「稀代のガッカリムービー。『バットマン ビギンズ リターンズ』だこれ!!」ダークナイト ライジング たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
稀代のガッカリムービー。『バットマン ビギンズ リターンズ』だこれ!!
クリストファー・ノーラン監督による「ダークナイト・トリロジー」の第3作。
引退状態だったバットマンの前に現れた強敵ベインとの戦いを描くシリーズ最終作。
出演はクリスチャン・ベイル、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン、ゲイリー・オールドマン、キリアン・マーフィ等のお馴染みのメンバー。
追加キャストとして女盗賊セリーナ・カイル役に『プラダを着た悪魔』『アリス・イン・ワンダーランド』のオスカー女優アン・ハサウェイ。
新たなる敵ベイン役に『インセプション』『裏切りのサーカス』のトム・ハーディ。
新ヒロインのミランダ・テイト役に『インセプション』『ミッドナイト・イン・パリ』のマリオン・コティヤール。
新米刑事ジョン・ブレイク役に『(500)日のサマー』『インセプション』のジョセフ・ゴードン=レヴィット。
など、いわゆるノーラン組と言われるお馴染みのキャストが名を連ねる。
また、1作目の『バットマン ビギンズ』より、リーアム・ニーソン演じるラーズ・アル・グールが再登場を果たしている。
「ダークナイト・トリロジー」の2作目、『ダークナイト』の素晴らしい完成度により、果てしなく高くなってしまった本作へのハードル。
真面目なノーランのことなので、真っ向勝負でそのハードルを飛び越えようとしたのでしょうが、結果は…
結論から言えば、決してつまらない映画ではない。3時間近い上映時間でありながら退屈はしなかった。
ヒーロー映画の定番はしっかりと押さえられており、映像的にゴージャスでおぉー!と思うところもあった。
今作の、特に素晴らしかったところは、やはりアン・ハサウェイ演じるキャットウーマン!
ゴーグルを上げた姿がネコ耳に見えるという発想は中々にセンスがあります。
とにかく、アン・ハサウェイがでているだけで映像的なクオリティが上がりまくる。人間離れしたルックスとスタイルは本当に凄い!
これまでのシリーズでは、何故かヒロインがパッとしない人選だったことを考えると、ようやく本作でまともなヒロインが出てきてくれたな、という感じです。
さて問題はここから。
その他に良かった所…が特に無い。特に無いんですよ本当に!
今作の問題点はとにかく脚本の練り込み不足。それに尽きると思います。
ただでさえ穴だらけの脚本の上、高すぎるハードルを越えるために富裕層と貧困層の対立という社会問題を盛り込もうとした結果、それが全く上手くいっていないため、全体の構造がもうガタガタ…
ノーラン本人も「やべぇ。やっちまったな…」と思ったんじゃないでしょうか?
大体、本作は別に『ダークナイト』の続編じゃないんです。あの『バットマン ビギンズ』の続編なんです。
正直『ダークナイト』での出来事を丸ごと無かったことにしても、少し脚本を弄れば物語が成立してしまう。
つまらなくはないが、そんなに面白くもない『バットマン ビギンズ』の続編を何故作ろうと思ったのか?
影の軍団に興味のある観客がどれほどいるのか?
脚本の穴にツッコミを入れていてもキリがないので省略しますが(文字通りの「穴」での出来事の件とか最悪でしたね…)、とにかく本作で悪かったのは、一応最強の敵ベイン。
ベインに魅力が全くなかった。世紀末的な見た目もダサいし、体型も強そうじゃないし、計画もダルいし、思想も共感できないし、オチはあんなんだし…
こんなもんをあのジョーカーの後に出しても盛り上がるわけが無い。まぁ、ヒースの演じたジョーカーの後ではどんなに魅力的な悪役を出したとしても霞んでしまうでしょうが…
ベインとバットマンのステゴロ格闘シーンはまさに失笑もののダサさ。
ノーランは本当にバトルアクションをとる才能がない。
とにかく酷いと思ったのは、バットマンvsベインの後ろでごちゃごちゃやってる警官隊vs自警団のアクション。ここはなんだ?チークダンスでも踊ってんのか?
アルフレッドの扱いは最悪だった。一番大事な局面で何をお暇を貰ってんですかねぇ…
また、新キャラのブレイクはもっと活躍させるべきだった。
それこそ戦闘不能になったブルースに代わり新しいバットマンになるべく、ブルースが直々に特訓をし、ベインに立ち向かうという展開だってよかった筈。
何より、今回の出来事は全てバットマンの過去のミスが引き起こしていることが気に入らない。
『ダークナイト』のラストで、バットマンが罪を被るという展開がなければ(改めて考えると、このオチも納得出来ないけど)。
また、『バットマン ビギンズ』でラーズを見殺しにしていなければ。
この辺が凄くモヤモヤして気持ち悪かったです。
脚本は最悪ですが、全体としては楽しかったんですよ。
ミランダが実は…という展開は正直驚いたし。
でも、前作が良すぎたあまり本作の出来にガッカリしてしまったというのは否めない。
とはいえ、なんとか綺麗に纏めたというだけでも立派かな、と思います。
個人的にバットマンが好きなのでこの点数ですが、映画の出来だけでいえばもっと点数が低くてもしょうがないのかなぁ。