「地上との距離感や巨人のスケール感など、CGと実写の融合を自然に見せる3Dが効果的」ジャックと天空の巨人 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
地上との距離感や巨人のスケール感など、CGと実写の融合を自然に見せる3Dが効果的
モーションキャプチャーを利用した映像と実写の融合による今作は、オープニングから好奇心をかきたてられました。天空と地上との距離感や巨人のスケール感を出したり、CGと実写の融合を自然に見せたりするのに、3Dは実に効果的ですね。3Dという新しい技術を十分に使いこなす作品が、ようやく増えてきたように思います。
童話「ジャックと豆の木」を基にしたファンタジーかと思ったら、大違い。どちらかというと最近はやりの『タイタンの逆襲』など巨人ものの範疇に入るでしょう。とにかく天空に伸びていく豆の木と巨人の迫力がものすごいのです。
童話とは最も違うところは、巨人が天空の世界だけで飽き足らず、地上にまで降りてきて、人を喰らうということ。
そんな巨人たちが、ジャックの捲いた天空の豆の木をつたって降りてきて、人間の王国に襲いかかるのです。彼の軍団はの約100名。全速力で野を走り、王国に攻め込んできます。受けて立つ王国の軍勢は僅か300名。城門をこじ開けようとする巨人たちと、守ろうとする人間たちの戦いが見もの。これでどうやって戦うのかというくらい戦力差が明かながら、知力を尽くして互角に渡り合うところは、まるで「ロード・オブ・ザ・リング」や大映の「大魔神」のラストシーンを思わせて迫力ありました。
特に巨人軍団のリーダーが単身場内に乗り込んで大暴れし、ジャックと1対1で対決するところは納得の戦いぶりで良かったです。
ただイザベラ姫とのラブストーリーは絵に描いたようなお伽話で、もうすこしはらんがあってもよかったのではないかと思います。それと戦いの決着も、キーアイテムの争奪で一発で決まってしまうというところもあっけなすぎるのではないでしょうか。
最後に本作の“後日譚”が冒頭のジャックとイザベラ姫が初めて出会うシーンにうまくリンクしていて、思わずニヤリとさせられました。
また、本作の巨人たちは怖いばかりでなく、ジャックの機略に振り回されるなどユーモラスで憎めない一面も描かれました。あの巨人の国も人間界とさほど変わらない景色であるところも、もう少しそれっぽさを出して欲しかったですね。
ブライアン・シンガー監督は「X―メン」シリーズで、人間社会から嫌われるミュータントたちに、ユダヤ人などのマイノリティーの歴史を重ね合わせてきました。今回も巨人たちには、「蛮族」による侵略の恐怖がイメージが根底にあるのでしょう。