見える映画。
これで感動できないのは素人だというのなら私は素人で結構です。
オタクが一般人向けに映画作ってあげました臭がすごい。それに、一般人向けに作った割にはオタク臭がすごい。
サマーウォーズもそうだけど、あの人物の大袈裟で不自然な動き方といい、御都合主義丸出しの設定、物語展開といい、この人は秋葉原から外に出られないんだなあと思ってしまいました。
狼子供も、獣臭そうな狼にでもすればまだ見直せるのに、オタク受けしそうな小綺麗なビジュアル。
人物も、顔の横の毛の書き方が綾波レイそっくり。
どこか、いや全体的にオタク臭いんだよなあ…
ああ、だからハウル降ろされたのか。
作品の至る所にトトロのオマージュという名のパクリが見られますが、そういうのがちらつけばちらつくほど、ああトトロって凄かったんだなあ(別に好きではないけど)と思い知らされます。
個人的に、雪が男の子に怪我させちゃって車の中でごめんなさーいって号泣するシーンは、サツキがお母さんが死んじゃったらどうしよう!っておばあちゃんの前で号泣するシーンのパクリだと勝手に思っているのですが、今まで散々ギャーギャー泣いたり喚いたりしてきた雪が今更ここで泣いたってあんまりグッと来ません。サツキは今までいい子だったからあのシーンで感情爆発させる事に意味があるのに。
あと、あの転校生の男の子の、他人との距離の取り方がなってないのが(初対面の女の子にいきなり獣臭いと言ったり、素っ気ない雪に執拗につきまとったり)、二次元で生きている人の描く世界だなあと思いました。
最後に。
バツイチのくせにいつまでたっても大人にならない少女気取りのぶりっ子、宮崎あおいの声が耳障り。以上。
人間性が意外にリアルでした。
悲しい映画でした
金曜ロードショーにて、初めて観ました。
映画館にまでは観に行くほどではないまでも
興味があった映画でした。
ですから、肯定的な視点でいましたが、、
とても悲しくなりました。
花とおおかみ男は、、一体何なんだと、、思いました。
全く持って、こんなに不愉快な映画は生まれてはじめてです。
子供達が、苦しむのは明らかに分かり切った話で
一人ならまだしも、二人も身籠って生み、、
無責任極まりない、大人としてありえない。
通常の人間にはなりきれない苦しみが
子供達の人生にのしかかるのは当然で
なのに、
花は最後、満足気な顔、逆に 雨の選択を許すがごとく表情。
同じ母として、許せない。
雪も、雨も、花のそばから離れ強く生きていくような想定ではあっても
それは、花とおおかみ男が子供達の人生を無責任に扱った結果。
途中出てくるショウタ君の親も、子を捨て男に走る。
だから、早く大人になりたいとつぶやく雪に頷く。
この映画に出てくる大人は
ただの性欲と自己愛を肯定する醜い大人ばかり。
最低最悪の映画。
気分が悪くなった。
子を持つ親は、ほとんどが子の人生に責任持ち
精一杯守る。
これは、この映画は、おかしい。
勿論子供が親を守ることは美しいかもしれないが
花は子供に守られすぎ。
よく虐待を受けた子供が
どんな状況でも、親を擁護する言葉を紡ぎ出すが、、
そんな、様相と同じだった。
それとも、
子殺しさえする身勝手な、大人になりきれない親への
メッセージなのか。
こんなにも気分を害する映画は無いと
一緒に見ていた子供へ話した。
悲しい映画でした。
全く感情移入が出来なかった・・・悲
細田作品は好きな方です。
全体的に評価の高かった本作品を楽しみにしていたのですが、
私には全く合わず残念でした。
エンターテイメントでは無く、ヒューマンドラマとしての映画でした。
そして、合う合わないが出やすい映画だと感じました。
他の方の評価にも記されていますが、
本作品は登場人物の誰かに感情移入が出来るかどうかがキーのようです。
自分は全く、誰にも感情移入出来ませんでした。
確かに描写の美しさや田舎生活の素晴らしさはあるのかもしれませんが、
「(苦悩等も含め)素晴らしさ」の押しが強く、長い。
自然描写の中にも風土や文化、歴史等の意味があれば良いのですが・・・
ストーリーは、様々な場面において物事の因果関係の表現が
欠如、あるいは、不明瞭であり、
それを見てみないふりするには、
ファンタジー感やエンターテイメント性が掛けており
妙な所で妙に現実感を出されて、概ね中途半端。
自分のカチカチの頭では追いつけません。
加えて声優陣、雪のナレーションが小学校の音読会の様で
気になって私の耳には言葉が入らず、
花の声も「あおい様」がちらついてしまい・・・。
見方を変えると純朴さは出ているのかもしれません。
とはいえ、花の葛藤や雪・雨の成長の表現において
子育て経験者、子供好きの方、懸命に自立をされてきた方などから
支持される理由は分からなくも無く、
良い悪いで二元的に評価するならば、良い映画でした。
映画という媒体には向かない話
夏に見たい映画
ジブリの「風立ちぬ」が自分はダメ派だったので、こちらの映画の方がよいという
レビューを見てすぐにDVDを借りました。
結果、こちらの方が断然よかったです。
風景の描写の美しさや、コマの使い方、人物の見せ方、どれをとっても感動しました。
普段ジブリ以外は現代アニメを見ないのですが(ジブリも最近は惰性で見てますが)、
これは他の方にもおすすめしたいです。
ストーリーも構成がしっかりできているので、人物に感情移入しやすく、
自分の小さかった頃、娘時代を卒業した頃、(母にはなってませんが)結婚後など
どれをとっても、「ああ、そうだったよね」というシーンに出会えました。
もともと「ど田舎」育ちだったので、畑のシーンも「そうそう!」と
思わずうなずいてしまいました。
また、テンポもよいので、作品にぐいぐい引き付けられました。
☆4.5にしたのは、自分の人生を変えてしまうくらいの衝撃とは
ならなかった点で5にしませんでしたが、風景描写の美しさはもっと見たいと
思う作品でした。
中の人は多分もっとしたたかだぜ。
前作『サマーウォーズ』で一躍日本のトップアニメーターとして認知されるようになった細田守だが、この『おおかみこどもの雨と雪』もまた、7月から長期に至るまで上映され続けているということを鑑みれば、その評価が非常に高いということがうかがい知れる。主人公・花の愛した男が実は狼男で、彼との間に設けた子をシングルマザーとして田舎で育て上げるという趣旨は全作同様、田舎の人々の温かさという回帰的な羨望や、家族という社会における最小のコミュニティをモチーフに扱ったものだといえるだろう。私的には、映画を観始めて数十分で「これ賛否両論、どころかアンチと信者に極端に分かれそうだ」という感想を持った。それほどまでに、肯定要素と否定要素がこの作品には混在している。
否定的な側面として、ディテールを盛り込むことによって起こる物語の破綻が挙げられる。主人公の花が奨学融資でバイトして苦学生するのは良いとして、クリーニング屋のバイトで仕送りなしで生活できるかどうか疑問であるし、信念持って勉強してるのに狼男という圧倒的マイノリティと避妊もせずに子供を作るし、ワープア街道まっしぐらなのに二人目までつくるし絶滅種の父親がゴミ収集車で片付けられるし引越し屋のトラックの運転手で長期間親子三人が暮らしていける貯金なんて残せるわけないし休学した学校どうしたのか気になるし(休学中も学費かかるし、中退は奨学金一括返済ですよ?)予防接種とか人間でも犬でもどっちかでやっとかないとマジでプロプレムだし田舎の人々の描き方が紋切り型だしあんなでっかいボロ屋を一人でキレイにできるわけないし野菜作りを失敗しているのって絶対長期の出来事だからそのあいだ生活どうしてたのか疑問だし新しく始めたバイトが安すぎるし12年間で子供たちを「育て上げた」って言うには短期間すぎるし、後どうしようもなく宮崎あおいの声から「森」の香りがするなどなど、ケチをつけ始めたら際限なく出てきてしまう。ディテールによってリアリティが失われているのなら、それは肯定されるものではないし、そういう面ではこの物語は失敗している。だがそういった批判を踏まえた上でも、少し視点を変えれば逆方向には細田守の理想が、冒頭の質感を感じさせる花々のように咲き誇っていることを観客は知るだろう。
主人公・花はひたすら受け入れ続けてきた。狼男という夫を、その血を受け継いだ子供たちを一人で育て上げるという道を、あらゆる困難を笑顔一つで受け入れた。そしてこの花の「受け入れる」という態度に、観客は細田守の人生観や世界観(正しい用法での)を垣間見ることができたのではないだろうか。社会にしろ自然にしろ、個人はその大きな渦にただ飲み込まれるしかない。しかし、そこで人が最初にして最後の強さを発揮できるとしたら、それは「受容」という強さではないだろうか。そして、父親が生前に言った「子供たちを自由に生きさせたい」ということの終着点に、雨は受け入れたいものを探し出し、雪は受け入れてくれるものと出会ったのであるならば、まさにこの父と母はその生き方と残した言葉によって子供たちを導いたのだといえる。
終盤に、森に生きることを選んだ息子を花は「私はまだあなたに何もしてあげられていない……」と言って引き留めようとする。だが既に花は「受容」という、もっとも母として強い愛を子供達に与えていたのではなかっただろうか。この物語における愛とは、与えることではなく世界の受容の仕方だったはずであり、そして既に息子は母からそれを学んでいるのである。そこが人の世であろうと自然の中であろうと、その愛さえあれば、きっと子供達は母と同じく花の咲く丘で誰かと寄り添うことができるに違いないのだ。
抵抗や変革を行わず、しかし決して諦めもしない。「受容」という静かな生のあり方を大自然を使い躍動的に描いた今作、アニメーションがどうしようもなく「絵を動かす」というメディアである以上、これまでのアニメは「動き」を魅せることに終始するしかなかったが、細田は「受容」からなる「佇まい」をアニメで魅せることに成功しているのである。この技法を以てしてこの作品が革命的であるという評価は頷けるものがある。ただ、二時間弱という尺の中、駆け足で物語を進める必要があったためか、出来事の「結果」ばかりが先立ちそこに「動機を持った人間」の、特に「大人」の不在を感じざるを得なかった。そこが今ひとつ作品を楽しむ上で壁になっていたことが残念だ。
「時かけ」から劣化し続ける・・・・・・
細田監督作品は「時をかける少女」で好きになりましたが、「サマーウォーズ」を見て自分の評価がガクッと下がり、今回もまた下がりました。以下、その理由として4点挙げられます。
①冒頭で「母についての物語です」と断っているのに後半は息子と娘の話になってしまっている。話が一貫していない。おそらく子供も見ることを鑑みて子供達の話を入れたのだろうが、かえって話が散漫になった。冗長にも感じ、一緒に見ていた母も「まだ終わらないの?」とぼやいていた。
②「田舎の大自然の美しい風景」の描写がしつこい。「大自然の素晴らしさ」をテーマとして物語に組み込まないかわりに映像でアピールしようというのだろうが、かえってくどいと感じた。「『この美しい大自然を知ってもらいたい、大切にしてもらいたいんです』という気持ちは、もう十分伝わったからから勘弁してくれ」と言いたくなった。
③「おおかみこども」が全然関係無い。ファンタジーなモチーフな割に、物語を駆動させる装置以上の役割がない。これが例えばラピュタなら、シータの台詞『なぜラピュタが滅びたか、今分かったわ。(以下略)』にテーマが集約されるようにモチーフとテーマがしっかりと絡み合うが、本作には何の意味もない。
④確かに田舎の地域社会の人間関係には本作で描かれるような良い面もある。だが、排他の原理も強い。最近、田舎の村で村人のいじめから大量殺人が起きたが、こういう負の側面に対して監督は無頓着なのだろうか。
サマーウォーズもモチーフ(血縁関係のコミュニティ)に対して良い面しか語っていないが、相変わらずこの人はテーマに対して良い面しか語らない。
細田監督はポスト宮崎監督と言われていますが、自分は決してそうは感じません。
宮崎監督はテーマに対しても公平でストレートなメッセージをぶつけてきます。そして、そこに嫌みな感じがないです。
ですが、個人的な感覚で申し訳ないですが、細田監督の場合は何か嫌みな感じがするんです。主張がうるさい割にテーマに対して公平な態度ではない・・・・・・、そういう風に感じられます。
「雪」の無邪気っぷりが最高っ☆
これはアニメでもなんでもなく、母親の愛情の物語ですな。
いや、夫婦愛だったり・・
親子愛だったり・・
兄弟愛だったり・・
男児の独り立ちのはなしだったり・・
女児の初恋のはなしだったり・・
・・するのだな*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
てか、蒼井優さん(本作には関係無いが)もだけど・・
宮崎あおいさんのCVは破壊的に素晴らしいぞ。・゜・(ノД`)・゜・。
あめとゆきの声優さん?も上手!!!
ジブリの没落(*風立ちぬ見ないと分からないが)により、危機が囁かれたジャパニメーションですが・・
いえいえ何の何の♪───O(≧∇≦)O────♪
マッドハウスもだし・・
プロダクションIGもだし・・
もちろん細田さんはじめ本作スタッフも!!!
素晴らしいです!!!
日本のアニメーションは大丈夫!!!
谷村美月さん。
●サマーウォーズに続き、こちらにまで(つД`)ノ
☆評価は・・
DVD新作300円基準で(*^^)v
DVD買う度 ◎◎◎◎◎
モ1回見たい度 ◆◆◆◆◆
おすすめ度 *****
デートで見る度 ◇◇◇◇◇
観た後の行きたい土地】
里山?山里?田舎に行きたくなります。
観た後の食べたい一品】
焼き鳥をタレで(≧∇≦)
こちら、伯爵准品質保証作品です♪(*^^)o∀*∀o(^^*)♪
何回観ても飽きない
いまいち
蒟蒻シティー
オオカミの皮をかぶった底の浅い商業映画
まず、正直な感想としては「断片的なテーマをご都合主義でまとめた上にオブラートで包んだよくわからない映画」という感じでした。
細田監督が得意とするCGも多用していて映像は非常に綺麗なんだけど、とにかくテーマが不明瞭かつ不適切。
女子大生の主人公「花」は、学生でもないのに講義を受けている長身イケメンに恋をする。
イケメンは自分がオオカミ男であることを告げるが、そのまま愛し合って子供が生まれる。
本来、人とオオカミのDNAは構造的に異なっているのでどんなに頑張っても狼人間は生まれない。このあたりで「これはSFなんですよ」と視聴者にお断りを入れているわけだ。
それにしても、「俺はオオカミ男だ」とカミングアウトした男と避妊もせずに性交してしまうあたり、最近の女子大生の乱れた性を表現しようとしているんだろうか。
それにしても獣姦である。画面には裸の女性と狼が布団になだれ込むシーンが映し出され、序盤から居心地が悪い。
「そういうシーンを描かないと後半の説明がつかない」というのもわかるが、あえて描く必要性はあるのだろうか。長年タブーとされてきた獣姦を全年齢アニメで描くのは教育上どうなのか。少なくとも自分に幼い子供がいたら見せたくはない。飼い犬と性行為の真似事でもされたら大変だ。
なんというか、発想が同人誌レベルなのである。
その後、2匹のおおかみこどもを残して父親のオオカミ男は死んでしまい、母親はシングルマザーになる。
都会のアパート暮らしだったため、暴れる子供に隣人から苦情が来たり、事情が事情なために定期検診も受けないことを不審に思った児童相談所が押しかけてくるシーンは、現代の子育てのしにくさや虐待問題を暗に表現したいのだろうか。
結局、人里離れた田舎に引っ越すことになり、廃屋のようなところに住み始めるのだが、実際問題としてシングルマザーが(特殊なハンデを背負った)子供を人里離れた田舎で育てるというのは相当の苦労があるのではないか。
これは誤解を恐れずにあえて言うのだが、「特殊なハンデ」という意味では障害児を抱える親の子育ての状況とも受け取れる。
生まれつきの体の障害は染色体(遺伝子)異常によって引き起こされるのだが、異常な染色体を持った親からは同じように障害児が生まれてくる可能性が高くなる。
障害を持った人でも恋愛し、子孫を残したいと願う気持ちはあってしかるべきなのだが、そこに葛藤が生まれるというのはよく耳にする。「もし自分のような障害を持った子供が生まれてしまったら」という恐怖がつきまとう。
最近では「障害」と呼ばずに「個性」だという風潮もあるようだが、今回のおおかみこどものようにおよそ個性と呼ぶには特殊すぎるケースの場合、子育ては壮絶なものになるだろう。
「アニメだから」という理由でそのへんの苦労を難なくこなしてしまう母親は、男性の俺から見てもバイタリティあふれるスーパーウーマンに見えた。
監督が女性だったらもう少し違う表現になっていたかもしれない。というかそもそもテーマに選ばないだろう。
しばらくの間は「貯金で」子育てするという設定だが、役所の手当もなしに子供を小学校まで育てるのにどれほどの金が必要かを考えると相当額の貯金があったのではないかと思われるが、このへんも妙にリアリティがない。実家の親には子供がいることを報告しているんだろうか。
「となりのトトロ」に代表される自然をテーマにした作品は、環境問題や自然の大切さを問いかけてくるため家族で観やすいし、映画賞などでの評価も高いんだと思われるが、自給自足のために畑を耕し、地元の農家と打ち解けていくシーンは、田舎のすばらしさを表現したいんだろうか。狙いがよくわからない。
最終的におおかみこどもの二人は、女の子が人間の世界で進学するため都会で寮生活、男の子がおおかみの世界へ戻ることを決意して一家離散する。
母親は都会に戻ることもできたのだろうが、おおかみになった男の子がいつでも戻れるようにと田舎暮らしを続けているんだろう。
「しっかり生きて!」とこどもに声援を送る母親だが、これは視聴者の誰に対するメッセージなのか。
冷静に考えると、人間界での生活を選んだ女の子はいずれ恋をして、再びおおかみの子供を産むのだろうか。
そしておおかみの世界に戻った男の子はメスのおおかみと交尾して、やはりおおかみの子供を授かるんだろうか。
そのあたりの疑問をすっかり丸投げにしたまま映画は終わる。
ちなみに、おおかみの母乳は人間のそれと成分が異なるため消化できず、おおかみに人間の育児は生物学的に不可能なんだとか。
また、世界各地で報告されている「野生児」は、発見後数年で死亡してしまうケースがほとんどらしい。たいていの場合、育児放棄された子供が半野生化するのではないかと見られている。
SF作品にリアリティを求めるなと言われたらそこまでなのだが、この作品はリアルさを追求している場所がずれていて、しかも中途半端なので妙な違和感を感じる。
おそらくではあるが、映画の企画やストーリー作りの会議で
「おおかみと人の恋という設定はどうでしょうか?」
「最近は育児が色々と問題になっているので、そのあたりも散りばめて」
「自然も入れたいよね、壮大な山とか、雪景色で」
「小さい子が急に半獣化したらかわいいよね」
「子供は二人いて、それぞれ別の人生を歩むというのは」
「いいねそれ、子供の自立という暗喩になるね」
「リアリティは、ストーリーの邪魔にならない程度で」
「これでいきましょう」
みたいな打ち合わせがあったのが感じ取れてしまうのだ
利益回収が目的の映画産業ではよくある、ご都合主義のストーリーというやつだ。
何か1本筋の通った信念のようなもの(一番何を言いたいか)がないから、都合のいいシーンを無理な設定でつなぎ合わせて可愛らしい動物というオブラートに包むという。
まさにオオカミの皮をかぶった商業映画でした
「時をかける少女」や「サマーウォーズ」が良かっただけに残念。
ではでは
全195件中、121~140件目を表示









