モールス : 映画評論・批評
2011年8月2日更新
2011年8月5日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにてロードショー
したたかに女優の道をまい進するクロエ・グレース・モレッツ
「キック・アス」のヒットガール役で一挙に<幼女ブレイク>したクロエ・グレース・モレッツ嬢は多くの子役がそうであったように少女期突入の急激な肉体変化を耐えていくしかない。首が心持ち前傾しやすく、背中の肉が厚くなりやすい体型、筋が出やすい脚をモレッツ嬢はどうコントロールしていくか。少女期突入のモレッツ(アビー役)を<風呂上がりバスタオル巻き><KISSジャケット>着用といったサービス・カットで楽しませつつ、スウェーデン映画「ぼくのエリ 200歳の少女」のリメイクを試みたのがマット・リーブス監督の「モールス」である。疲労を滲ませ肌を荒らしたモレッツの表情は東欧風でそれだけでミステリアス。12歳でこの映画を、この表情を選ぶというのはモレッツの知性が年齢のそれではないということだ。したたかに<女優>なのである。
ロナルド・レーガンが米大統領だった1983年、ニューメキシコ州の田舎町でモレッツを<隣の部屋の少女>として迎えるのが、「ザ・ロード」でビゴ・モーテンセンとともに世界崩壊後のアメリカを旅したコディ・スミット=マクフィーだ。少女のような男の子=オーウェン役に彼以上のルックス、白い肌はない。マッチョイズムが支配するこの世でフリーク扱いされる弱者二人の出会い。ボーイ・ミーツ・ガールの変形譚だが、ガール・ミーツ・ボーイ、ガール・ミーツ・ガール、ボーイ・ミーツ・ボーイに転倒しうる。
(滝本誠)