ロブ・ステファニューク監督が、イギー・ポップをはじめとしたアメリカ音楽界のスーパースター達を総出演させて描く、ヴァンパイア映画。
売れないバンドの紅一点が、謎めいた男性に付いて行く。戻ってきた彼女は、卑猥ないやらしさと、超絶なる美しさを秘めたヴァンパイアになっていた。
これは・・誰に向かって届けられた映画なのだろうか。音楽界のスーパースターを呼びましたというが、あまりに存在意義の無い役柄で適当に顔出しで使われている。
ならば、音楽映画として観るのか。対して上手くも無いロックナンバーを延々と聞かされ、観客もそのあまりに陳腐な演奏シーンにため息しか出てこない。ロックバンドを舞台に持ってくるなら、それなりに現在第一線で活躍するスターをカメオで起用するなど、もっと工夫できないか。
では、現在の何でもありのアメリカショービズ界への鋭い警告という風刺映画として観賞するべきか。中盤まで、ヴァンパイアとしてのし上がっていくことへの疑問と、苦悩が描かれていくが、作り手も集中力が切れたのか、後半からは完全に切れの悪いギャグで間を繋ぐ適当さが全編を覆い尽くしていく。
破廉恥なドラック、セックス、ロックンロールの腐敗を皮肉を込めて描くコメディとして考えれば、出演したスター達の熱狂的なファンと共にある程度は楽しめる。だが・・これをモンスター映画として分類するには、あまりに雑な展開と、安っぽさ。猛烈に襲い来る眠気と戦いながら、方向性を失った映画の行く末を見せ付けられ、ただただ、悲しくなってしまう。