ティム・バートンが1984年に撮った短編実写映画を本人がストップモーションアニメとしてリメイクした作品。
本人が撮った映画を本人がリメイクしているので作品のクオリティにも方向性にもなんの違和感もない。安心して観ていられる。
ただ、もともと短編だったものを長編に仕立て直しているので、どうしても無理やりストーリーを引き延ばしたという感はある。
本作にはたくさんのモンスターが登場する。
ティム・バートンのモンスター愛がひしひしと感じられる作品であり、本来であれば自分のようなモンスター映画マニアは大喜び…のはずなのだけど、モンスターたちが目立ちすぎて肝心の“フラン犬”スパーキーがボヤけてしまった気がしてちょっと残念な作品でもある。
そもそもティム・バートン作品の多くは奇怪なアイデアが一杯詰まった悪夢のおもちゃ箱のような趣がある。
かつてのティム・バートンはその奇怪なアイデアの山を一本の作品の中でまとめ上げる集中力を持っていたのだけど、最近ちょっとその力に翳りが見えてきたと感じてしまうのは自分だけではないと思う。
今作も魅力的なアイデアは満載なのに、いささかとっ散らかった印象を受けてしまうのは否めない。
また、前作でも感じたことだけれど、死んでしまったものを蘇らせるという行為にどうしても抵抗感を感じてしまう。
怪奇小説の古典的名作「猿の手」や、スティーブン・キングの「ペット・セメタリー」などを引き合いに出すまでもなく、死んだものを蘇らせるというのは禁断の行為であり、決してハッピーな物語にはならないのである。
自分もかつてコロという雑種の黒犬を飼っていた。
コロは13歳で老衰で死んでしまったのだけれど、自分と同じように飼っていた犬との別れを経験したことのある人は涙腺を刺激されてウルウルしてしまう作品なのは前作と同じである。
それでもやっぱり死んでしまったものは無理に蘇らせたりしないでそっとしておいた方がいいと思わざるを得ない。
飼っているペットがいつまでも死なない、というのは素敵なことのようだけど、ある意味では悪夢ではないだろうか。ペットにとっても飼い主にとっても。
鬼才ティム・バートンはディズニーの魔法を使ってそんな悪夢をハッピーな物語に変えてしまった。ティム・バートンとディズニー恐るべし。
作品の完成度としては前作の短編実写映画の方が高かったと思うけれど、本作も少なくとも映画を観ている間は悪夢のような恐ろしくも楽しいティム・バートン・ワールドに浸ることができる。
日本の怪獣映画へのオマージュが捧げられているのも嬉しい。
前作がそうだったように、本作もジェームズ・ホエールが撮った『フランケンシュタイン』(1931)と『フランケンシュタインの花嫁』(1935)を観ておくと何倍も楽しめる。
ただ、なかなかそこまでするモンスター映画マニアは少ないんだろうなあ(笑)。