「劇映画としては、微妙。科学記録映画と考えるべきかも。」はやぶさ 遥かなる帰還 勝手な評論家さんの映画レビュー(感想・評価)
劇映画としては、微妙。科学記録映画と考えるべきかも。
2010年6月13日地球帰還を果たした工学技術実証衛星「はやぶさ(MUSES-C)」。それを描いた実写映画。第一弾は、2011年に竹内結子主演で『はやぶさ/HAYABUSA』。これは、第二弾映画となります。はやぶさを描いた映画はもう一作『おかえり、はやぶさ』が予定されています。
第一弾『はやぶさ/HAYABUSA』は、どちらかと言うと、はやぶさそのものに焦点を当てていたのに対して、こちらの『はやぶさ 遥かなる帰還』は、はやぶさを開発した科学者・技術者たちに焦点が当てられています。そういう意味では、『はやぶさ/HAYABUSA』がモデルとなった人物たちの完全コピーを目指したと言われておりますが、むしろこちらの『はやぶさ 遥かなる帰還』が完全コピーを目指すべきだったのでは無いかなと思います。
原作は、山根一眞氏の『小惑星探査機 はやぶさの大冒険』。原作本は、開発関係者におこなったインタビューを中心に構成されており、開発関係者の苦労話をわかりやすく読むことができます。ですがねぇ、脚本が良くないんですかね。映像にすると、リズムが悪い。一つ一つの断片的なエピソードの連続なんですよね。なので、見ていて疲れる。
また、正確に描写を行おうとするあまり、ちょっと細かすぎる演出・描写が多いかなと。だって、始まった瞬間の冒頭の画が、コンデンサーですからねぇ。これが、クライマックスのイオンエンジンのクロス運転の伏線だなんてね・・・。それと、リアクションホイールに、バッチリと“made in USA”と書いてあったり・・・。はっきり言って、楽屋落ちが沢山あります。私は、はやぶさプロジェクトマネージャー川口淳一郎教授の講演を何度が聞いたことがありますし、関連の書物をいくつか読んでいたので、起こっていることが理解できましたが、初めて見たり、聞いたりした人はわからなかったのでは?
もっとも、その細かすぎる演出・描写が、物事を正確に描いていると思わせたのは事実。正確性を取るか、娯楽性を取るか、中々バランスは難しいようです。
厳しいことを言っていますが、劇映画としては、『はやぶさ/HAYABUSA』の方が上ですね。この作品は、どちらかと言うと、劇映画風科学記録映画(ドキュメンタリー)として見た方が良いかも。それと、話題になったはやぶさを描いた映画なので、子供連れの姿を複数見ましたが、はっきり言って子供には難しいと思います。
ところで、はやぶさを追っていた女性の新聞記者は、毎日新聞の永山悦子記者じゃ無いんですかね? この映画の制作が、朝日系になってしまったので、さすがに毎日新聞ではアサイン出来なかったのかな。間違えていたら、申し訳ありません。
映画の最後に、『この映画を宇宙開発に携わる人々に捧げる』と言う様なメッセージが出ます。たしかに、そう言う作りになっている映画だと思いました。