「遺産(秀作)の相続は大変です」ボーン・レガシー 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
遺産(秀作)の相続は大変です
シリーズの全脚本を務めたトニー・ギルロイがメガホンを取り、
前作までとは別のスパイを主人公に据えた『ボーン』シリーズ最新作。
……なんですけど。
監督が変わるとやっぱり映画は別物になるものだと痛感。
ハードな語り口とスピーディで無駄の無いアクションが
このシリーズの魅力だと個人的に思うのだが、そういう視点から見ると、
はっきり言ってこれまでのシリーズが好きな人には物足りない出来じゃないかな。
新主人公が出るのだからシリーズ未鑑賞者でも楽しめる作りかと思いきや
『〜アルティメイタム』とのリンクが密接過ぎて、
シリーズ未鑑賞者にはサッパリ物語が読めないだろうし。
けど、新主人公アーロンはなかなか良い。
任務で非情になり切れない部分こそボーンと同じだが、
彼よりもうちょっとだけユーモアがある。
無論、強い。屋敷内でのスマートな闘いぶりには唸った。
それと、レイチェル・ワイズ(相変わらず美人)演じるヒロインが登場。
最初こそ弱々しいけど、彼女もガッツがあって良いです。特に終盤ね。
ロマンス要素もちょっとあるし、ひたすら逃避行という展開だし、
ドキュメンタリックな撮り方も今回はしていないので、
全体的に1作目にテイストが近付いた感じかな。
なので、2、3作目より1作目が好きという方ならもう少し楽しめるかも。
(ちなみに個人的には2作目が一番好き)
それでも1作目よりは評価低めな印象。
この監督と僕の相性が悪いのか、それとも
この監督の語り口がこの手の映画に向いてないのか、
中盤辺りからはうとうと睡魔に襲われながら鑑賞してました。
(ギルロイの初監督作『フィクサー』の時もそうだったなあ……)
本作は説明的過ぎると感じる。
前3作のように最低限の行動・台詞でストーリーや心情を語る場面が少ない。
つまり、観客が頭を働かして話を読もうという余地が少ない。
また、アクションシーンのキレは相変わらず見事なのだが、
先述どおりドキュメンタリックな映像を捨てた分、臨場感や疾走感は薄れてしまった。
ペンや雑誌を殺し合いの武器に使うような「こいつらホントに
殺人術を叩き込まれてるぞッ!」というアイデアも
今回はほぼ皆無なので、あまり新味も感じられない。
以上!
うーん、不満タラタラのレビューになっちゃったなあ。
続編製作も最近決定したらしいけど……
できれば別の監督でお願いしたいです……。
<2012/9/29鑑賞>