神様のカルテのレビュー・感想・評価
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人生をリセット
こういう作品を見ると普段考えていない病気のことについて自分の最後はどうなるのか、誰もが迎える死について考えさせられる。お涙ちょうだい的な映画だからこそ、こういう映画は必要である。映画を見るときに誰が演じているかということも大事だが、もっと内容を重視した見方も大事たと思う。
いつも忙しい毎日を送っている人こそこの映画を見てほしい。そして見て、少しでもいいから、自分の人生について考える時間を設けてほしい。
映画を見ると一止はとても仕事に恵まれていて、なかなか患者から信頼を受けているように見える。とても幸せな人生で、私からすればうらやましい限り。いろんな人間がいていいと思う。ばりばり新しい医学を求めて突っ走る人生もあれば、一人一人の患者をじっくり診る医師もいていいと思う。この世の中はうまいことバランスが取れている世界である。その証拠に人間は男、女がだいたい半々である。暑い夏が続けば、必ず寒い冬が訪れる。
また、夫婦の関係もこの映画はいろいろ教えてくれる。この映画を見ればわかるが、とても見ていてじーんと来るものがある。まだ新婚一年目のほどの夫婦であるが、自分の新婚の時を思い出し、自分の気持ちをリセットしてくれる。
こういう映画を見ることによって、自分の人生を見直すことができるということは、とても素晴らしいことだと思う。
脇役の熟年俳優は、本当に映画を引き締めてくれる。セリフ一つ一つがとても感動を受ける。
ぜひ、いろんな方に見てもらいたい作品である。
また、映像と音楽の素晴らしさが一層この映画を素晴らしいものにさせている。
穏やかで優しく温かい物語
映画化の劣化が全く感じられない秀作です。
学士殿をハルさんと男爵と3人で送り出すシーンは圧巻でした。加賀まりこの手紙にも泣かされました。
池脇千鶴と吉瀬美智子がいい味出してました。
凄く良かったです。
2の前に見てみました
2の公開前に見るかどうか判断する為に借りて来て見ました。
カッコイイ櫻井翔のイメージではないけどこれもありだと思いましたね。
次回作は大好きな藤原竜也も出ますので見に行こうと思います。
事務的に見えるが純粋な思いが伝わる作品
映画評価:60点
神様のカルテとは、治療の出来ない終末医療の患者さんに希望を与えるというもの
少しボケボケしている主人公の熱心な誠意に患者さんが救われているのを観ていると心が締め付けられますね。
最後まで主人公の生活感(妻や仲間)は不要だと感じていましたが、やはり支えを描くのは重要なのかもしれない。
この主人公の性格を表すには生活感は必要でした
あとは主任看護婦が良いスパイスになっていて、むしろ奥さんより重要ですね。
観ている私が一番感情移入出来るのは彼女でした。
続編もある様ですので、期待したいですね。
【2014.4.23】
のんびりとした詩的な医療現場の演出でした
総合65点 ( ストーリー:65点|キャスト:65点|演出:65点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )
医療現場で人の生き死にを見届けながら成長する若手医師の話なのだが、主人公とその妻は終始のんびり癒し系で詩的な雰囲気が漂い、重々しい医療現場という感じではない。原作がそうなのか監督の意向なのかわからないが、その雰囲気のままに患者の命を看取るという部分に焦点が当たりすぎて、現実感が掴みにくい。要は医療の話というよりも人情話になってしまっているのだが、でもこんな雰囲気の作品もたまにはありなのかな。
何かちぐはぐ。
うーん、微妙ですな。
見終わってしっくり来ない。
多分、主人公のキャラクター性から
背景、生い立ちが薄っぺらいから。
小説の丁寧な書き込みが使えない分
映画は如何にそれを省けるか。
この作品はその典型とも言える。
夏目漱石好きな気の弱い変わり者の
医師が日々、命を失う場面に苦しみ
悩むんだか、感情移入出来ねー。
だから見送り、何?って感じで
中途半端感、満載です。
伝えたかったであろう、
神様のカルテの意味も作り込みが
甘いせいで感動薄く・・・。
宮崎あおいも好きなんですが
何かフワフワした役多いです。
結局、
変わり者の気弱な医師と
その変わり者の仲間たち
としか思えなかった。
残念。
イイ“雰囲気”の映画
地方病院の青年医師イチが、写真家の妻ハルや同僚や患者に支えられ、成長していく姿を描いた、ベストセラー小説の映画化。
主演に“嵐”の櫻井翔と宮崎あおい、共演者にも個性的で実力のある面々。
患者との向き合い方、避けては通れない患者の生と死、医師としての成長…。
登場人物も皆善意に溢れ、テーマも内容も温かく、涙を誘い、見た後は優しく幸せな気持ちに浸れる。
でもでもでも、何なんだろう、この終始地に足が着いていない感じは?
どのエピソードも魅力的ではあるが、美しく語られているに過ぎず、善意溢れる登場人物もファンタジーの世界の住人のよう。好感度の高い役者の顔触れがさらに拍車をかける。
ボーッとして文学的な台詞を喋る主人公イチがどうも空っぽに見えて、感情移入しづらい。夏目漱石好きの愛読家で古風な性格という人物設定なのだけれど。
24時間365日対応の現状とか地方の医療現場の実態とか重みが足りず、見る者の心にズシンとくるものが無い。
この映画は現実を描いているのではない、理想を描いているのである。医療の世界という現実味たっぷりの“リアル”を描いている以上、致命的。
“イイ雰囲気の映画”であって、“イイ映画”とは特別思わなかった。
宮崎あおいは相変わらず可愛い。
でも最近、似たような役柄が続く。櫻井翔の奥さん、堺雅人の奥さん、岡田准一の奥さん、向井理の奥さん…。「わが母の記」での自立した女性は良かったのだが。
好きな女優なので、このままタイプキャストになってほしくない。
説得力に欠ける
櫻井翔演じる地方医院の内科医栗原が、研修に行った大学病院の医師から気に入られ先進医療に携わらないかと誘いをうける。
余命幾ばくもない患者(加賀まりこ)を担当していた栗原医師。
患者であるおばあちゃんとの治療中にめばえた交流を通しての医療の現場と一人の患者が亡くなるまでの過程、そして医師の妻との穏やかな生活、同居している仲間達とのエピソードも描かれている。
写真関係の仕事をしている妻との生活、空気感が現実味に欠けていて伝わってこない、むしろ作品全体の流れを澱ませている。
また、同居人である仲間との別れの部分ももっとぐっときてもいいはずなのに、その空気感が邪魔してイマイチ入り込めなかった。
主人公の医師が夏目漱石かぶれであることで妻や友人までもがその時代の人のような世界に入り込んでいるのか、ごっこ遊びをしているのか...とにかくドラマを構成する上でリアル感にかけておかしな空気を生んでいるのだと思う。
医療の現場では治療に携わりながらも報われなくて命を救えない場合もあり、これを繰り返し経験していれば一人の患者に特別な感情移入をする医者などは現実にはいないのかもしれないが、一人一人の登場人物がしっかりと作られていればたとえ現実にないことであっても、それを観る者にこういう医師もいるのだと納得させられたかもしれない。
主人公である医師と妻との日常生活での妙な空気感がなければ、泣かせる場面でもっと感情移入できたかもしれない。
要潤演じる友人である医師や医師の妻役の宮崎あおいも熱演ではあったが残念ながら作品全体からみて役割的にいてもいなくてもよいのではないかと感じた。
どの部分から観ても中途半端になってしまっている感があるので全体的に変な空気感、人物のリアル感のなさが目立ってしまっていて伝えるべきメッセージが伝わらない、残念です。
余談になるが劇中のセリフにやたらと「先進医療」が出てくるから桜井くん主演なのでアフラックが絡んでるのかと連想させられた。
(自分のブログ記事を引用しています)
感動でした・・・。
私自身、嵐の櫻井翔さんが大好きでこの映画を公開初日に友達3人で見に行きました。私の友達も嵐好きですが、担当は違います。
人を掬うと救うというのは、同じ「すくう」と読むのに意味は全く違う。
イチさんが、安曇さんの為に献身的にサポートしていた所は本当に素晴らしいなと思いました。
要潤さんがセリフで「1人の患者に偏りすぎるなって言っただろ」というシーンがあります。
人は誰でも病人になれば気持ちが沈んでしまったり重い病気ならば生きる気力を無くしてしまいます。
それでも人は治る事を信じて前向きに生きていけばいつか治る。
イチさんは安曇さんを救いたい理由として、この人を助ける事で自分は新たなstep upが出来るのではないか、そういう甘い理由かもしれないけどイチさんにとって安曇さんはそんな心強い存在だったのではないかと思われます。
友達は泣いていませんでしたが、私は号泣していました。
この映画を見て、私は一人でも多くの人がイチさんのような優しく素敵なお医者さんによって病気を治してもらえるように・・・、そして1人でも多くの人が幸せに生きていけるようにと思えた映画でした。
よりよい未来へ
櫻井の黙考する姿は良いものだ。と誰かが言った気がします。
映画の雰囲気は十分あります。
すこし、現代医療機器があれだけ出ているのに、昭和の雰囲気を保ったままの
旅館に?となりましたが、そういう人が現存していることもありましょう。
より技術を高めるために(高めれば高めるだけ救える人も増えますから)
医院に行くという選択もあったでしょう。
しかし、ハートフルな終わりというものは現状維持であることが多い。
それを象徴する櫻井。
簡単に変わってしまう現代への反抗として懐古趣味が流行り、
時代の変遷は冷酷なものとして描かれる。
しかし、人生への門出を選び前へ進んだ学士どの。
現状維持と革新。
二つの違った選択を書くことで、どちらも肯定しているやさしい映画です。
泣いたけど。。。
まず、キャストが良かったと思います。
変に気にすることなく、飽きることなく、集中して観ていました。
夜間診療・出世・大学・最期のとき…私は医療職をしていますが、医療者であること・人を診るということ、自分の職業に対して色々と考えました。
ただ観終わった後に、もう1回(DVDでも)観たいとは思わなかった。
予告を観て、櫻井翔クンのもじゃ頭はどうなの?!って思っていたけど、あれで良かったと思いました。
いつもの髪型だとアイドル・イケメン映画と化す気がする。あの感じだから、人間味あふれるストーリーが伝わるのだと思います。
こうしてレビューを書いてたら、また観たくなりました。
振り返ると、すばらしいストーリーだったなぁ。泣いた部分もあったし。
でも、観終わった後の自分は、もう観なくても良いや~って思っているんです。笑
(実際に観たのは1ヶ月前なので記憶が曖昧。)
とりあえず、小説や漫画も読んでみようと思います。
予告編.....もっとワクワクさせて!
予告編の桜井君の泣き方が臭いなと思い、見に行かない予定でした。
でも、見に行って良かったです.....。
感動しました.....例のシーンも前後の繋がりから、あの泣き方がマッチしてました......印象がまるで違うなんて、映画って深いですね!
大学病院もこれまで描かれた嫌な感じがなく、立派な病院もあるんだなと.....まぁ、患者を思うと100%ではありませんが、これが普通であって欲しいと改めて思いました.....。
脇を固める役者達....一流揃いですね!
加賀さんなんか、完璧ですね!....各シーンで涙が溢れました....。
榎本明もいい味出した嵌り役でしたね!
西岡徳間さんも落ち付いた感じでいいです.....。
池脇千鶴ちゃんも可愛いし、いい役回りでした....。
要潤もライバルとして良い演技でした.....。
原田泰造は、最初気が付かないくらい役者っぽかったです!
宮崎あおい.......自由に生きているようでしっかり夫を支える.....こんな夫婦....良いですね!
「最後の最後で、こんな幸せな時間が待っていたなんて....」
「先生のカルテは.....私にとって神様のカルテだった.....」
やっぱり宮崎あおい
暖かい気持ちになれる映画でした。主人公の口調は自分的には好きだったし、主人公を取り巻く脇役達が素敵でした。
要潤に阿部寛を重ねた人は少なくないと思います。意図的だろうか?たまたまだろうか?
中でもやっぱり宮崎あおいが、フワッと自然に絶大な存在感で素敵な女優さんだなぁって思った。
涙は出なかった。
本屋大賞に選ばれた、話題作の映画化です。
主人公の栗原一止(いち)に嵐の桜井翔、妻の榛名に宮崎あおい。
その他、いちの進む道を決めるきっかけとなる
ガン患者に加賀まりこ。先輩医師には柄本明ナドナド
心配ナシのキャストです。
物語は~
信州の総合病院に勤める主人公いちは
救急医療24時間体制でヘロヘロになる毎日を過ごしています。
ある日、大学病院に研修に行くことになり
教授に見込まれ、大学にこないかと誘われます。
最先端の医療技術を駆使して研究をし
将来、多くの患者を救う道。
今、病に苦しんでいる患者に寄り添いながら
最善の治療を施す道。
いちはどちらの道を選ぶのか・・。というストーリー。
文語調で話すいちに、初めは少しイラッとしましたが
慣れましたよ。
今、日本映画にかかせない名脇役、柄本明さんは
今回も上手いですよ~~~~。
それと要潤。主役を張ることは少ないですが
元仮面ライダーG3!侮れない役者さんですよね。
将来、阿部寛っぽくなってくれたら嬉しいなぁ。
あと、池脇千鶴もイイっ!もっと出番があっても良かったかも。
主人公と妻、2人とも大きな声は出しません。
宮崎あおい、と~っても可愛い奥さんで
私にはまったくナイ雰囲気。羨ましい限りです。
最後、いちにある告白をするんだけど・・・
それがまた優しい感じで大好きです。
自分の時はどうだったか・・思いだそうとしたけど
思い出せなかった。
あんな風に伝えられたらイイぁ~。
来世にはそうしたいです。
現在の医療の問題点も考えさせながらも
ピリピリ感0っ!
ゆるゆると穏やかな展開です。
感動作と言われていますが~
私は涙がでませんでした。
【神様のカルテ】星は3つです
要潤が要?
物語の内容がありふれていて、全体的にボヤけて薄口でした。
病院の屋上で穂高を覗むシーンとか、安曇さんの遺書の内容とか
なんだかとっても普通でちょっと残念でした。
原作を読んでいれば、きっともうちょっと面白く感じることが出来たのかなと思いました。
でもキャスティング最高です。どなたも凄く良かったですが要潤さんになぜだか惹かれました。さすが、タイムスクープハンター。
一止と榛名のあの夫婦感、安曇さんが亡くなった夫を思う気持ち
そんな二つの夫婦愛がとってもよかったです。
松谷さんの音楽も素敵でした。
原作に忠実に、浮ついたところもなく、生真面目で優しい映画に仕上がっていました。
凄く感動して、今年一番泣かされた作品となりました。ベストセラー原作ながら。鳴り物入りになりがちなところを、原作に忠実に再現。浮ついたところもなく、生真面目で優しい映画に仕上がっていました。
テーマも明確で、多くの人を助ける先端医療か、目の前の患者を助ける先端医療か。大上段に社会問題として切り取るのでなく、主人公の医師の抱える苦悩を通じて浮き彫りになっていきます。そして見えてくるのが、人はどのような終末を迎えるのが幸せなのかというターミナルケアの問題。本作では、凄くハートウォームに答えを示してくれて、とても感動しました。
それにしても、深川監督の演出は進化していましたね。これまでは、カット割りを細かく切り刻み、パズルのように組み合わせて、観客をアッと言わせる「マジック」がウリでした。けれども、前作『白夜行』では、それをやり過ぎて失敗だったと思います。セカセカしすぎて、筋が見えにくくなくなっていたのです。本作では、原作の空気感に合わせて、進行の回転数を大幅にスローに。これまでのカット割りの細かさは変わらないのですが、要所にじっくり見せるアップの長回しを取り入れて、全体を落ち着いた印象にまとめています。
素晴らしいのは、原作以上に登場人物の人物造形が深くなっているのです。そして、原作のエピソードもポイントとなる部分を巧みにつないで、凄く分かりやすく感じました。
ただでさえ地方の医師不足の時代。主人公の青年医師一止も同僚の医師も、病院が24時間365日などという看板を出しているせいで、3日寝ないことも日常茶飯事。夜間になると当直医師がたった2名になってしまいます。自分が専門でない範囲の診療まで行うのも普通。救急も入院患者の診療も、小児科の子供の面倒も全て見なくてはいけません。原作を読み続けると、医師には人間としての当然の休息も人権すらも、患者のために奪われて、個人の生活がめちゃくちゃになっていく姿が描かれています。
一止の場合も、山岳写真家の妻は世界中を撮影旅行していて、いつもすれ違い。そんな犠牲を払っていても、外来の患者のなんとわがままなことでしょうか。一止の禁酒の助言も全く聞こうとしません。
少しでも多くの患者を救いたくとも、満足に救えないという一止の苦悩は、見ているだけで、深く考えさせられました。新人の看護士には、あまり特定の患者に関わるなというのが口癖の一止でしたが、実はそれを語る一止が一番熱心に特定の患者に関わってしまう医師だったのです。
そんな一止に、大学病院の医局から熱心な誘いがかけられます。大学病院の研修に参加したシーンでは、勤務先の本庄病院とは比べられないくらい、ひとり患者の治療を方針を巡って高度な臨床方法が討論されていました。一止も先端医療に興味がないわけではありません。医局に行くか行かないかで一止の心は大きく揺れます。
大学病院での研修中に、外来も担当した一止は安曇さんという患者の診察をします。その後の精密検査で末期がんと診断された安曇さん。身寄りもなく、大学病院には、「手遅れ」の患者として入院を拒否されて、必死で以前診察してもらった一止を探し出して、本城病院に入院。余命を一止に託したのでした。
安曇さんは、凜とした気骨あるご婦人です。その姿は最後まで気品を損なわずに感動を誘いました。その雰囲気は、演じた加賀まりこが末期ガン患者に、一ヶ月寄り添って感じ取った役作りの賜物でしょう。
安曇さんを巡って、一止が決断を迫られるシーンがやってきます。それは、大学病院で行われる内視鏡セミナーに出席すべきか、それとも同じ日に重なった安曇さんの誕生日に担当医として付きそうべきかという二者択一でした。医師としてなら、地方では滅多にない高度医療のセミナー出席は当然の選択です。
しかし一刻一秒を延命することが医療の目的でしょうか。そのことを想起させる伏線として、一止が尊敬する古狐先生(消化器内科副部長)がどうして、大学病院の医局を蹴飛ばしてまで、本城病院にやってきたのか一止が関心を持つことが描かれます。一止の決断した結果は、古狐先生の理由と軌を一にしていたのでした。そして、安曇さんも遺言で、延命治療を望んでいなかったのです。
限りある命を凄く意識している末期患者にとって、延命で苦しみを長くすることでなく、一止のように誠実に寄り添ってくれる医師がいてくれたらほうがどんなにか、幸せなんですね。一止を探そうと思ったのも、大学病院で一回きりしか診察を受けなかったのに、克明な手書きのカルテを書いてくれた一止が安曇さんにとって嬉しかったのです。たとえ内容が分からなくても、びっしり書かれたカルテは、安曇さんにとって「神様のカルテ」のように思えたのでした。
安曇さんの死後に、そのことが安曇さんの遺した手紙によって明かされるくだりには、一止と一緒になって、号泣してしまいました。
ところで、メインの病院でのシーンと同時進行する一止が妻榛名と暮らす御嶽荘の住人とのやりとりもなかなか、泣かせてくれます。御嶽荘自体が、和風旅館をそのまま使った下宿屋の風情。結婚するまえの榛名も、ここで暮らしていました。御嶽荘に残っていたのが御嶽荘大家で売れない画描きの男爵と哲学科大学生という触れ込みの学士殿。そこに、漱石の『草枕』を全文を暗誦できるほど漱石に傾倒する余り、話し方が古風で、周りからは変人と思われている一止が加わって、よなよな奇天烈な文学談義が交わされるのでした。
学士殿が学士となる夢を諦めて、国に帰ることになったとき、みんなで派手に送り出すシーンが心がこもって感動的でした。
そして、すれ違いの生活を送っていても、ちゃんと一止と繋がっている妻榛名の存在が素敵です。激務の一止を包み込んでいるかのうな感じなのです。ラストで榛名が一止にある重大なことを告白したとき、ふたりがそっと寄り添うところが、とってもいいんですねぇ。
それにしても、本作出演者の役作りはなんと素敵なんでしょう。原作以上に存在感が息づいています。
一止役の櫻井翔は、まるで演じる一止に負けず劣らず、ワンカットごとに役作りに悩みに悩んで、古風でスローテンポな一止像を作り上げたそうなのです。原作ファンなら、きっと活字のなかの一止像とタブって見えることでしょう。
榛名役の宮崎あおいも原作マンガのキャラ以上に微笑む姿が可愛いい!台詞が少ないのに、表情の豊かさだけで存在感をたっぷり感じさせてくれました。
古狐先生の柄本明も当り役。飄々としたなかに、医師としての気骨も感じさせてくれました。是非続編を製作してもらって、古狐先生の味わいある役柄をたっぷり見せつけて欲しいものです。
本作で一番意外なキャストが男爵役を演じた原田泰造。お笑いを封じ、どことなくインテリを装う貧乏絵描き役をシリアスに演じて、俳優としても充分通用するなぁと感じました。さらに、落ち着いた映像にあわせて、透明感のある辻井伸行のテーマ曲が心に沁みました。
震災以降、いまどう生きていくのか考え直す時期に来ていると思います。どう生きたらいいのか道に悩んだとき、本作をご覧になって一止に心を寄せられてはいかがでしょうか。
櫻井翔、ガンバレ(いろんな意味で)
夏川草介原作の大ヒット小説の映画化。
小説では、3作目の『神様のカルテ3』のさわりまで書かれていますが、映画は、第1作である『神様のカルテ』をベースにしています。ただし、映画化に際して原作から若干の設定変更があります。例えば、本庄病院の消化器内科には大狸先生しかおらず、原作で古狐先生が薦めた事になっている信濃医大の研修は、大狸先生が薦めたことになっています。その他にも設定変更がありますが、それについては後述。
栗原一止って、あんなにボーッとした人物だっけ? 恐らく、櫻井翔は力を抜いた自然体の演技をしようとして、あの様な感じになったのだと好意的に解釈しますが、でも、それでも、あれじゃぁ、栗原一止はボーッとした人物になっちゃいますよ。
看護師達の配役を見ると、外村看護師長に吉瀬美智子(30数歳で、美人で、クールというとこの人しか無いかも)、東西主任看護師に池脇千鶴(脂の乗ってきた中堅看護師役はお見事)、そして、新人看護師の水無に朝倉あき(元気の良い、やる気いっぱいの新人看護師は似あっています)を持ってきた所辺りは、中々いいと思いました。
あと、女優陣では、この人=宮崎あおい。この人は、何をやらせても上手いですね。原作での栗原榛名は、もともと彼女をモデルにして書いたのではないかと思うほどでした。
その他、意外に良いのが原田泰造。お笑いの人って、みんな、意外に演技もうまいですよね。って言うか、お笑い=演技であると言う事なんでしょうね。
さて、上述のその他の設定変更ですが、加賀まりこ演じる安曇雪乃が、栗原一止の診察に来た設定周りに変更が多いです。映画化して、その中で話を完結しなければならないので、『神様のカルテ』と言うセリフが出てきたんでしょうね。でも、このセリフは私的にはちょっと微妙。悪くはないですが、原作を知っているだけに、取って付けた感がありました。その他の、一止と東西のやり取りなどは、セリフを結構忠実に描いていたんですけどね。
やっぱり、この映画の最大の弱点は櫻井翔ですね~。まぁ、それでも、結構良い作品に成っていると思います。原作を読んでいなくても、十分楽しむことができると思います。
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