劇場公開日 2010年7月17日

「ジブリの「夢」が失われた」借りぐらしのアリエッティ kurokkyさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0ジブリの「夢」が失われた

2010年7月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

寝られる

正直、残念としか言えませんでした。
賛否両論あって当然、「良かった」と言う人もあれば
私のように「残念だった」と考える人間もいると思いますので
そこは了承願います。

ジブリと言えば、名作となぞられる作品が数多くある様に感じる
『千と千尋の神隠し』でアカデミー賞を受賞した際、
アメリカの「Dream works社」に匹敵するアニメを作るのは
世界を見ても日本の「ジブリ」だけであると言われたほどであるので
国民的なジブリ作品への関心の高さはそれ以上だと感じている
私もその一人である。
それ故、ジブリの新作ともなれば関心は高くなるし、
それ以上の期待も自ずと持ってしまうものだと思う。
公開日の動因人数を見ても一目瞭然だ。

私はジブリの作品の一つとして今回の「アリエッティ」を観た。
その感想としては、あまりにも残念。
やはり宮崎駿という人が偉大な才能の持ち主であると言うことを
認識せざるを得ない結果になったような気がする。

まず全体的に「夢」が無かった。
今までの宮崎監督の作品には「夢」があり、
必ずアニメの中で私たちに「夢」を見せてくれていた気がするのだが、
それが無かった。
正直、宮崎監督のご子息である吾郎氏の『ゲド戦記』と同じような感覚が残る
違和感があるのだ。
結局、何が言いたかったのか、何を作りたかったのかが不明瞭。
夢を語れずに終盤までだらだらとストーリーが流れ、
途中で飽きてしまう者も多いと思う。
最後でまとめようとしたのは分かるが、
それでも台詞や登場人物には違和感が残る。

物語において、登場させるものには
意味を見出さなければいけないのが条件であるはずだが
その一つ一つの意味が薄く、回収出来ないものもあった。
なぜ、そこにそれを持ってきたのか、後の展開にどう関わるのか
一つ一つのつくりが曖昧すぎた気がする
昆虫一つにとってもそうだ。

可も無く不可も無く観られたという方も多いが
こういった作品を作り続けてしまったならば、
ジブリの低迷が見て取れてしまうと感じる
10年後、20年後に残る作品になるとは思えない。
これ以後の作品にしても最初は観客も続くだろうが、
後々続かなくなってしまうだろう。
そういう先が見えてしまった作品だったように感じた。
『風の谷のナウシカ』などの名作が未だに愛されていることには何があるだろうか
やはり、宮崎監督の大きさを再確認した作品になったように感じる。

最後に、近年のジブリ作品に多く見られる俳優の起用、
とうとう10代の女優まで起用してきた。
ファンの視点からは可愛い本人が観れて嬉しかっただろうが
アニメを楽しみたい人間からしたら、役ではなく女優本人が見えてしまい
よりアニメの質を落としたような形になったと感じる。
個人の演技の才能は確かにあると思うが、
やはり声優をやったことの無い人間だと丸分かりで
動きの無い声、躍動感が欠けてしまう。
もう少し言えば、彼女独特の「発音」、「滑舌の悪さ」などが目立つ。
実際に演技をしているわけではなく声で演技をしなければいけない
ドラマなどに引っ張りだこなので、演技の才能はあると思うし、
今後が期待できる女優だと思う。
しかしながらやはり女優と声優は違う。
プロ顔負けなら分かるが、まだやはり彼女には甘いように感じる。
アマチュアであるのが分かってしまうだけだ。
それにプラス脇を固める俳優も悪かった様に感じる。
なぜここで本職の声優を使わなかったのかが非常に気になった。
著名な俳優や女優で集客率をとろうと思ってしまったら失敗するのではないか。
ジブリ作品以外でも、近年の映画の吹き替えで
アイドルや俳優を起用することは増えたが
それが作品の質を落とすのはもう周知の事実のはずである。

良い映画を作るには、隅々まで力を注ぐべきであると思うし
やはり力を持った人間を使い、最高のものに仕上げて欲しいと感じる。
今回の作品ではクリエイティビティが足りなかった。

今後、ジブリがどう出るのかが気になるところだ。

kurokky