劇場公開日 2012年6月30日

  • 予告編を見る

少年は残酷な弓を射る : インタビュー

2012年6月28日更新
画像1

セクシーでイノセントな19歳、新星エズラ・ミラー

一見ごく普通の家庭で育った少年が、周到な準備の末に凄惨な事件を起こす――。女流監督リン・ラムジーの新作「少年は残酷な弓を射る」で、あやしい魅力を放つ少年ケヴィンを演じ絶賛されたエズラ・ミラーは現在19歳。今最も将来を嘱望されている若手俳優の一人だ。来日したミラーに話を聞いた。(取材・文/本間綾香)

画像2

本作は、オスカー女優のティルダ・スウィントンが母親のエヴァ役で主演。自由奔放に生きてきた作家のエヴァは、キャリアの途中で授かった息子ケヴィンにうまく愛情を表現することができない。ケヴィンはそんな母親に敵意をむき出しにし、悪魔のような仕打ちを重ね、その憎悪は冒頭の事件へとエスカレートしていくのだ。

「ケヴィンは母親と同じ屋根の下で生活しながら、精神的に育児放棄されていた子ども。彼は物事の本質が見えてしまうレーダーみたいなものを持っていて、エヴァが懸命に良き母のフリをしているのを見抜き、バカにされているように感じたんだと思う。母親から与えられるべき関心を得られなかっただけでも傷ついているのに、そのフリをされることで、傷口に塩を塗られているような気分になったと僕は想像したんだ」

画像3

ミラーは15歳のときに本作の脚本とめぐり合った。これほどひきこまれた作品は初めてで、同時に「この役を演じなければ」と思ったのも初めてだったという。ケヴィン役のオーディションには約2年の歳月が費やされ、その間ミラーは人気ドラマ「ロイヤル・ペインズ 救命医ハンク」で好演を見せるなど、着実にステップアップしてきた。

「長い道のりだったよ。5回目のオーディションで、ティルダとの相性を確認する脚本の読み合わせがあったんだ。彼女はこれまで冷たくて意地悪な役柄を演じることが多かったけれど、実際の彼女は全くの正反対。思いやりがあって優しくて心の広い、素晴らしい人なんだ。いつか一緒に仕事をしたいと思っていたあこがれの女優だったから緊張したけれど、彼女とのテストはうまくいった。そして最後の6回目のオーディションで、映画の最も要となるラストシーンを演じたとき、なぜだか分からないけれど周囲の人たちが涙を流していたんだ。そうして僕がケヴィン役を手にすることができたんだよ」

8歳でメトロポリタン・オペラのチルドレンコースに入り、ルチアーノ・パバロッティの最後の舞台に参加した。すでに体が弱っていた彼が、劇場の観客を飲み込まんばかりの迫力でアリアを歌うのを見て、演技の道を志す決意をしたそうだ。俳優業と並行して、バンド「Sons of an Illustrious Father」のドラム/ボーカルとして音楽活動を行い、昨秋広がったウォール街の抗議デモにも参加するなど、興味のあることには積極的にコミットしている。今後、仕事をしたい監督・俳優は「ダーレン・アロノフスキー監督とフィリップ・シーモア・ホフマン」という答えからも、おう盛なチャレンジ精神が伝わってくる。

「少年は残酷な弓を射る」の作品トップへ