「辛い、、、」白夜行 Chisaさんの映画レビュー(感想・評価)
辛い、、、
★★★★★
昭和30年代、廃墟となった建物で質屋の店主の遺体が発見される。
第一発見者の少年たちはその廃墟へ幾度も訪れたことがあると話し、いつもは開いている扉の鍵がその日はかかっていたと証言する。
遺体のズボンのベルトの穴がズレていたことから、警察は犯人が女だと判断し、さらに遺体発見現場が廃墟であったことから堂々と会えない相手、すなわち不倫相手ではないかと推測する。
店主の不倫相手とその夫が被疑者になったものの、事故死ないしは自殺してしまい、捜査は打ち切られた。
担当刑事だった笹垣潤三(船越英一郎)は捜査中に被害者と被疑者の子供らに会っており、事件の幕引きがどうも腑に落ちないが、時が過ぎてしまう。
十数年後。
殺された店主の息子である桐原亮司(高良健吾)と、被疑者の娘である唐沢雪穂(堀北真希)は共に高校生になっていた。
雪穂は養子縁組した義理の母親に茶道を教わりながら大学進学を目指し、学校でいじめを受けていた江利子(緑友利恵)という学生と親しくなる。
その頃、江利子をいじめ、雪穂のあらぬ噂を流していた女子学生がレイプ被害に遭うが、第一発見者は江利子と雪穂だった。
「私たちが言わなければ誰にもばれない」と言って、秘密を握ることで女子学生を自分達から遠ざける。
一方で亮司は年上の女に体を売って金を稼いでいたが、一人の女と一緒に住むようになる。
しかし、亮司が青酸カリを使って殺人を犯していることを知った恋人は、罪をかぶって自殺してしまう。
雪穂と江利子は同じ大学に進学するが、金持ちの篠崎という先輩と恋愛関係になっていた江利子は、宅配業者に陵辱されてしまう。
雪穂は篠崎と深い仲になり、結婚する。
その際に篠崎は探偵を雇って雪穂の素性を調べさせていた。
探偵は、彼女の周りでたびたび起こっていた陵辱事件の首謀者が雪穂だったことを突き止めるが、何者かに白昼堂々、青酸カリで殺されてしまう。
雪穂を嫌っていた彼の妹もまた何者かに陵辱されてしまうが、雪穂は自分の過去を語ることで彼女を慰め、彼女の警戒を解き、心を支配する。
20年前の殺人事件の捜査が終わった後も個人的に調査を続けていた笹垣は、退職後、ついに二人の関係と、連続陵辱・殺人事件の真相に気付く。
亮司と雪穂は幼い頃、同じ児童館に通ううちに親しくなったこと。
殺された亮司の父親は、雪穂の母親と不倫していたのではなく、幼い雪穂を性のはけ口としていたこと。
雪穂の母親はそれを知りながら、金のために黙認していたこと。
自分の父親と雪穂が廃墟で一緒にいるのを見てしまった亮司が、雪穂を守るために父親を刺殺し、雪穂の母親も自殺と見せかけて殺したこと。
事件から何年も経った今も二人は通じており、児童館のぬいぐるみでメッセージを届け合い、計画的にいくつもの事件を起こしていたこと。
真相を突き止めた笹垣に追い詰められ、亮司はビルから飛び降りて自殺する。
現場で死体を抱きかかえた笹垣に「これが誰だかわかるか」と問われた雪穂は、「私は知らない」と呟き、また空虚な笑顔を浮かべて生活に戻っていく。
長い期間、亮司に陰で支えられながら欲しいもの(男、金、地位、信頼、名声。もしかしたら江利子との出会いすらも仕組まれたものだったのかも知れない)を一つ一つ手に入れ、成り上がってきた雪穂。
手に入ったものへの執着は、亮司の死を目の当たりにしても揺るがない。
亮司は、自分の父がしてしまったことへの贖罪と懺悔のため、雪穂を密かに見守り、彼女が欲しいものを手に入れるために自分の人生を捨て、あらゆる犠牲を払った。
父親を刺した後、まだ息がある彼の背からハサミ(父に買ってもらったものだと言っていた)を抜き取り、ズボンのベルトを締め、証拠隠滅のため廃墟を荒らし、混乱してのたうち回り、湖で必死に手を洗いながら泣き叫ぶ亮司の姿が印象に残った。
彼が死んで彼女が生きるという結末は、単に「悪女に振り回された男」というのではなくて、幼い頃に負った傷が雪穂の方がずっと深かったということを象徴しているのではと思った。
生きていく中で傷付くことは不可避で、時として必要だけれど、負わなくていい心の傷は負わなくて済むように、負わせてしまわないように、息子を守っていきたいなぁ〜とぼんやり思った。
やっぱ子供ものはダメだ〜泣いてまう〜〜
特に、幼い亮司が鏡で「遊ぼう」とモールス信号を送り、雪穂を誘うシーンはやばかった。
傷付いて、怯えて、絶望していても、安全な環境にいるときは無邪気な子供でいられる。
まだ完全な怪物になっていなかったその頃なら、彼らに手を差し伸べて、なんとか救ってあげることができたのに、と考えるとあまりにも切なくて苦しい。
思い出すだけで泣きそうだ〜〜ひえ〜〜〜