アジョシ : インタビュー
数々のハリウッド超大作を押しのけ、韓国で2010年ナンバーワン・ヒットを獲得。韓国のアカデミー賞・大鐘賞ほか、各賞を総なめにしたアクション・ドラマ「アジョシ」が9月17日に公開される。犯罪組織に捕らわれた少女を救うために単身命をかける主人公を演じ切り、新境地を開いたウォンビンに聞く。(構成・文:編集部)
ウォンビン
「少女を救うために命をかける男に共感した」
除隊後の映画界復帰作にポン・ジュノ監督の「母なる証明」という、とてつもない問題作を選び、「秋の童話」や「ブラザーフッド」の繊細な(ある意味アイドル視されていた)イメージを払拭して、ファンを驚かせたウォンビン。630万人を動員し、2010年の韓国ナンバーワン・ヒットとなった最新作「アジョシ」でも、我々は大いに驚くことになった。
「アジョシ」で彼が演じるのは、哀しい過去から夢も希望もなくし、人目を避けるように質屋の主人として暮らす元情報特殊部隊要員、テシク。“アジョシ(おじさん)”とテシクを慕いながらも、犯罪組織に誘拐されてしまう少女ソミ(キム・セロン)を取り戻すため、ウォンビンはすさまじいアクションをほぼノー・スタントで繰り広げるのである。
「撮影に入る何カ月も前から、肉体作りを含めた本格的なトレーニングを開始しました。テシクは元特殊部隊員で暗殺のプロフェッショナルという設定なので、相手を素早く一撃で倒す武術を見せる必要があったんです。そのため、フィリピンの“カリ”やインドネシアの“シラット”など、3種類の東南アジアの武術をミックスして、“テシク武術”といえる1つのスタイルを作り上げました。複雑な構成のアクションもあり、トレーニングも過酷で大変な時もありましたが、自分なりに楽しむことができたのでよかったと思います」
従来の魅力であるナイーブさは、テシクが抱える深い哀しみの表現へと昇華し、劇中でも披露される鍛え上げられた肉体が、精悍さと研ぎすまされたオーラを増幅させる。体術はもちろん、斧やナイフ、ハンドガンを使ったアクション・シーンはまさに“一瞬の隙が命を奪う”ヒリヒリとしたもの。敵のアジトに乗り込み、十数人と対峙するクライマックスは、近年のアクション映画で屈指の名シーンといっても過言ではない。
この本格アクションは、ウォンビン自身にとって確かにチャレンジングなものだったが、彼が出演を熱望したのは、そこがポイントではなかった。本人はこう語る。
「まず、物語の面白さに引き込まれました。そして、少女を救うために命をかけるテシクの気持ちに共感できました。もともとは他人同士だった2人が、徐々にかけがえのない強い絆で結ばれていく……そのストーリーに強く惹かれたんです」
本国でアクション映画ファンだけでなく、女性の心もぐっと捉えたのは、ウォンビン自身も見どころとして挙げる「都会で孤独に生きる男と、悲惨な状況でも精一杯生きる少女が絆を築いていく人間ドラマ」が根底に描かれているからこそだろう。
「これからも、その時々の自分の心情に合った役を選んで演じていきたい。自分にとっては脚本が最も大切なものです。いい脚本でキャラクターに共感ができる作品に出演していきたいです」
本作で“アクション”という新たなジャンルに開眼したウォンビン。30代に入り、俳優としてますます円熟味を増していく彼が、どこにたどり着くのか? 今後も目が離せない。
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