プロメテウス : 映画評論・批評
2012年8月22日更新
2012年8月24日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
閉ざされた未来の3D映像がその閉ざされた空間に見事にマッチする
70年代の終わり、ハリウッド映画の何かが変わろうとしていた。それまでの映画作りのシステムが行き詰まり、制作側も観客側も「新しい映画」を求めていたのだろう。そこに登場したのが、「エイリアン」「ブレードランナー」といったSF作品だった。リドリー・スコット監督によるそれらは、もはや誰もが夢見ることの出来なくなった未来をその暗さとともに描いたことで、その後のSF作品の語るべきひとつの道を切り開いたのだった。
それから約30年。フィルムからデジタルへ、2Dから3Dへと映画を支える技術が大きく変わろうとしている今、リドリー・スコットが作り上げたのはやはり決して遠方へと開かれない、閉ざされた未来の姿だった。3D映像がその閉ざされた空間に見事にマッチする。その先無しの行き詰まり感がスクリーンの向こうから飛び出してきて、見ているこちらの身体を包み込むのである。
物語は21世紀末を時代設定にした惑星探索の顛末なのだが、いくら光速で世界の果てまで行ったところで過去にたどり着くだけだというパラドックスが、酷く陰鬱な空気とともに示される。これ以上行き先無しの未来が奇妙な懐かしさとそれ故の胸の痛みを伴って、語られるのである。何だろうかこの身体の疼きは。生まれる前の記憶を呼び起こされながら宇宙の彼方へと放り出されるような。映画とともにたっぷりと旅をしてたっぷりと疲れた。
(樋口泰人)