シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム : 映画評論・批評
2012年3月6日更新
2012年3月10日より丸の内ルーブルほかにてロードショー
謎解きゲームの要素は希薄になり、アクション大作に完全移行
ガイ・リッチーとロバート・ダウニー・Jr.がシャーロック・ホームズの世界を変えてしまった。知的な謎解きゲームの要素は前作以上に希薄になり、大がかりなアクション大作に完全移行しているのだ。今回の悪党は、ホームズの宿敵モリアーティ教授。世界中で起こっている重大事件の大半は彼の仕業という悪の権化だ。そのモリアーティが世界大戦の勃発を目論見、ホームズとワトソンが阻止しようと戦う。何やら「ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル」に似通った展開なのがおかしい。
それでも楽しく見られるのは、ダウニー・Jr.=ホームズのやんちゃで可愛いキャラの賜。ワトソンの関心をつなぎ止めようと、あの手この手で冒険ごっこの楽しさをアピールするホームズはまるで恋する少年だ。そう、謎解きとアクション以上に彼がスクリーンに刻みつけるのはワトソンへの愛なのだ。ワトソンを結婚式場に送り届けるホームズの切ない表情にドキッ。反対に、危険にさらされたワトソン夫婦を危機一髪で救助する時は「僕がいなくちゃダメなのよ!」と得意満面ですこぶる可愛い。ワトソンとの至福の時間を過ごすために、敢えて危険に身を投じているとしか思えない。そんなキャラがダウニー・Jr.にすごくマッチしているのだ。
敵を追ってフランスからドイツ、そしてスイスへと移動。場所によってアクションのスタイルが変わり、派手に盛り上がって見飽きないが、肝心の推理ドラマ部分が雑になったのが残念。本家「ドラゴン・タトゥーの女」のノオミ・ラパスも、女を愛さないこのシリーズの空気に負けたのか、今ひとつだ。
(森山京子)