「のぼうの頭脳。」のぼうの城 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
のぼうの頭脳。
水攻めシーンのため、完成から公開を一年以上も延ばした作品。
確かに凄惨なシーンであるが、そもそも水攻めっていう戦い方が
私的に気に入らない(そういうことを論ずる場じゃないけど^^;)
二万もの軍がいるんだから、正面切って戦えっ!と思ってしまう
豊臣勢に対し、やはり歩が悪いのぼう勢の味方をしてしまう…。
結局は開城せざるを得ない状況とはいえ(天下統一の一歩手前)、
あまたの農民をこよなく愛する城主(代理)は、彼らのために戦う。
いや、戦うというより守るほうに近いのか。
策という策があるようなないような武勢に、智将であるのぼうと
武将である丹波のコントラストが猛々しくてコミカルだった。
こいつら、ギャグ言ってるのか?という現代詞も度々入るという、
時代考証よりも破竹の勢いでガンガン推し進めてしまう語り口。
しかし、かなりのエンターテインメント作品と思うとそうでもない。
広大なセットでの撮影など、背景的には見事だが、物語的には
のぼうと農民軍が繰り広げる、豊臣勢との鬩ぎ合いが主な動線。
まんまと罠にかかったかの如く、豊臣勢が撤退する前半はいいが、
その報いはすぐに豪水に代わり、城周囲全体を呑みこんでしまう。
あくまで不安を誘うことなく飄々とふるまった城主(代理)も、さて、
いよいよここで諦めるか…と思った矢先に、彼がとった奇作とは。
原作も、その原典となった脚本も知らなかったが、
この「忍城」と成田長親の真実には驚き賞讃してしまうものがある。
何を考えているのか分からない、でくのぼうと見えて、実は、
誰よりも領地の農民のことを考え、大切に扱う領主の本分が熱い。
埼玉というところは、今でも農作物や食品製造の分野でかなりの
繁栄を誇る県だが、食物に不自由のない暮らしが昔も今も脈々と
息衝いているその原点は、農民の暮らしぶりに伺えるのではないか。
のぼうが何を見、何を感じ、どう考えて生きたかは分からないが、
自らの暮らしを支えているものが何なのか、そこに携わる人間達が
どんな暮らしをしているのかを「視察」のように繰り返す日々行脚も、
お高い城の上にいては、分かるはずのない実態である。
社長のためならと命を賭して頑張る部下たちに恵まれる会社経営、
夢のような団結力をもたらすノウハウが今作には詰まっている。
さて、キャスト陣で意外な好演をみせたのが石田三成(上地)だった^^;
両脇に大谷吉継(山田)、長束正家(平)を携えてのアッパレな振る舞い。
私が思うに、このヒトも少し前までわざとバカ者(ゴメンね)を演じていた
気がする、実は非常に小賢しくて出世街道を歩く資質の持ち主だと思う。
個人的にはあまり好きなタイプではないけど(ホント申し訳ない)
これだけ幅を利かせてくれると、これからが楽しみといえる俳優の一人。
(萬斎の巧さ、成宮の可愛さ、しかし佐藤浩市は何をやってもステキねぇ)