カラフル : 映画評論・批評
2010年8月24日更新
2010年8月21日よりTOHOシネマズみゆき座ほかにてロードショー
実写版よりも、ヘビーで生々しいファンタジー
劇場用アニメ界において、細田守監督の好敵手といえる原恵一監督、3年ぶりの新作。森絵都による原作は、現在20代半ばの“かつての中学生”にとって、課題図書としての思い出が強かったはず。冒頭から分かるオチだろうし、テーマがテーマだけに説教臭くもとれるが、そんな表向きはファンタジーながら、そこで描かれる厳しい現実は、まさに原監督の十八番。原作はもとより、中原俊監督による実写版よりも、ヘビーで生々しかったりする。
その理由に挙げられるのは、久々となる脚本家、丸尾みほとのコンビ復活。彼女の脚本は、援助交際する後輩や不倫に走った母親などの細かい女性心理を映し出し、結果、男子目線の描写が得意な原監督の弱点を補っている。しかも、そのキャラを南明奈や麻生久美子が吹き替えながらも、彼女たちの顔が頭に浮かばないほどのハマリよう。その最たる例がブサイクなメガネっ子を吹き替えた宮崎あおいで、近年ベストな仕事っぷりといえる。
また、天使が関西弁を喋ったかと思えば、同級生と玉電(東急玉川線)の跡地を延々と散歩する光景など、原作ファン驚きの新たな展開も、号泣必至の終盤に向けての伏線だ。絶妙なタイミングで流れるアンジェラ・アキの「手紙」の合唱には若干あざとさも感じるが、エンディングはブルーハーツの「青空」のカバー。そんなわけで、同じ“かつての中学生”でも、原作と縁遠かった30代以上の涙腺を、いちばん直撃する作品である。
(くれい響)