静かな映画だったなぁ
登場人物たちの内面は
激しい音を立てていたと思うけど
『北京の自転車』(00)で撮影監督を
されていたリウ・ジエさんの長編2作品目になります。
日本では、昨年埼玉県川口市で開催された
“SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2010”で
監督賞・観客賞をW受賞しています(こんな映画祭、
知りませんでした。今年から参戦。チケット購入済♪)。
風景が印象に残っている映画、
日本のお客さんに支持をされた実績、
この2本柱がありましたので、期待は大きかったです。
鑑賞後の感想としては、
期待通りの作品だったのですが、
とにかく静かで、私の耳と記憶が、
あっていれば、作中の自然音を除いて、
BGMらしき音が入ったのはエンドロール直前だけだと思います。
しかも、臓器移植・命をめぐる映画でありながら、
ひとりを除いて感情を押し殺している人たちばかりなので、
その静かさに輪をかける。イコールなにが起こるかというと、
迫り来る激しい睡魔との戦い(苦笑)
映画って、ほぼ必ず、どこかしらで、
観客に息をつかせるために、話の緊張感を緩めます。
静か、静かと繰り返していますが、
本当に静かなので、緊張感が緩んだ瞬間、
鑑賞前に昼食を取っていたこともあり眠くて眠くてたまらない。
まるで、学校の授業中かのように、
右手で、左手の甲をつねり、必死に起きていました。
だって、作風からして、少しでも寝てしまうと、話の
流れが、まったくわからなくなるような気がしたんです。
映画が終わったとき、左手の甲はつねりすぎて真っ赤になっていました^^;
◇ ◇
中国で起きた3件の事件をベースに、
それをひとつにあわせた作品になります。
・裁判官+妻+娘
・警察+父
・被告人+母+弟+家族
・会社社長+妻
ある者は、娘を殺人とも思しき事故で亡くす。
ある者は、父の敵を取るべく犯人を死刑にしようと画策する
ある者は、死刑判決を受けた被告人から金で腎臓を買い取り移植しようとする
ある者は、貧しい家族のために、自分の腎臓を金と引き換えに売ろうとする
立場、仕事、環境の違いこそあれど、共通しているのは、みんな人間であること。
たとえ、表面上は静かに見えたとしても、心
の中は激しい嵐に吹きすさばれている者もいる。
自分が、一番の被害者だと思ったとしても、
みなが、物理的か精神的な被害を受けている。
それに、気がついたとき、傍から見れば、
なんでもないことかも知れませんが“奇跡”が起こる。
それは、決してお金では買えないモノ。
ずっと、表情のなかった、ある人物が、初めて笑顔を見せた瞬間。
いつも、自転車で走っていた道に、
まるで違う輝きとキラメキが、確かに、そこにあるように見えました。
“自分を変える勇気”
“自分を否定する勇気”
他人を変えるには、まず自分が変わる。
なにも考えていなかった、
いや、考えようとしていなかった人が、
他人の気持ちを考え、相手の心の痛みに気がつく。
これこそ、この人にとって
“再び生まれた”瞬間のように思えてなりませんでした。
★彡 ★彡
鑑賞直後は、睡魔に打ち勝てた喜びが大きかったのですが、
時間が経ち、映画を頭の中で静かに再映してみると、ひとつ
ひとつの表情や、カット割りに、意味が込められていたような気がしてきました。
扱っているテーマからは重そうに見えますが、
人間と正面から向き合った静かな力作でございました。
ありがとうございます(人-)謝謝