ダークナイト ライジング : インタビュー
アン・ハサウェイ、キャットウーマン役でベジタリアンに!?
「ダークナイト ライジング」への出演を勝ち取ったとき、アン・ハサウェイの肩にのしかかったプレッシャーは相当なものだったに違いない。オーディションに殺到した人気女優たちを押しのけてしまっただけでなく、挑戦するのはすでに手あかを付けられてしまったキャットウーマン。おまけに、演技派ぞろいの豪華キャストのなかで、クリストファー・ノーラン監督作品に初めて出演するのは自分しかいない。しかし逆境をものともせず、大胆にして独創的なキャットウーマン像を生み出してしまったのである。映画.comは、「ダークナイト ライジング」の撮影中と完成後の2度にわたり、ハサウェイを直撃。ノーラン監督のもと、新たなキャットウーマンを生み出した経緯に迫った。(取材・文/小西未来)
――キャットウーマンというキャラクターには、もとから興味があったんですか?
「もちろん! 実は、わたしが最初に大きな仕事をさせてもらったのが「プリティ・プリンセス」だったのね。取材のとき、記者の人たちから『お姫様になれて良かったですね』『子どものころからの夢がかないましたね』なんて言われてニコニコしていたんだけど、本当は叫びたくて仕方がなかった。『わたしが子どものときに本当にあこがれていたのはキャットウーマンなの!』って(笑)」
――それほど好きだったのですか!
「独自のユーモアセンスがあって、狡猾で、誰にも依存せずに自分のルールで動いている。とにかくクールで、若い女の子だったら誰でもあこがれるんじゃないかしら?」
――これまでたくさんの女優が挑戦していますが、お気に入りのキャットウーマンはいますか?
「それぞれのキャットウーマンは、それぞれの監督が生み出したゴッサム・シティに属しているから、お気に入りを探すのは難しいな。たとえば、ミシェル・ファイファーは素晴らしい演技をしているけれど、あれはティム・バートン監督が描くゴッサム・シティのなかのキャットウーマン像だし」
――クリストファー・ノーラン監督のキャットウーマンはこれまでとどう違いますか?
「この映画のセリーナ・カイルが好きなのは、ありがちなタフ一辺倒の女性ではない点ね。独自の個性があり、独自の過去があり、独自のハートを持っている。彼女は、これまでにたくさんの痛みを乗り越えてきているの。役者として、ここまで複雑なキャラクターを演じるのは楽しかった。おまけに体格の大きな男たちを蹴り倒していくのは、うれしいボーナスだったわ(笑)」
――ノーラン監督作品で、タフな女性って初めてですよね。たいていは主人公の妻や恋人で、みんな死んでしまう。
「そんなことを考えたことなかった。余計なプレッシャーを与えないで欲しいわ(笑)」
――(笑)。
「とにかく、わたしはノーラン作品の大ファンなの。これまでの監督作すべての大ファン。だから、彼の映画であれば、警察官3という役でもぜんぜん構わない。それが、キャットウーマンなんて大役を与えられたんだから、プレッシャーも凄まじかった。とにかくがっかりさせないように、毎日現場でベストを尽くしたつもり」
――タイトなスーツを着るために、ダイエットをしたのですか?
「キャットスーツを着るためにやせなければならないことはなかった。ハリウッド映画では、女優がスタジオや映画監督からやせるように命令されるケースがあるらしいけれど、わたしにはなかった。唯一言われたのは、『ファイトシーンをこなせるように体を鍛えてくれ』ということだけ。それで数カ月、とにかく体を鍛えることに集中して、その体型に合わせてスーツを作ってもらうことになった。実は、撮影が終わってから10カ月くらい経っているんだけど、このときの習慣をいまだに続けているの。ジムに頻繁に行くようになって、ダンスのクラスを週に数回取って。さらにベジタリアンになって、野菜を大量に食べるようになった。キャットウーマンをやったおかげで、ずっと健康になれた気がする」
――次作「レ・ミゼラブル」のために長髪をばっさりと切ってしまいましたが、ためらいはありませんでしたか?
「これまでに、アクションで宙返りをしたり、ドラッグ依存の役をやったり、ヌードをしたりといろんな挑戦をしたけど、今回が人生で一番怖い経験だった。髪を切るだけで、自分のアイデンティティがここまで揺さぶられることになるなんて。それまでの自分がいかに長髪に頼っていたか思い知らされた。髪があれば、いつでも隠れることができるから。おかげで、最近は以前より声をかけられる機会がずっと増えたの。親しみやすい印象になったみたいで、それはうれしいかな」