「稼いで食べて恋をする人生。」人生、ここにあり! ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
稼いで食べて恋をする人生。
名画座にて。
1983年のミラノを舞台に、精神病院廃絶法により実社会へと
放り出された(なんと実験的!)元患者達の労働組合を結成し、
床貼り事業を立ち上げるという実話をベースに描かれた作品。
組合長を取り仕切ることになるネッロという熱血漢のオヤジは
元患者達とのやりとりの中でも常に「稼げる」をモットーに掲げ、
精神を患った元患者にでも稼げる仕事、成功する仕事を探し
彼らの先導を担うのだが、これがいかにもイタリア人気質の
明るさとユーモアで描かれるため、お涙頂戴の感動劇よりも
純然なコメディの中に、現実が入り込んでくるリアル感がある。
そうは簡単に成功するはずもない彼らの事業が、
とある分野(それぞれの)に長けた技術力(各々)の発揮により
素晴らしい成果をあげていく様子が微笑ましく描かれ
社会に溶け込むためには、必ずしもテキストに書かれていない
人との繋がりから学ぶということ、欲に忠実であること(爆)も
イタリア人ならでは♪という感じでまったくもって嫌みがない。
もし日本で同じような試みが為されたなら、
すぐさま子供達は屋内に閉じ込められて(危険がないように)
彼らを「病院ではないどこか」へ疎外させる運動が起こりそうだ。
他人との付き合い方で精神を病む人が多い昨今だが、
他人との繋がりなくしては生きていけないのが人間でもある。
それを遮断し薬で平静を保つことが果たして幸せなのかどうか。
1人の元患者が若い女の子に恋をして精神を乱し始める。
結果、誰もが想像しなかった悲劇が起こるのだが、では彼は
恋など知らないまま一生を終えた方が、幸せだったろうか。
愛されずに精神を病むくらいなら、愛を知って苦しむ方がいい。
絶望も悲しみも味わったことがないからブチ切れてしまうのだ。
(だから何度も訓練を積むわけよ)
彼らを理解することは難しいかもしれないが、
他人を理解すること自体、一生かかっても出来るものではない。
まずは自分から理解しないと。
(自分を好きになること。長所も短所も悪態も弱点も全部含めて)