「稀代のガッカリムービー。『バットマン ビギンズ リターンズ』だこれ!!」ダークナイト ライジング たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
稀代のガッカリムービー。『バットマン ビギンズ リターンズ』だこれ!!
“闇の騎士“バットマンの活躍を描くスーパーヒーロー映画『ダークナイト』トリロジーの第3作。
ハービー・デントの死から8年。ブルース・ウェインはバットマンとしての活動を辞め、隠遁生活を送っていた。そんなゴッサム・シティに突如としてマスク姿の怪人ベインが現れる。ブルースは痛む身体を抑え、再びバットマンとしての活動を開始するのだが…。
監督/脚本/製作/原案はサー・クリストファー・ノーラン,CBE。
脚本はジョナサン・ノーラン。
⚪︎キャスト
ブルース・ウェイン/バットマン…クリスチャン・ベイル。
ジェームズ・ゴードン…ゲイリー・オールドマン。
ルーシャス・フォックス…モーガン・フリーマン。
アルフレッド・ペニーワース…マイケル・ケイン。
ジョナサン・クレイン/スケアクロウ…キリアン・マーフィ。
ヘンリー・デュカード/ラーズ・アル・グール…リーアム・ニーソン。
謎の怪人、ベインを演じるのは『インセプション』『裏切りのサーカス』のトム・ハーディ。
ゴッサム・シティの新米警官、ジョン・ブレイクを演じるのは『(500)日のサマー』『インセプション』のジョセフ・ゴードン=レヴィット。
女盗賊、セリーナ・カイル/キャットウーマンを演じるのは『プラダを着た悪魔』『アリス・イン・ワンダーランド』の、オスカー女優アン・ハサウェイ。
ウェイン産業の役員、ミランダ・テイトを演じるのは『インセプション』『ミッドナイト・イン・パリ』のマリオン・コティヤール。
また、証券取引所のトレーダーを無名時代のグレン・パウエルが演じている。
音楽はハンス・ジマー。
前作『ダークナイト』(2008)が“史上最高のスーパーヒーロー映画“と賞賛されるほどの評価を受けてしまった事で、果てしない高さにまでハードルが上がってしまった本作。
真面目なノーランはそのハードルを飛び越えようと、ノーラン組と言うべきお馴染みのキャストを率いて真っ向から勝負を挑んだのだが…。
結論から言えば、決してつまらない映画ではない。3時間近い上映時間でありながら退屈はしなかった。
ヒーロー映画の定番はしっかりと押さえられており、映像的にもゴージャスでおぉー!と思うところはしっかりとあった。
今作の、特に素晴らしかったところは、やはりアン・ハサウェイ演じるキャットウーマン!
ゴーグルを上げた姿がネコ耳に見えるという発想は中々にセンスがあります。
とにかく、アン・ハサウェイがでているだけで映像的なクオリティが上がりまくる。人間離れしたルックスとスタイルは本当に凄い!
これまでのシリーズでは、何故かヒロインがパッとしない人選だったことを考えると、ようやく本作でまともなヒロインが出てきてくれたな、という感じです。
さて問題はここから。
その他に良かった所…が特に無い。特に無いんですよ本当に!
今作の問題点はとにかく脚本の練り込み不足。それに尽きると思います。
ただでさえ穴だらけの脚本の上、高すぎるハードルを越えるために富裕層と貧困層の対立という社会問題を盛り込もうとした結果、全体の構造がもうガタガタ…。
素人目にもわかる杜撰さ。ノーラン本人も「やべぇ。やっちまったな…」と思ったんじゃないでしょうか?
大体、『ダークナイト ライジング』なんてタイトルが付いていますが、これ別に『ダークナイト』の続編じゃないんです。はっきり言って『ダークナイト』での出来事なんて殆どこの物語には関係ありません。じゃあこれ何なのかというと、トリロジーの1作目『バットマン ビギンズ』(2005)の直接の続編なのです。
うーん…。確かに『ビギンズ』は悪い映画ではない。ないのだが、『バットマン ビギンズ』の続編なんて観たいか?コンパチ忍者集団“影の軍団“に興味のある観客がどれほどいるのだろう?
脚本の穴にツッコミを入れていてもキリがないので省略しますが(文字通りの「穴」での件とか最悪…🌀)、最強の敵ベインの描き方のヘッポコ具合は到底受け入れられない。
ベインとはバットマンの背骨をへし折り、引退状態に追い込んだ事で知られるスーパーヴィラン。超おいしいキャラの筈なのに、この映画からはベインの魅力が1㎜も伝わって来ない。世紀末的な見た目はダサいし、体型も強そうじゃないし、計画もダルいし、思想も共感できないし、オチはあんなんだし…。
こんなもんをあのジョーカーの後に出しても盛り上がるわけが無い。そりゃまぁ、ヒース・ジョーカーの後ではどんなに魅力的な悪役を出したとしても霞んでしまうでしょうが…。それにしたってもう少し頑張ってくれなきゃ困る。
ベインとバットマンのステゴロ格闘シーンはまさに失笑もののダサさ。申し訳ないが、ノーランにはバトルアクションは向いてないと思う。
加えて酷いと思ったのは、バットマンvsベインの後ろでごちゃごちゃやってる警官隊vs自警団のアクション。ここはなんだ?チークダンスでも踊ってんのか?
アルフレッドの扱いも最悪。一番大事な局面で何故お暇を貰ってんですかねぇ…。
新キャラのブレイクも印象が弱い。彼こそ後にバットマンを継ぐ者になるわけだから、それこそ戦闘不能になったブルースが直々に鍛え上げ、2代目バットマンとしてベインに立ち向かうという展開だってよかった筈。バットマン&ロビンとして活躍するといういうのもありだった訳だし、本当にこれだけのキャラで終わらせてしまうのは勿体なかったと思う。
何より、今回の出来事は全てバットマンの過去のミスが引き起こしていることが気に入らない。
『ダークナイト』のラストでバットマンが罪を被らなければ…。また、『バットマン ビギンズ』でラーズを見殺しにしていなければ…。今回の出来事は起こらなかったのかも知れない。
そこが気になってしまって終始モヤモヤした気持ちで鑑賞していた。
一応フォローしておくと、全体としては楽しかった。
ミランダが実は…という展開は正直驚いたし。でも、前作が良すぎたあまり本作の出来にガッカリしてしまったというのは否めない。
とはいえ、なんとか綺麗に纏めたというだけでも立派なのかな。