「馬も人間も戦争は逃げるが勝ちである」戦火の馬 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
馬も人間も戦争は逃げるが勝ちである
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舞台は第一次世界大戦のヨーロッパ。
装甲車や機関銃で大量殺戮が繰り広げてる真っ只中の戦場を如何に生き延びるかに感心が集まり、息を呑む。
たまにドライブ中にはぐれた犬が何日もかけて歩き続けて、飼い主の家まで無事に辿り着いたってぇニュースをたまにやるけど、それとはワケが違うのだ。
(当たり前じゃねぇかというツッコミは敢えて無視する)
小作人一家で調教される穏やかなトーンと、戦地に送られ、
絶体絶命の危機を重ねる緊迫シーンとのギャップに戸惑い、重苦しい世界観に慣れるまで、とても時間がかかる。
そもそも奇跡の馬云うても、戦地では殆ど活躍しちゃいない。
初戦で早々に射殺された大尉は、あまりにも間抜けで唖然の一言である。
しかし、血塗れの酷たらしい状況に応じて、バトンタッチされ、二転三転していく飼い主の人生模様リレーを見つめる馬の汚れなき瞳がとても印象的だった。
馬の瞳の輝きを通して、殺し合う事でしか存在価値を見いだせない人間の愚かさを突き付けられ、平和について考えさせられてしまう。
全体的に大味やけど、スピルバーグならではの上手いアプローチだ。
戦争の被害者は、まず第三者であり、彼らがメッセージを発しないと平和は逃げていく一方であると、面と向かって叫んでくれたのが、人間では無く、馬だった。
この意味って採点とか賞とかでは上手く解ってこないと思うけどね…。
まあ、それがハリウッドにおける戦争事情なのでしょうな。
では、最後に短歌を一首
『駆け抜ける 嵐を独り 帰るため 燃ゆる瞳は 絆を託す』
by全竜
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