劇場公開日 2012年1月21日

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「少年・ジョシュアが頼れる者とは・・・」アニマル・キングダム マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0少年・ジョシュアが頼れる者とは・・・

2012年1月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

冒頭、少年の母親が意識不明の場面で始まるのだが、母親は薬物の過剰摂取で、少年も母の安否よりもTVのクイズ番組の方が気になる様子だ。予告篇などから得た予備知識では、もっと堅気な母子が、邪悪な祖母の家と一線を画してひっそりと暮らしているイメージがあったので意外な幕開けだ。

体格がしっかりしているとはいえ、まだ17歳の少年・ジョシュアにとってコディ一家の空気は重くて鋭い。とくに長男ポープはいつ爆発するか分からない時限爆弾のような存在だ。これには家族も手を焼く。比較的、歳が近い三男・ダレンがジョシュアに気を配るようになるのも当然の成り行きだ。

この長男・ポープが過去の犯罪が癒えるまで身を潜めていればいいのだが、蛮行の虫が大人しくしていない。
コディ家が安泰でいるためには、一家が考え方や行動する上で一枚岩でいなければならない。兄弟を取り締まり、時には褒めそやし、飴と鞭でコントロールする司令塔が母親でありジョシュアには祖母にあたるジャニーンだ。
母親に甘やかされて育った兄弟は、外では凶暴だが、家では猫のように大人しい。典型的なマザコンだ。
コディ一家に入り込んだジョシュアは血の繋がった家族であると同時によそ者だ。そこに目をつけて、家族にゆさぶりを仕掛けるのが巡査部長のネイサンで、この作品の大筋が見えてくる。

ジョシュアが証言台で家族を売るのではないかという疑心暗鬼が、ポープを一層、狂気に走らせる。
本当にジョシュアを守ってくれるのは、恋人か、祖母か、はたまた警察か?
けっきょく頼れるものは自分だけという結末に、背筋に冷たいものを感じるが、少年が選んだ居場所に共感してしまう自分がいる。

祖母役のジャッキー・ウィーバーが、溺愛する息子たちのためなら何でもする狂気を目の奥に宿す演技で存在感抜群。
ガイ・ピアースも、クールな演技で正義感のあるネイサン巡査部長を好演。
デビッド・ミショッドは、長編映画初監督だが、ラストのカット裁きは短編で培った技であろうか、無駄がなくスリリングだ。

マスター@だんだん