「埋まらないはずの溝」最強のふたり すけあくろうさんの映画レビュー(感想・評価)
埋まらないはずの溝
鑑賞中ずっとニヤニヤが止まらなくてやばかったです。
特に好きなのが目一杯オーケストラの演奏を聴いたあとに、「今度は俺が」とノれる音楽と共に踊りだすシーン!
空気感というかなんというか、もう、最高。いや最強。
身障者と健常者の間には、関わる上で仕方のない、埋まらない溝があると考えていましたが、今作を観てそんな考えは吹き飛びました。
ドリスは、ひとの肩書やどういうひとかをみていませんでした。
フィリップも、周りから忠告されようとも、宝石強盗の前科のあるドリスを信用しました。
生きる世界も、感性もちがうふたりの、唯一の隠れた共通点はそこだったんだなと気づきました。
肩書、感性、身体的特徴、性感帯(笑)、その他いろいろ、身障者と健常者ではうまく噛み合わない部分、埋まらないはずの溝を、ドリスは気にすることなく…というか、そこは重要ではないと言われた気がしました。
大事なのは介護者と要介護者という関係じゃなくて、ふたりで笑いあえる関係性にあるのだと。
そういう意味では、序盤の面接ではドリスだけきた目的が違いました。他のひとは介護者としてやってきて、フィリップを要介護者として見ていましたが、
ドリスにとってはサインがほしかっただけであり、身体障害をみても「厄介だな」と軽くあしらい、のちにはブラックジョークまで言い放ちました。
溝など最初からないかのように接する、いや、そもそも溝なんてなくて、僕が勝手にそう思い込んでいただけなんだと思います。
埋まらない溝なんてない。
大事なことに気づけました。コメディタッチでありながら、裏に隠れたメッセージに胸を打たれるいい映画でした!
追記
木が歌い出して爆笑するところとか、ずっとひっぱってた書紀の女性との顛末とか、写真とか、まさにドリスが盗んだイースターエッグのように、ところどころにある笑える要素が面白くて、2時間があっという間でした。
ちょっと説明不足なシーンが多いなと感じましたが、もしかしてフランス映画ってそういうもので、余白を自分で想像して、楽しむものなんですかね?
なら楽しかったからよし!最強!