「物語の原点。」戦火の馬 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
物語の原点。
本国ではあの「タンタン」と同日公開だったんだとか…^^;
すごーい!
今作と其作。対極にある作品をドンと蔵出しスピルバーグ。
日本の観客は多分、タンタンを鑑賞後に今作を観ているので
うわ、ゼンゼン違う(爆)雰囲気にビックリさせられる。
でもどちらにもスピルバーグ魂は健在だということに気付く。
私的に最近では彼の映画に勢いがなくなった…という気が
してならないのだが(それは仕方ないか)完成度の高い作品を
未だに私達に提供してくれることに感謝したい。さすが巨匠。
馬が大好きな私は、ほとんどの馬映画を観ている。
しかし今回は素晴らしい、なんて美しい馬たちを(何頭だ?)
おそらく駆使して撮りあげたのだろうが、まぁこの馬たちが
見事な演技を披露する。モノ云わぬ馬同士が視線を絡ませ、
俺に任せろ!と云わんばかりに歩み出るところなんか号涙!!
なんなのよもう、この子達ったら…(T_T)アカデミー賞あげるわ。
もちろん主役のジョ―イ、そしてライバルの黒馬も見事だった。
そして今作、牧歌的風景から戦場へ送られ、様々な人と出逢い
ながら、戦火を潜り抜けて生き抜く馬の力強さに圧倒される。
どう考えても生き残れるような現場ではないのに、まさかと
思う活力でこのジョ―イは生きて、更に帰ろうとするのである。
それを圧倒的なスケールで見せる監督の映像表現も見事だが、
所々に笑いも取り入れ、名作へのオマージュまで表現している。
思えば先に観た「ヒューゴ~」でスコセッシが描いていた世界を
スピルバーグはこういう形で(馬を使って)表現したのかなと思う。
古臭い、ありふれた、単純で、地味で、オーソドックスな物語を
これが「原点だよ」とわざと観客に見せているような気がするのだ。
なんだこれ、古くせぇ。つまらねぇじゃん。と思う観客がいるのは、
映画がそれだけ進化して(してしまって)方向性を変えたのである。
人間同士の心の触れ合いや家族の絆など、そういう要素はあまり
変わっていない気がする。奇想天外な話の中にもちゃんとそんな
要素のある作品がヒットしているのは、どんなに時代が変わっても、
物語の原点は常にここにあるからだ、というのを言いたくて仕方ない
巨匠たちの「想いに浸った」作品が公開される所以と繋がるだろうか。
さらに今作は原作が児童文学ときてるから^^;敷居も低い。
おそらく子供が観ても、このお馬さんはどうして走り続けてるの?
えーと、それはねぇ…と説明ができるいい話だ。
馬を人間と同様に戦場へ駆り出させた愚かさと、大金を積んでも
ひと(馬)の心は買えやしない、という現実が最後まで胸に染み渡る。
よくぞ生きて、よくぞ帰ってきた!と
終戦後、我が子に声をかけることができた親はどれだけいただろう。
(これを舞台でやったというんだから凄いですね。観たかったなぁー)