一命のレビュー・感想・評価
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● 素晴らしい演技 ●
海老様が素晴らしいです。
あ、瑛太も良かったよ(笑)
言っちゃーなんだけど、逆恨みなんですよね…海老様の。
家族の為とはいえ、原因は瑛太が作ったのだし。
でも海老様の言う様に、1人くらい助けてくれる人は居なかったのかと…
竹光から介錯までの流れが壮絶すぎて、見ていられなかった。
全てを失った父親の気迫、素晴らしかったです。
出来れば最後は、同じ様に切腹して介錯される方が、良かったと思うんだけどなぁ。
オリジナルの『切腹』も見てみたいですね。
海老蔵凄い!
市川海老蔵って、
改めて凄いですねぇ。
「切腹」も観ましたが勝ってますよ海老蔵さん。
チョットぐらいのヤンチャは許しましょうよ。
芸の肥やしってことで。
こういう尖った才能を潰さないように、
これからたくさん出て欲しいです。
同世代でこの重みを出せる俳優は他にいないでしょう。
応援します。
それと
瑛太の切腹シーンもこちらの方が迫力満点。
ただ、
青木さんは好きな俳優ですけど、
丹波哲郎さんが凄すぎましたのでチョット小者に見えちゃいました。
すみません。
丹波哲郎ファンなので。
静かな作品。途中でウトウト?
なんか時代もの見たくて借りましたが。。。
切腹のシーンはなんかグロかったな。
それぐらいしか印象が。。。。泣
あとはすごーーーーく静か。
しっとり見たい時はおススメします。
ストーリー的には
最後になるほど。。。的な。
史上最悪のリメイク、反省しろ!背広組
まず、これはリメイクでしょう?
反論にはウンザリする。
次に、シナリオとセリフがムチャクチャ。
なぜ主役2人の「掛け合い」を入れない?
小林正樹が泣いている。
3番目にミスキャストのオンパレード。
エイタはあれはあれで良い。
海老蔵?
映画人でない奴が主演するのは異常。
仲代達也が落胆しているはず。
最後に、最悪のエンディング。
海老蔵が切腹してこその映画だろうが。
チンピラ3人が切腹するのはおかしいぞ。
悪いのは制作した背広組だ。
「切腹」という日本映画の至宝を愛した奴なら、こんな映画は創らない。
無責任すぎるぞ、お前ら!
史上最悪の映画だ。
日本映画の復興は更に遠のいたね。
重く、静かに、そして激しく
この作品はぜひオススメします。
日本人なら特に。
そして日本贔屓してくれる外国人の方に。
おすすめできかねるのが、単純なものを求めている人々。
ちょっと重いし、悲しいし、訴えるものが伝わりにくいかも知れません。
配役はまさにバッチリです。
瑛太さん、海老蔵さん、役所広司さん。一つの文句もありません。
狂言切腹の話ですが、本当に必要としている人に狂言が伝わらないのです。それを伝えにやってくる浪人の回想録ですが、とにかくリアルです。
まず瑛太さんの切腹シーン。
家族がどんどん壊れていくシーン。
毅然とした武士である海老蔵が、おろおろと不安になっていくシーン。
最後に海老蔵が放つ「これだけの武士がいながら、誰一人わからないとは一体(人の命を)どうお考えか!?」シーンは特に印象が残ります。
「ショーンシャンクの空に」のような根底に明るいものを感じますが、映像とテーマはかなり重く暗いです。僕も鑑賞後、しばらくイスから立ち上がれませんでした。
でも絶対オススメします。一人でご覧下さい。
この映画はただのHARAKIRI映画じゃない!深いテーマと静かな感動がある
この映画での三池崇史監督の演出は巨匠の域。
真摯で重厚な演出、深い突き刺さるようなテーマ、俳優から名演を引き出し…
撮影、美術、衣装、音楽、殺陣…全てまるで匠の技。
こういう三池映画もイイ。もっともっと見たい。
映画は終始、悲しみに満ちている。
娘婿も娘も孫も一気に全て失った半四郎の悲しみ…
妻子の為恥も外聞も捨てて狂言切腹をするが、見せしめとして命を落としてしまう求女の悲しみ…
病弱な為父や夫に苦労をかけてしまう美穂の悲しみ…
切腹シーンも含め、確かに重く暗いシーンが続くが、その裏に家族愛を感じた。
貧しいからこそ互いを思いやる気持ち、新しい命が誕生した時の喜び…家族の絆は尊い。
彼らのような貧乏浪人以外の武士たちは建前ばかりを気にし、憐れみの欠片も持たなくなった。
これは、希薄になった現代の人間関係にも通じる。
この映画の英題は“HARAKIRI”。
鬼気迫る切腹シーンや3Dでの公開など、そういう所ばかり話題になっているが、そうではない奥深いテーマも感じ取って欲しい。
海老蔵すげーよΣ(゚Д゚ノ)ノオオォッ
オリジナル版『切腹』もいい映画だけど・・・
俺はこっちの三池監督版を推したいです(^O^)/
幕府の大名取り潰しのあおりを食らって貧乏暮らしを余儀なくされた武士の悲哀もさることながら、何より貧困とはいかに過酷で残酷なのかを思い知らされる。
竹光で切腹をさせられるという残酷かつ理不尽極まりないシーンは、ローマ時代の遊民もそうだけど人間の残酷さをこれでもかと映し出す。
死体を運んできた使用人も心底申し訳なさそうに謝罪するし、家老もあまりの無残さに見るに見かねて介錯をし、ちゃんと3両を遺体と一緒に持って行かせてる。
オリジナル版と比べて実はいい人だということをしっかり描いている。
足を引きずってるのも、ちゃんと人の痛みが分かる人間であるということか。
饅頭の下りなんてほんと正視に絶えないくらいの哀れさ(つд⊂)エーン
その上で最後の立ち回りも、オリジナルは相手の刀を取って立ち回るのに対して、この三池監督版では竹光を使って立ち回る。
このあたりさすが三池監督Σd(゚∀゚d)イカス!
海老蔵の狂気をはらんだ目力は異常Σ(゚д゚;)3人のまげを放り出して不気味に笑うシーンなんてホラー映画だわ(;´Д`)
オリジナルでは最後切腹して終わるけど、これでは切られて終わるあたりも、武士であることを捨て人間として自分はここに来ているという意志の表れなんじゃないかと。
オリジナル越えを果たした素晴らしい大傑作(´∀`)
私の好みにはあまり合わない作品でした
この作品、2時間ちょいなんですが、あらすじをかいつまんで説明すると、おそらく5分で終わります。悪く言うとイベントが少ない、よく言うと、それだけゆったりと話が進むというか、丁寧にしつこく描いているというか、そんな映画でした。
市川海老蔵の演技は、よくも悪くも印象的でした。やっぱり目力はすごいですね。ただ、どこか歌舞伎の見得のようで、ナチュラルな芝居の中ではやや不自然に感じました。語り口もまた然り。わざとらしい発声と言い回しに思えました。まあ、その不自然さが、何を考えているのかわからない役柄とあっていたようにも思えます。
大名屋敷のインテリアがまた、あまりナチュラルではないデザインでした。なんというか、ハリウッド映画に出てくる日本家屋みたいな雰囲気。ああいうデザインのものが実際にあったのかなあ。
まあそんなわけで、作り手側は決して手を抜いているわけではないと思うのですが、私の好みにはあまり合わない作品でした。
生き辛さはどの時代も同様か?しかし人として忘れてはならない心を残してくれたこの映画に感謝したい!
この映画は、出だしから、「もう、これは最高!」いける時代劇と感じさせる臭いがした。
カメラアングルから 、音楽の使い方、大名屋敷のセットの色調と、ロケの季節感の美しさなど、見事にこれから始まる、この悲劇の物語の演出は整っていた。
そして市川海老蔵さんは、さすがは歌舞伎役者である!歌舞伎の舞台で見得を切るように、大名屋敷では大見得をご披露してくれた。
何だか映画と言うよりは、お芝居を観劇している気持ちにさえなってしまったのだ!
役所広司も市川海老蔵と決闘をしているように両人の芝居の対決がこの映画に迫力を持たせてくれていた。
そこにいくと瑛太の熱演は認めるが努力賞の域を抜け出せないままにいた感がある。
瑛太ファンには申し訳ないのだが、先の両者の間では、力量不足でアンバランスで不自然に感じた。しかしそれでは誰が若手俳優で瑛太の代役を出来たのか?と問えば思い当たる俳優がイメージ出来ないのも確かである。
「やはり、邦画界が、若い映画俳優をじっくりと育てられない、これが日本の限界なの?」といささか不安になる。
製作費など予算の問題で十二分に若手俳優さんの芝居を鍛え上げ訓練するだけの力が邦画界には無いのだろうか?このままでは、日本の文化は維持できるのか不安を憶える。
天下泰平で徳川幕府は我が国の文化の最も安定した、時代であったと思っていたが、その蔭で、こんな狂言切腹なる悲劇が起きていたとは知らなかった!愕然とした・・・
それにしても、侍の傘貼り内職のシーンはどの時代劇でも頻繁に目にするのだが、実際に傘の紙を貼るだけの内職で生計を立てる事が出来たのだろうか?
極貧生活に喘ぐ侍と農民達が生きた時代が江戸の本当の姿なら、江戸時代の歴史の中で人間らしい、普通の生活を営む事が許されていた人々はどれだけ存在していたのだろうか?
刀剣や、書籍を値切って買い取る質屋の存在こそが心底恨めしく思えた。
江戸時代に、オランダなどから来日した外国人の記述した文献によると下水道も整備されたエコ生活が確立していた、循環型のエネルギー文化を営んでいた江戸文化は、同時代の欧米文化に比較すると非常に優れていたと言うのだが・・・
そして単なる物質面だけでなく、当時の日本人の人間観などの、倫理観、道徳観など一般庶民の識字率なども含めて、かなりの文化水準を誇っていたと言う文化の影に、こんな格差社会が存在していたとは、只只哀れと言う他に言葉が見つからなかった。
武士道に始まり、武道、書道、華道、茶道と様々な文化を築き上げたこの時代、どの道も極めると一つの世界観へと到達する日本人のアイデンティティが確立され、今の日本人にも影響を残す豊かな知と仁の基盤が確立したこの時代に、この様な理不尽な非道なる武士の情けに反する、武家社会の切り捨て御免が存在していた事を想うと哀れで、悲しいのだ。しかし、懐に忍ばせ、家族に持ち帰ろうとした練り切り御菓子。貧しき家族を愛する心の表れだ、平成不況の今日でも私達が忘れずに持ち続けていきたい心がそこに有るのだった。
腹は斬るでなく満たすもの。
小林正樹監督の62年作品「切腹」の原作『異聞浪人記』を、
「十三人の刺客」の三池崇史監督で完全再映画化した本作。
前回観たのが忍たま~で^^;なんだかガックリきていたんで、
こんな重厚な作品を三池…?と野暮な心配をしてしまったが、
なかなか素晴らしい時代劇に仕上がっている。ちなみに2D。
なにも時代劇を3Dで観るこたぁ~ねえわな。なんて思って…
役者は見事に取り揃えているが、
とにかくあの事件以来めっぽう評判落ちしてしまった海老蔵が
どうだ!俺の目力はっ!!という感じで迫真の演技を観せる。
前作の仲代といい、今作の海老蔵といい、実際に半四郎の歳
には到底若すぎると思うのだが(だって娘と夫婦に見えるぞ~)
しかし孫が生まれた時の喜びの表情など、同じ目力でもまるで
違う^^;さすが、歌舞伎役者だけあって表情の機敏が上手い。
娘役の満島ひかりも薄幸さを前面に出して病弱な妻を好演した。
そして何といっても、よく頑張った!のが千々岩求女役の瑛太。
だいたいこの名前からして儚い…。斬られてしまいそうな名前だ。
父から学んだ通りに文学に励み、半四郎に引き取られてからも
武士として恥ずかしくない嗜みを身に付けた彼だったが、何分、
半四郎にも求女にも生活を潤す貯えがない。食うに食えず本を
売り払ったり、刀(これは最後の手段だが)を手放す事になるが、
ここまで浪人を追い詰めたのは、天下泰平の世の中なのである。
幕府による理不尽な御家取り潰しが相次ぎ、困窮した浪人達が
流行病のように行っていたのが狂言切腹。大名屋敷に押しかけ、
庭先を拝借したいなどと申し出て、面倒を嫌う屋敷から金銭を
巻き上げるという…その噂が広まっている最中に運悪く求女は、
名門・井伊家の前に立ってしまう。子供の病の治療に3両が必要
だった彼には他に考える術はなかった。昼過ぎには戻るから、
と息絶え絶えの妻子に声をかけ、家を出ていった求女だったが。。
とにかくこの求女の竹光での切腹シーンがかなり痛々しい。
思わずもうやめてくれ!と目をそらしたくなるほど長くて辛い。
当主の斎藤勘解由にはこれが見せしめの意味もあり、初めから
介錯を務める彦九郎の謀り事なのだが、武士の面目を保つ為の
一大行事が、かくも悲惨で救いようのない実態を映し出している。
武士も血の通うた人間であろう…のちに半四郎が絞り出すように
いう台詞には、婿、娘、孫を一晩で失ってしまった男の絶望と怒り、
なぜ、せめていきさつを聞いてやれなかったのかという不信感が
込められている。何ともはや…いくら貧しいとはいえ他人に迷惑を
かけることもなく、細々と生き延びてきた武士の末路がこれとは…。
封建社会への痛烈な批判を今作は静かにしたためているのだが、
それよりも生きること、食べることへの渇望が何より強く感じられる。
健やかに生きるためにはどれもが欠かせないものであるのと同時に、
美しい死に様を求めるくらいなら、人として美しく生きる術を学べ。と
言われているような作品である。背筋をスッと延ばし深々と一礼する
求女の姿がどれだけ美しかったか、髷を切られ面目を潰されたうえに
辿る末路が切腹という武士達の姿がどれだけ不様だったか、観比べて
今現在の世界で何を大切にするべきなのかを考えさせてくれる作品。
(それにしても三池さん、グロい演出はお手のもの。涙目になりますよ)
血が飛び出すのではなく、紅の奥行きに趣向を凝らした3D演出と色づかい
時代劇初の3Dとして話題となったが、三池組としては血塗れバイオレンスが振り切っていた娯楽作『十三人の刺客』の方が断然向いているという印象が強かった。
どう考えても今作を3Dにする必要性は皆無に等しい。
困窮に耐え忍びながらも侍の誇りを忘れようとしない男の胸中に迫る精神的なドラマの構図だからだ。
なぜ狂言切腹に踏み切らざるを得なかったのか?
真相は眼鏡の奥の眼の奥で見据えないと感情移入なぞ不可能である。
よって、クライマックスで面目や恥ばかりを重んずる藩の縦社会に海老蔵の怒りが爆発するまでは、救いの無い暗黒面が広がり、終始、痛々しい。
寺子屋の先生の瑛太とその妻・満島ひかり2人共、華奢な体やから尚更、貧しい暮らしぶりが儚かった…。
侍社会の本音と建前の狭間で苦悩する大名・役所広司の葛藤も眼鏡越しから観る者の心を震わす。
飛び出すのではなく、画の奥行きに趣向を凝らした3D演出やと感じた。
甲冑、紅葉、そして、血肉と、濃い紅の色づかいに今作の世界観が集約化されていたと思う。
故に、絶えず血の臭いを漂わせていた海老蔵の存在感は正に独り舞台と云えよう。
歌舞伎で培った海老蔵の睨みが殺陣に鮮やかな殺気を加え、唯一盛り上げる。
一連の喧嘩沙汰で公開すら危ぶまれた作品だが、いざ見届けると、血生臭さが自然と刀に染み付いて、言葉で表現しきれぬ迫力を帯びていたから、人生はどう転ぶか解らないものだ。
自腹を斬るのは喰い道楽に限らぁ…っとくだらない結論でサゲたところで短歌を一首。
『折れてなを 廻す刀の 散り紅葉 雪見届けし 武士の面目』
by全竜
命のはかなさ
これがリメイク版とは知りませんでした。廃藩になった浪人の貧しさ、哀しいくらいのもです。満島ひかりがおさえた演技で光ってました。狂言切腹で家族を救おうとした瑛太演じる浪人が武士の誇りの刀を使わず、木刀で切腹するシーンは凄まじいものがありました。娘婿のあだ討ちの為、海老蔵が切腹を願い出るシーンは落ち着いて威厳がありました。結局サムライは辱めを受ければ切腹しなければならない哀しさが、髷を切られた三人のサムライにもありました。この不条理の世界をカンヌ映画祭の審査員は理解できたでしょうか?
どうみてもリメイク
どうみても「切腹」のリメイク版でしょう。しかも元作品よりかなり劣る。これで公にリメイクと認めないのは、変です。3Dはまったく無意味で眼鏡が重いだけ。ぜひDVDででも小林「切腹」を見てほしい。海老蔵は悪くないけど、仲代と比べるとやはり見劣りする。満島と岩下志麻は段違い。まだ若いころの岩下志麻なのに、存在感がまるで違う。せりふは岩下のほうがずっと少ないのに。テーマは貧困と人間の尊厳というタイムリーなものなのに残念です。
奥行きを感じる作品
奥行き....まずは3D。
時代劇初の3Dということだが、「飛び出てくる」というよりも「奥行きを感じる」という感じ。
日本家屋独特の室内の陰影を表現するのには効果があったように感じた。
そして作品。
これはもう、何とも哀しい。
誰も救われない。
「一命を賭して」訴えた叫びも、封建の澱んだ空気の中にかき消えてしまう。
生き様は感じるところがある。
「武士」の生き様。「愛するものを守る」男の生き様。
しかし、それは時代の大きな流れの中ではあまりに非力で....。
家族の愛、武士・男の生き様、「時代」の悲劇、色々なことを考えさせられる作品だったな。
生きのびて春が訪れるのを待っていた津雲半四郎の物語り
井伊家の体面ばかりを気にする輩と,それに抗えない無言の共犯者たち.そして,全てを失った時に自分自身も刀という武士の体面を捨てきれなかったことに気づく浪人武士の半四郎.戦国から太平の世へと変化する社会の中で,こびりつく価値観や因習によって引き起こされる悲劇の物語り.
求女の無邪気だが凛とした所作が良い.美穂が持ってきてくれたまんじゅうを食べるシーンは,なんともさわやかで,うまそうである.そして,圧巻は半四郎である.死の床にある友人に障子をあけてほしいと頼まれ,豪胆にかつ無駄なく開けてみせる所作は美しい.同情を通り過ぎて嫌悪感すら抱くみすぼらしい貧しさの体現者である美穂の描写と対照される.
何人かの虚栄心とそれに物言わぬ人らによって絶望が作り出されていることを描く,胸をえぐられる作品であった.
下記から内容の詳細を含む ----------------
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戦国から太平の世に移り変わる中で,半四郎がつかえた藩は理不尽な取りつぶしにあい,半四郎は浪人武士になってしまう.取りつぶしの直後に亡くなった同じく家臣である千々岩の息子・求女(おとめ)をひきとり,自分の娘の美穂と3人で貧しい生活をする日々.
年月が経ち,求女と美穂も成長する.美穂には良家から嫁の誘いがあるが,半四郎は頑なに拒む.求女と美穂が好きあっていることを察していた半四郎は,求女に美保を嫁にもらって欲しいと頼む.「2人の気持ちが大切なんだ」と.
求女と美穂は結婚し,息子のきんごを授かり,幸せもあるが,貧しい暮らしが続く.求女は金の工面をするために学問書の手に質屋へ.しかし,学問書ではわずかな値打ちにしかなない.質屋に「刀を売ってはどうか」と打診されるが,求女は「無礼であろう」と一蹴する.
ある時,求女は,息子・金吾を医者に見せるための三両に困り,やむにやまれず井伊家を訪れ,狂言切腹におよぶ.武士としての体面が重要である井伊家は武士が狂言におよぶ流行りの風習をよしとせず,温情はない.求女が帯刀していたのはすでに刀ではなく竹光であったが,その竹光で自害を遂げる.
息子の金吾は命を落とし,美穂も求女の遺体が運ばれた夜に,切腹に使われた求女の竹光で自害する.
求女が竹光で切腹したことを聞いた半四郎は,求女が妻子のために武士の体面である刀をとうに捨てていた事に気づく.義理の息子,娘,孫,すべてをなくした半四郎.残った自分の刀.この時代で娘の恋愛結婚を積極的に認め,体面を気にせずに家族を大事にしてきた半四郎だけに,1つ残る刀は大きな悔恨である.
井伊家の体面ばかり重要な輩がいて,そのほか大勢も声をあげられない無言の共犯者である武士たち.そして,半四郎自身も刀という武士の体面を捨てきれなかったことに気づく.
戦国時代が終わり平和が続き,もはや実力で立身出世を勝ち取る武士の世界ではない.しかし,大名にめしかかえられた武士たちにとっては,いまだにそれが実力によって勝ち取ったという自負と誇りなのである.また逆に多くの浪人武士たちにとっても捨てられずにしがみつく体面なのである.それは浪人武士たちへの蔑みにもつながり,そして浪人武士たちは卑屈にもその蔑みを甘受する時代である.
半四郎は,井伊家の武士を前に,この浮き世の中で少し事が違えば,息子の求女が井伊家の家臣としてそに座っていたかもしれないと説く.それは決して自分たちの窮状を訴えたかったのではない.個人の窮状は時の運もあり仕方のないことである.しかし,多くの武士がいる中で,なぜ誰一人として求女の窮状を尋ねる者がいなかったのか,哀れを叫ぶものがいなかったのか,その事を問いただす.また,武士の体面とはもはや建前に過ぎず,守るべき誇りではないことを説く.
最後,半四郎は,武士の体面の象徴である 飾られれた「赤備えの鎧」をこわしてみせ,それを最後に観念した半四郎は切られて死ぬ.しかし「赤備えの鎧」は,井伊家の家臣たちによって繕われ,何事もなかったかのように再び飾られ,変わらない現実が続いていく.映画はここでおわる.
見終わった後,なんとも胸をえぐられ,しばらく言葉を失ってしまう映画であった.誰かと一緒に見に行ってしまうと,その後を保証できないが^^; 是非見て欲しい作品.
武士道の悲哀と理不尽さが充分に伝わってこない
長くなるので結論から言うと、市川海老蔵が若すぎる。時代考証的には孫がいてもおかしくない年齢かも知れないが、見た目が若い。海老蔵の役を役所広司がやってもいいくらいだ。いや、その方がぜったいしっくりくる。
この話は、そもそも井伊家にしてみれば迷惑な話を、狂言切腹を企てた方に感情移入させなければ成立しない難しさがある。
ところが、切腹を申し出た浪人に対し、武士として体面を計らったとする井伊家家老の言葉の方に重みを感じてしまう。それは、役所広司という俳優の実直な人柄だ。この人が言うのだから、もっともだと聞いてしまう。
海老蔵扮する浪人の、「武士としての情けはないのか」という言葉の方が、何を勝手なことをと、逆に理不尽なものに聞こえてしまう。
役所と海老蔵の声質の違いも大きい。海老蔵の声はトーンが高い。落ち着いた低い声の役所の言い分が正道に聞こえるのだ。
確かに井伊家の若い侍に情けのカケラもないのかと怒りを感じるが、そもそもの発端は当家とはまったく関係のない武士による切腹の申し出だ。
これを覆すには、それ相応の演出と演技力が必要だ。皆が皆、狂言切腹に追い込まれた浪人に無条件で同情するわけではない。なぜなら、これは武士道を描いた映画だからだ。
「武士に二言はない」という言葉があるように、一旦口に出した言葉は守らなければならないという武士社会の鉄則がある。武士たるもの、軽々しく口に出してはいけないという戒めだ。武士がたとえ狂言にしろ切腹を申し出るならば、万が一にも先方が受け入れたときのことを覚悟してコトを起こさなければならない。そもそも茶菓が出された時点で覚悟を決めなければおかしい。これは今生の別れに対する最後のおもてなしだ。
太平の世で、それも分からないほど甘ちゃんになってしまった武士を瑛太が好演している。瑛太はよかった。ホントに切腹しなければいけないと悟ったときの狼狽えぶり、竹光を無理に腹に突き立てる切腹の苦しさ、介錯を懇願する表情といい、今作でのベストキャスティングだ。
この若い武士の切羽詰まった心情、それを語るのは求女(瑛太)自身ではない。海老蔵扮する津雲半四郎の役目だ。この作品の主人公は津雲半四郎だ。
困窮する浪人の心情を訴え、それでも武士の魂を捨てずにきた男が、仕官して安泰な暮らしを貪る武士たちに、敢えて竹光で刃向かう。そこに一介の浪人の意地を見せられるかが、この作品の勝負どころだ。
そして、その前哨戦こそが前半の家老(役所)の逸話に対して切り返す、後半の半四郎(海老蔵)による身の上話なのだ。建前ばかりを重んじ虚飾された武家社会に対して、上辺だけの武士道など切り捨てるには竹光で充分だと、語らずとも分かるよう観る者に刷り込んでおくための大事な大事な前哨戦だ。
そういえば、役所と海老蔵、ふたりとも同じテレビ局で宮本武蔵を演じている。役所広司の武蔵は相手との間合いを読む野性的な精悍さがあった。やはり、役所広司を半四郎に据えた方がよかったのでは? その役所も、多少の無体さを装うべき家老の役には合わない。
求女(瑛太)と家老(役所)の立場を、それぞれが飼っていた白猫で表現した演出はイケてる。
3Dはまったく必要なし。重いメガネを掛けて観るだけのメリットがどこにあるのか?
偉大なるミス・キャスト
市川海老蔵という歌舞伎役者は、梨園随一の美形であることは、間違いない。高麗屋・音羽屋・中村屋・澤潟屋のどの御曹司と比べても、美形である。それは誰もが認める点である。ところが、歌舞伎用語で言うところの「口跡」が良いかと問われると、これは「良くない」ということで、これまた衆目の一致するところである。すなわち、低音で発声していても、声が裏返ったり、高音が抜けてしまって、なんとも言えず軽くなってしまうという致命的な欠陥を抱えている。
今回の作品「一命」でもこの弱点がところどころに見られ、一気に興ざめになる場面が散見された。
だれがどう考えても、半四郎は役所広司の任であろう。役所で観たかった。前作でも仲代達矢と岩下志麻が親子には思えず、今一つ入っていけない部分があったが、今回も海老蔵・瑛太・満島ひかりが親子には思えない。
3Dの必要性は感じない。ラストの雪のチラつきで「あっそうか」と思い出した。美術と照明は相変わらず良く、「13人の刺客」の前半部分を彷彿とさせた。三池監督は、屋内場面もしくは閉ざされた空間の演出は、見事だと思う。
いずれにせよ、市川海老蔵はミスキャスト。演技がくさ過ぎる。
武士とは、不自由なものでありますね。
市川海老蔵さん。瑛太さん。満島ひかりさん。
実は、私は、この3人が苦手だ(歌舞伎役者として舞台に立つ海老蔵さんは別にして)。
それでもこの作品を見に行こうと思ったのは、「一命」という題名に惹かれてのこと。
相変わらず、事前情報が少ないまま見に行ったけれど、私が想像したストーリーと大きな点で、違いはなかった。
けれど、こんなにも私を惹きつけたのは、役者さんと監督のおかげだろう。
四季折々の美しい日本。
雨、紅葉、雪、風、苔、石・・・。
大名屋敷のあらゆるところある芸術的な飾りや小道具。
行儀作法の美しさ。
それと対照的な貧しさ。
食べていけるか、食べていけないか、そんな生活の基盤の違いが、武士としての覚悟にも関わってくる。
海老蔵さんは、存在感が有り、歌舞伎で鍛えた声の出しかたが、絶妙!!
サムライとしての容姿も納得。
役所さんも、最初は良いのか、悪いのかわからない役を好演。
竹中直人さんには、もっと活躍してほしかったけれど、この内容では、出すぎず良かったのだろう。
坂本龍一さんの音楽も、出すぎず、足りなさすぎず、しっとりとして良かった。
監督は、外国人の目を気にして作られたのかな~?! なんて思う所があった。
武士道とは、窮屈なところもあるが、今の日本人に必要な点も多くあると思う。
そんなことを、思いながら劇場を後にした。
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