「人間関係の希薄さと濃密さ。」キャタピラー Chisaさんの映画レビュー(感想・評価)
人間関係の希薄さと濃密さ。
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すごいズッシリきた。久々。
寺島しのぶは、ヘルタースケルターを観たとき「ずいぶんどぎつい役やる女優さんだなぁ」と思って、以来なんとなく苦手だったけど、これを見たら迫真の演技すぎて、もう恐れ多くて苦手とか言えない。
変わり果てた姿で戦地から帰ってきた夫を初めて見たときの困惑。
誰も助けてくれない孤独な日々がずっと続いていくことに対する絶望。
夫を憎み、愛し、軽蔑し、哀れみ、感情の起伏がどんどん大きくなっていき、次第に理性では抑えられなくなっていく。
それでも夫のそばにい続ける以外の選択肢がない、愚かなまでの強さと、どうすることもできない閉塞感。
「千年の愉楽」を見たときの閉塞感と同じ印象を受けたよ。
絶対そうなるって結末はわかりきってるのに、何故逃げ出さない!っていうね。
周囲の徹底的な見て見ぬ振りも、マジ不気味、マジ不快。
現代の介護やシングルマザーの育児も似たように苦しくて孤独な状況なんだろうなぁ。
「この日々がいつまで続くんだろう」っていう先の見えない不安と焦燥感に、いつの間にか蝕まれて壊れていく。
周りも、気付いてはいるし、どうにかしてあげたいと思ってはいるけれど、それを行動に移すに足る余裕も思いやりはない。
外国人がよく「日本人は優しい」と言うけれど、完全なる他者と完全なる身内には優しくても、他者と身内の中間に位置するような中途半端な「知り合い」には、そうでもないよね。
そう考えてみると、戦時中の映画という感じがしない。
しかし一方で、最近の若者は「公開プロポーズ」とか言って友達100人巻き込んで手の込んだサプライズを実行したりする。
そんな関係を築けた友人がいる人間も、この世界にはいるんだよな。
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