「自分の不始末は自身の手でカタをつけるニュー・ヒロイン像」メリダとおそろしの森 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
自分の不始末は自身の手でカタをつけるニュー・ヒロイン像
メリダは今流行りの快活なヒロインだ。伝統や格式を嫌い、親が敷いたレールに乗ることを拒み、自らの信念に従って未来を切り開く。
以前だったら、少年や青年が主人公のドラマに多く見られたパターンだ。
最近は、少女や若い娘が活発に自分を見つめなおす作品が目立つ。しかもアクション・ヒロイン真っ盛りだ。
そうした風潮の中、ピクサーが初めて女性を主人公にした作品を作ったのも当然の成り行きといえる。
相変わらず、ピクサーは世界観を演出するのが上手い。
フルCGでありながら、落ち着いた色調とギラつきのない画質で、メリダが暮らす環境を俯瞰してみせる。
愛馬アンガスを駆って森を抜けるメリダの赤毛が緑の木々に絶妙に映える。
豪快な父・ファーガス王と、その王を尻に敷く聡明な妻でありメリダの母でもあるエリノア王妃のキャラクターも立っている。メリダの弟で悪戯っ子の三つ子と、子供たちに翻弄されてばかりのメイドの絡みも楽しい。
自由奔放なメリダをスピーディ且つ存分に見せた上で本題に入っていくスタイルは、観る者を物語に容赦なく引き込む。
物語は、鬼火に導かれるまま森の奥に入り込んだメリダが魔女と出会い、自分の境遇を変えたい一心で頼んだ魔法があらぬ方向に働き、それを悔いたメリダが自身で魔法を解く鍵を探し出すというもの。
よくある、いたって単純な話だが、メリダを助ける白馬に乗った王子様は出てこない。得意の乗馬と弓で、自分が犯した不始末は、自身の手で決着をつける。これを若い娘がやるところが今風なのだ。
さらに、過去にも禁断の魔法を使って滅びた国があるという伝説で、話に程良い肉付けがされる。
考え方の相違からぶつかってばかりいた母がメリダを庇うシーンは、流れから予測はできるが、やはり心に沁みる。
話はコンパクトだが、これが初監督のマーク・アンドリュースが、上手く見せ場を散りばめている。
メリダと魔法使いの間で交わされたもう一つの約束の落とし所も笑える。