冷たい熱帯魚のレビュー・感想・評価
全153件中、141~153件目を表示
鬼才、いや、巨匠・園子温
「愛のむきだし」に衝撃を受けて以来、次回作が気になっていた園子温監督、また凄い作品を作ってくれた!
実際にあった連続猟奇殺人事件をモチーフに、人間の内に潜む狂気、欲をむきだしにする。
吹越満、でんでん(とにかく凄い!今年の邦画の助演男優賞は決定!)、神楽坂恵、黒沢あすか、演技の限界に挑んだ熱演・怪演もさる事ながら、園子温監督の鬼才ぶりに改めて感服。
グロ描写、エロ描写を堂々と描き、それでいて役者から秘められた演技を引き出し、KOパンチ並みのメッセージ性やインパクトを残す演出は、もはや巨匠の域。
甘ったるい映画を量産する日本映画界で、これだけ脳天にガツンと来る映画を作るのは、園子温だけ。
次回作ももう2本公開待機中。(「恋の罪」「ヒミズ」)
早く見たい!
偉大なる殺人鬼の牽引力に打ちのめされる血祭りの世界
実際に起きた凶悪犯罪をベースにした血みどろのグロテスク描写に顔を歪める場面が多かったが、最後まで狂気の世界に面白さを見いだせたのは、オーナーを演じたでんでんの強烈なキャラクターに尽きる。
普段は満点の笑顔で弁が立ち、人懐っこく接してくるが、一転、人を人とも思わず、バラバラ殺人を繰り返す残虐な鬼畜の顔が迫っていく。
オーナーの裏表の激しさが、店主を血肉を細かく切り刻む地獄に後悔の念なぞ持たせる猶予もなく引きずり込む。
仕事にセックスに金にバラバラ殺人に…
冷静かつエネルギッシュに、他人を地獄へと牽引する説得力が爆発しているのが映画における殺人鬼スターの鉄則なんやなと思う。
レクター博士然り、殺し屋1の垣原然り。
血まみれで解体した直後に笑顔でコーヒーを作ってくれと催促する。
あのキチガッた愛嬌が、共犯者として巻き添えになる人の心を掴むんやろね。
最近、戦争映画やパニックものを立て続けてきたが、その中で最も血生臭く、そして、人間臭かった。
オーナーの血祭りに打ちのめされると、ピラニアのビキニ美女喰い放題なぞ所詮、ガキの遊びである。
では、最後に短歌を一首
『水の底 血と愛嬌で 愛撫して 肉までしゃぶって 透明にする』
by全竜
でんでんに始まり、でんでんに終わる
エログロの向こう側
エログロの向こう側を見てしまった!
こんな狂気見たことない。
園子温監督、やってくれたなあ。
最後まで見てわかったが、このお話はずっと社本の視点なのだ。
多くを望まず、娘にも妻にも思ったことを言えない弱い男。
しかし、自分は善良だと信じている。
弱いから善良だというのは一つの偏った価値観。
全く真逆の性格と思われる村田。
しかし彼は言う。
『お前は昔の俺そっくりだ』
社本が”変身”するシーンは見もの。
完全にあちら側に行ってしまった。
しかし、これが社本の本質なのかもしれない。
いや、誰もがあの異様な状況にさらされればこうなのかもしれないが。
ラスト、娘、美津子の言動にはっとさせられた。
視点が変われば全く違ったものの見え方がしてくるのだな。
それにしても、でんでんの怪演に圧倒され、黒沢あすかのエロさにぞくぞくさせられた。
吹越満の変身ぶりも見事。
派手な役者を使っている訳ではなく、煽るような音楽もない。
なのに画面から少しも目が離せなかった。(目を背けたくなるシーンはいっぱいあったけどw)
万人に受け入れられる作品ではないが、ものすごいパワーで見るものを圧倒する作品でした。
一見の価値あり。見どころは人間心理。
シネ・リーブル池袋で観てきました。
男性向きの映画だろうなと思っていのですが、
わりと女性客も多かったのが意外でした。席はほぼ満席。
予告編を観ればこの映画の性質はほぼ理解できますが、
猟奇殺人を取り扱った、スプラッター、エロ要素満載の大人の映画です。
そんな過激な部分が目につく映画ではありますが、
それはこの映画を構成する要素の一部に過ぎず、
緻密な人間描写やストーリーなど、
この作品の本質的な面白さは別にあると感じます。
吹越さん演じる主人公「社本」は、どこにでもいそうな
平凡で、真面目で、ささやかな幸せを望んで生きている気弱な男。
その彼が、でんでん さん演じる「村田」の巧みなペースに飲み込まれ、
とてもとてもヤバイ状態へ(家族もろとも)引き込まれてしまいます。
自分ならどうするだろう?と思わず考えずにはいられない場面ですが、
主人公と同じ状況におかれたら、
自分も同じ道を歩まされたかもしれないと思えて本当に怖くなります。
この映画の怖さは、まさにこのような人間心理にあるのだと思います。
正直スプラッター的要素は、観ているうちにだんだん慣れてきます。
それもそれで怖いですが…
悪人役の村田ですが、これがなかなか憎めないキャラクター。
いわゆる詐欺師キャラなんですが、
とにかくハイテンションでよく喋る。
「こんな人、いるよな~」なんて、可笑しくなりつつも、
巧みな話術、人心掌握術で、人の心をもてあそぶさまは、
少し憧れてしまう部分でもあります。
話が進むにつれ、この村田が、
主人公のメンター的存在になってくるんですが、
「殺人」を抜きにすれば、なかなかイイこと言っていて感心します。
というわけで、観終わった後、それなりに得られるものもあり、
一見の価値あり。といった映画でした。
おしゃれなミステリーを期待して行くと……
埼玉の愛犬家連続殺人事件をモチーフにしてる。日本にも昔はあった実録犯罪モノ、最近の韓国映画のそれに刺激を受けたという。
愛犬のブリーダーを高級熱帯魚に置き換えた。
熱帯魚店を舞台にしたことで、映像的に美しくなっているが、おしゃれなミステリーを期待してカップルで行くと、見終わったあと気まずい雰囲気になりかねない。
R18なのは、エロさだけでなく「悪魔のいけにえ」を彷彿とさせるグロさも半端じゃないから。
再婚した妻とグレた高校生の娘と暮らす主人公の社本(吹越満)の救いようないダメさが最後まで続く。癒されたのは、園子温監督の鬱だけ…。監督の狙い通り井筒和幸監督の「ヒーローショー」を見たときのような後味の悪さを感じさせてくれる。
社本はぼく?
これぞ狂気を描かせたら世界で指折りの園監督の真骨頂
せっかくの宣伝会社からのご提供とはいえ、あまりにシュールな作品でした。開始25分ほどたって、村田夫妻の狂気じみた悪事が明かにされる件で、ちょっと気分が悪くなりました。だけどこれが園ワールドの狙いどうりなのでしょう。席を立とうとしましたが、それでは園監督の思うつぼだなぁと思い我慢しながら鑑賞しました。あぁ~されども、見終えたあとまず思ったのが、「席を立ってれば良かった!」ということでした。
これぞ狂気を描かせたら世界で指折りの園監督の真骨頂。まして、でんでんの水を得たような悪役ぶりはおぞましいのひと言です。やっている本人は、快感を感じながら演じているなんて信じられません。木訥とした「いい人」ばかり演じさせられてきた、でんでんにとって本作の村田役は、これまでの善人役と比べて別人格を演じる、演じがいが段違いにあるのだというのです。
そんなでんでんに宿る狂気を引っ張りだし、妻・愛子を演じる黒沢あすかなど、それほどの美貌とは言えない女優を怪しくも綺麗に見せてしまう園監督のマジックには脱帽モノです。映画の表現テクニックとしては、凄いポテンシャルを感じます。ううっ(悶絶)(^_^;)…
…それにしても、ここまで人を不快にさせる園監督の演出力とグロな思考力は、すごいなぁ~とは思います。単なるグロでなく、人間の持つ業を、これほどまでに人間臭く、悪臭を漂わせながら描ける監督は、日本の中で園監督しかいないのではないでしょうか。人が生き抜くための裏面を知り尽くしていないと、ここまでの描写は無理でしょう。頭で考えただけでは、どこか逃げ道を作り、美談にしたり、救いを作ってしまいがちになってしまいます。
そして衝撃的な結末。皆さんは血しぶき舞い踊る本作にどこまで耐えきれるのでありましょうか!早く次の新作は…う~ご勘弁くださいぃぃぃ。
シュールな作品がお好きな方には、たまらないくらい過激な刺激に満足されることでしょうね。
全153件中、141~153件目を表示