アニマル・キングダムのレビュー・感想・評価
全12件を表示
ムダに長い
長回しのカットが多めで、突然発砲シーンがインサートされ、緊迫感をあおる編集です。このパターンが多用されるので、静かめの、セリフが少なめなのに長回しのシーンがくると、「あー、こいつ殺されるんや」と展開が読めてしまうお粗末さ。
ストーリーの要は家族のためにやらなければいけないことと、正しいことの板ばさみに悩む男の子の葛藤と、冷酷に人を殺せる叔父の凄み、それぞれの役者の演技の見せ所なのに、余計な要素で映画をつまらなくしてしまっているので、残念な出来栄えの作品になってしまっています。
この内容なら、90分で収まったはず。ムダに長いと思いました。
2016.9.14
生活環境が作る「悪」
2017年のブラッド・ピット主演映画『ウォー・マシーン:戦争は話術だ!』や2019年のティモシー・シャラメ主演映画『キング』といったNetflix配給作品を近年は手掛けているデヴィッド・ミショッドが1988年にメルボルンで起きた警察2名を射殺し無罪判決を受けたトレヴァー・ペティンギルとその家族をモデルにしており、実話から着想を得て、脚本も手掛けた長編映画デビュー作品である。
母が麻薬の過剰摂取で死亡したことで、祖母のジャニーンに引き取られることになったジョシュア。母の死や疎遠になっていた祖母の元で暮らすというティーンエイジャーにとっては大事件が連続してしまい、気持ちの行き場がないのにも関わらず、ジョシュアは祖母の家族は犯罪によって生計を立てている犯罪家族でジャニーンも黙認しているという悪夢のような状態に更に苦しむことになるが、その中でも常識はわきまえている者や歳の近い友達のような者もいる。この何気ない日常はジョシュアの感覚を麻痺させていく。
やっていることは犯罪なのにも関わらず、家族としてのあるべき風景を垣間見えることができるのだ。つまり、日常に犯罪が定着としているが人間関係は良好ということだ。黒人街を扱った作品でもこの手の問題は扱われることが多い、自分の意思とは反して、環境によって人格が形成されてしまう。環境が作る悪だ。
その中に入ることでしか生きられなくなったジョシュアが、自分の意思とは反して次第に犯罪に加担する様になってしまうという過程をティーンならではの感情も入交り、ジョシュア目線で追体験させるという恐ろしく巧妙な映画である。
そんな環境の変化に目をつけたのが、ガイ・ピアーズが演じる刑事巡査部長のネイサン。ネイサンがジョシュアに接触するようになってからは、刑事と家族との板挟み状態になってしまうジョシュア。その中で裏切っているのではないかと疑う者も出てきたりと、ドロドロな関係性へと物語は進んで行ってしまう。
実は常識人であるはずの祖母が行動を操っていて、またジャッキー・ウィーバーが笑顔の中にも時々みせる狂気性が恐ろしい。この演技によって、第83回アカデミー賞助演女優賞にノミネートされたのは納得だ。
そんな祖母から逃げたはずのジュシュアの母はどうなったのか…薬物中毒で死んでしまった。そう考えると犯罪まみれの理不尽な状況でも、次第に得られた安心感はジョシュアを留まらせた、留まることしかできなかった原因ではあるが、ガールフレンドにあることが起きてからは、事態は一変してより複雑でスリリングな泥沼へ向かっていくという終始緊張感が絶えない作品であった。
おおーすごい。 ジョシュアのあの感じ、うまいなー。子供でもないけど...
おおーすごい。
ジョシュアのあの感じ、うまいなー。子供でもないけどもちろん大人でもない男の子の、大人から見るとなんも考えてないんじゃないの?と思ってしまう無表情さとか、でも微か〜に見える憧れや怯えとか。
そして周りがまたいいねえー。ああいう家族、いるよね。犯罪者かどうかはさておき。うわ、関わりたくないなあと思ってしまう家族。
どこまで実話なんだろ。
消化し切れない。(+×+)
何というのか・・・、
救われないというか、
落ちるところまで落ちてしまうのか、
自分の身を守るためには仕方ないのか、
ん~、消化し切れない。(+×+)
・・・とは言え、面白くなかった訳ではなく、
むしろ、面白いと思った方で、
だからこそ、家族が寸でのところで裏切ってしまうとか、
最後の最後は信じられない、とか、
そういう細かいところがリアルで、理解も出来て、
悲しい、というか、切ない、というか、、、
弱肉強食
面白かった。
まさに弱肉強食の中にポツンと置かれたシカのようなジョシュア。
初めは実の母親がヘロイン中毒で亡くなっても
部屋でクイズ番組をボーっと観ているような主人公ジョシュア。
まさに彼の無表情な演技は何も知らない子供そのもの。
その表情が終わりになるに告げて
弱肉強食の世界に立った顔つきになっている。
彼は良くジュースを勧められるシーンがあるのだが、
そこは全て断っている。
しかし終盤、彼自身からジャニーに対して
ジュースを買って来てくれないかと言うシーンで
ジョシュアが完全に目覚めたように感じた。
主人公の無感情さ加減
彼女の家のトイレで唯一、泣いていたが恐怖の為なのか?彼女の死に対してなのか?
一貫して表情一つ変えないで何かボーっとした感じの主人公が演技なのか単に大根役者なのか?
共感も同情も出来ない主人公のキャラには寧ろ苛立ちすら思えてしまうし彼女が死んだのも主人公が原因なのは間違いないし両親が可哀想だ。
冒頭に母親が死んでも無感情な顔した主人公の最後の呆気ない行動は今までの四苦八苦の意味がない。
利口に犯罪一家かと思えば一人の身勝手な行動で崩壊してしまうのは何ともジョボい。
母親も若作りがキモいし裏のボスなのだろうけれど劇中での存在感は薄い。
警官殺し以外の犯罪行為が一切、描写されていないからどんだけなんだかコノ一家は。
とにかく無感情なボーっとした主人公が嫌でしようがなかった。
人間の適応力
母親が急死し、祖母の家に引き取られた17歳の少年ジョシュア。しかしそこは、祖母を家長とする犯罪一家だった…。
オーストラリアの実際の犯罪一家をモデルにした犯罪ドラマ。
まるで“ゴッドマザー”のような祖母、盗み、恐喝、殺人…あらゆる犯罪で生計を立てる親族。
彼らも恐ろしいが、より恐ろしさを感じたのは、人間の適応力。
犯罪とは無縁で真面目だった少年が、やがて犯罪の色に染まっていく。
それは、父の仕事を嫌っていたのに図らずも父の跡を継いだ「ゴッドファーザー」のマイケルと被るものがあった。
例え最悪の環境でも適応し、図太く逞しくのし上がっていく人間の性。
果たしてジョシュアの将来は…?
淡々としていた
犯罪者一家の話だと言うのでどれほどエキサイティングな映画かと思ったら実に淡々として眠くなる映画だった。犯罪そのものよりも一家の人間関係や内面を描いていて、しかも冒頭は家族が多いので誰が誰だか覚えられなかった。
刑事も制服を着ていなくて、急に現れると誰だか分からなくて戸惑う。演出も演技もリアルでよかったのだが、もうちょっと短かったらよかった。
スーパーで刑事とお婆さんが対面する場面がすごくよかった。
ジョシュアはどう生きればよかったのだろう?
オーストラリア映画だが評判が良かったので、封切で観たかったが、近くの映画館で公開されていなくて、観逃していた作品だ。重い内容だが、いろいろ考えさせられた。人は環境によって変わってしまうのか? 実在の家族や、警官殺人事件などから作られたドラマだということだが、日本ではちょっと考えられらない世界だ。ジョシュアの父親は描かれていないが、母はヘロインの摂取で亡くなる。ここからもう普通じゃない。引き取られた祖母の家は、犯罪者の一家。自分は関係ない。自分は今まで通り生きたいと思っても許されない世界。祖母も味方にはなってくれない。だったら、未成年の彼は、どうしたらよかったというのだろう? あの中で、どう生きればよかったというのだろう? 私にはベストな回答が見い出せない。警察の保護を受け、親族とは決別して生きていくしかないのか? 実に難しい問題だ。ラストは予想外の終わり方で、ジョシュアの今後が心配でならない。それでも生きていくしかないのだろうか?
一番最悪なのはババァ
映画館に僕しか客が居なくて凄く不安になりながら見ていましたが、かなり面白かったです。
悪者家族と警察の間に立たされて、板挟みになってしまう主人公。でもその苦悩を描いて同情を誘うような安易なやり方をしていない所が良かった。
主人公の演技にしても、全体的に見てもわりと淡々と描いています。それでも飽きさせない所は監督の手腕でしょうか。
まぁとにかく最低な一家です。おじさんも被害妄想強すぎの自己中ヤローだし、何より最低なのが主人公の祖母。途中までは結構優しげな感じでそれ程の存在感も有りませんが、後半から本性むき出し。しかもそれを、まるで落ちているゴミを拾って捨てるかのような感覚で行ってる所が酷い。しかもその後もあっさり手の平返すし。もう自分の希望さえ通れば後はどうでもいいってことですかい。
最後のシーンは結構好きですね。重要なシーンをあっさりと描いてしまっている。背中に回した祖母の手も印象的でした。
見終わって思ったのは、アニマルキングダムというタイトルは技有り!って事ですね。
少年・ジョシュアが頼れる者とは・・・
冒頭、少年の母親が意識不明の場面で始まるのだが、母親は薬物の過剰摂取で、少年も母の安否よりもTVのクイズ番組の方が気になる様子だ。予告篇などから得た予備知識では、もっと堅気な母子が、邪悪な祖母の家と一線を画してひっそりと暮らしているイメージがあったので意外な幕開けだ。
体格がしっかりしているとはいえ、まだ17歳の少年・ジョシュアにとってコディ一家の空気は重くて鋭い。とくに長男ポープはいつ爆発するか分からない時限爆弾のような存在だ。これには家族も手を焼く。比較的、歳が近い三男・ダレンがジョシュアに気を配るようになるのも当然の成り行きだ。
この長男・ポープが過去の犯罪が癒えるまで身を潜めていればいいのだが、蛮行の虫が大人しくしていない。
コディ家が安泰でいるためには、一家が考え方や行動する上で一枚岩でいなければならない。兄弟を取り締まり、時には褒めそやし、飴と鞭でコントロールする司令塔が母親でありジョシュアには祖母にあたるジャニーンだ。
母親に甘やかされて育った兄弟は、外では凶暴だが、家では猫のように大人しい。典型的なマザコンだ。
コディ一家に入り込んだジョシュアは血の繋がった家族であると同時によそ者だ。そこに目をつけて、家族にゆさぶりを仕掛けるのが巡査部長のネイサンで、この作品の大筋が見えてくる。
ジョシュアが証言台で家族を売るのではないかという疑心暗鬼が、ポープを一層、狂気に走らせる。
本当にジョシュアを守ってくれるのは、恋人か、祖母か、はたまた警察か?
けっきょく頼れるものは自分だけという結末に、背筋に冷たいものを感じるが、少年が選んだ居場所に共感してしまう自分がいる。
祖母役のジャッキー・ウィーバーが、溺愛する息子たちのためなら何でもする狂気を目の奥に宿す演技で存在感抜群。
ガイ・ピアースも、クールな演技で正義感のあるネイサン巡査部長を好演。
デビッド・ミショッドは、長編映画初監督だが、ラストのカット裁きは短編で培った技であろうか、無駄がなくスリリングだ。
全12件を表示