シネマ歌舞伎 高野聖 : インタビュー
2012年3月16日更新
――映画にも詳しい玉三郎さんですが、いつ頃から映画をご覧になっていますか。
「1950年代、映画黄金期の『第三の男』や『シェーン』『誇り高き男』などを見ていますね。まだ5歳前後で、『天守物語』の印象と同じように、意味も文体も分からないのですが、感覚的に受け止めていました。邦画では、黒澤明監督、小津安二郎監督の作品。黒澤さんの時代劇はカツラでも、時代を考証し、人物像を考え、半カツラだったり本毛で結ったり、今でも出来ない程のものだと感心させられます」
「好きでよく見る監督では、晩年の作品が楽しめるベルイマン、美学を感じるビスコンティ、何でもありの楽しさのフェリーニ。良い意味で見る者のリビドー(本能のエネルギー)を動かす監督たちです。大河ドラマとしてはデビッド・リーン、仏映画のジャン=ジャック・アノーも好きです。ゲームのような映画はどうも……。映画は必ず映画館へ行って見ます。よくそんな暇があるねって聞かれますが、自分のための時間はしっかり作っています」
――舞台、映画、何事にもご自身の好みに徹した生き方ですね。
「ものに対する好き嫌いの感覚は、7歳ぐらいまでの感覚と今も同じですね。1歳半のころ病院で乗ったエレベーターの壁の色、お風呂を怖がって指を握っていたのを親が開いてくれた思い出、日本舞踊を始めたいと3、4歳で願ったことを鮮明に覚えていて、感覚の核になっています。幼児期のその感覚をずっと持ち続け、選択のバリエーションはあってもこの色がいいとか、好みは変わっていないように思います。これからも音も映像も自分の理想の世界に行けるようにと思っています」