「世の中は優しい人ばかりじゃない」星守る犬 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
世の中は優しい人ばかりじゃない
オープニングは奥津と愛犬クロの物語を少々。しかし、もっと愛すればよかったと後悔する、ありきたりの物語。ここでは泣けない。
東京まで行って、そこで一人の家出娘・有希(川島)が京介の運転するオンボロワーゲンに強引に便乗する。そこから旭川まで、ロードムービーとなる。
初老の男が持病と失業による孤独死を辿る道なんて、最初は退屈ささえ感じた。しかし、あることに気づく。車の車体番号など、身元を明らかにするものは一切残してない男。最初に赴いた新宿の会社は、彼が持っていた百科事典の編集者の名前と所在地を借りたものだった。領収書を頼りに北上する奥津と有希は、訪れる地で覚えてる人に尋ね歩き、徐々に男性の優しさを知る。そうした単調に進むストーリーの中、旅館の女主人(余貴美子)、コンビニを廃業する店主(中村獅童)、リサイクルショップの夫婦(温水洋一、濱田マリ)、とにかく生活が苦しい人ばかり。唯一、マウニの丘の経営者(三浦友和)だけは普通の生活だったが・・・
さらに男(西田)の回想シーンも交え、2000年初頭から起こった社会の出来事、小泉政権誕生、リーマンショックなどの新聞記事。それに男の家庭環境が妻(岸本加代子)の親に対する介護の問題、派遣会社、そして本人の失業だ。ハローワークも何度も登場する。こうした社会問題を取り入れ、その問題提起さえ感じさせる内容になっていた。
「犬がもの欲しそうに星を見続けている姿から、手に入らないものを求める人のことを指す」ことにしても重要な問題とは思えない。むしろ、経済の慢性悪化の世の中で幸せや金品に対する物欲のことを言ってるのかとも感じさせればもっとすごい内容だったろう。
いきなりの離婚届。展開としてはちょっとわざとらしさを感じるが、これで愛犬ハッピーとの愛を強調したかっただけかもしれない。そして、男が死んでから、懸命に生きるハッピーの姿も描いているけど、最後にキャンプ場で楽しむ人たちから怖がられ、物を投げられ傷つくシーンが凄い。世の中は優しい人間ばかりじゃない?