ヒューゴの不思議な発明 : インタビュー
クロエ・モレッツ、イギリス英語で挑んだスコセッシ監督の意欲作
キュートな笑顔と聡明なまなざし、そして確かな演技力で話題作への出演が続くクロエ・モレッツ。15歳の誕生日を迎え、近頃は子役と呼ぶのははばかられるほどの存在感を見せている。マーティン・スコセッシ監督の新境地とも言える本作で、ヒューゴと共に謎ときを楽しむイザベル役を射止めたオーディションと撮影について聞いた。(取材・文:立田敦子)
――「ヒューゴの不思議な発明」は、ブライアン・セルズニックの児童書が原作ですが、小説は読んでいたの?
「小説が出版されてすぐ私の一学年下の課題図書に選ばれたの。みんな“面白い”とか“大好き”とか言っていた。私は、撮影が始まってから合間に読んだの。すごく面白かったわ。セルズニックは、挿絵も自分で書いているのだけれど、それが素晴らしくて、読んでいる間に世界にすっかりハマってしまったの」
――どうしてこの映画に出演することになったのですか?
「脚本が面白かったからよ。私は、いつも最初に脚本を読んで、母や兄たちと出演すべきかどうか、私に合っているかどうか話し合って決めるの。『ヒューゴの不思議な発明』は、なんといっても物語が素晴らしかったし、それに世界で最も有名なマーティン・スコセッシ監督の作品なのよ!」
――オーディションは受けたの?
「ええ、もちろん。有名な監督だから、会うことを考えただけで怖くなったわ。でも、部屋に入っていったら、すぐにまるで自分の家にいるようなリラックスした気分になって自然に演技ができたの。それがマーティンって人なのよ」
――アメリカ人ですが、イザベルを演じるにあたって、イギリスのアクセントで話していますね。
「最初に私は、オーディション・テープを3本ほどマーティンに送ったのだけど、全部イギリスのアクセントでしゃべったの。マーティンは、私を英国人だと思ったみたい。でも、実際会って話をしていると、どんどんアメリカ英語になっちゃって……。“君は、アメリカ人なのかい?”って言われちゃったわ」
――どのようにイギリス・アクセントを学んだの?
「兄のトレバーと一緒に特訓したの。兄は、私の演技コーチなのよ。そもそもトレバーがNYの演劇学校に通うことになって、私と兄と母でNYに出てきたのが、私も演技を始めるきっかけになったの。それ以来、いつも兄と一緒に演技を学んでいるのよ。それから、『恋におちたシェイクスピア』も何度も観たわ。グウィネス・パルトロウは、アメリカ人なのに完璧なイギリスのアクセントで話してたでしょ。とても勉強になったわ」
――サイレント映画時代の伝説的な映画人ジョルジュ・メリエスが登場しますが、彼の作品を観たことはある?
「この映画に入る前は、彼のことをほとんど知らなかったわ。マーティンが、現在残っているメリエスの映画をすべてDVDにしてくれたの。私が一番感動したのは、当時は、1フレームずつ手で色付けをしたりしていたってこと。本当に最高よね!」
――撮影中、最も楽しかった経験は?
「いろいろあるけど、図書館のシーンとかもよかったわ。本棚に並んでいるのは、実際に1930年代のフランスの本だったりしたの。だから、セットに足を踏み入れただけで、当時の気分になれたし、キャラクターになりきることができたわ。つまり、リアクションをとればよかったというだけ。私たち俳優にとっては本当に楽で楽しいセットだったのよ。マーティンは、完璧な仕事と環境を作ってくれる人なの。撮影現場には、ヒエラルキーも存在しなくて、みんな平等だしね。私はこの若さでそんなマーティン・スコセッシの作品に参加できて本当に恵まれていると思うわ」