劇場公開日 2010年7月17日

借りぐらしのアリエッティ : 映画評論・批評

2010年7月13日更新

2010年7月17日よりTOHOシネマズスカラ座ほかにてロードショー

動きの中に思想を宿す老練作家と若手職人の絶妙なコラボ

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ひそやかな世界、つつましやかな暮らし。ケルトとフォークの混じり合う音楽に彩られ、排斥された小人たちの哀愁の詩が全編に染み渡る。父は衣食住に必要不可欠なものを広大な人間社会から拝借する。それは、かつて自然と折り合いをつけ堅実に生き抜いてきた人間本来の姿を思わせ、欲望のままに暴走し閉塞しきった我々に生活の足元を見つめ直させる。“借り”と“狩り”は同義だ。魔法のようなテクノロジーも、物を売買するエコノミーも無く、ただ両手両足と道具を駆使して緊迫感たっぷりに描かれる狩猟のような労働。人生とは険しい冒険そのものだという教訓が、黙々とスリリングに映し出される。

すべては動きの中に宿る。アニメーター出身の俊英・米林宏昌宮崎駿のテーマを借りながらも単なるマニピュレーターに堕することなく、連続した絵の中にあらゆる感情を込めていく。老練な作家の思想と若き職人の感性のコラボ。観念に偏りがちだった「ゲド戦記」への大いなる反省とも取れる新人監督プロデュース計画は奏功している。物語は人間の身勝手な好奇心から急展開を見るが、対峙して互いの身上を語り合うシーンに息を呑む。まるで、快活な小人の少女に体現された自給自足を知る宮崎世代と、病んだ人間の少年に託された消費一辺倒の米林世代が対話するかのような瞬間。これは、絶滅の危機に瀕す境遇は同じでも、もっとサバイバル能力を身につけなければ、過酷になる一方の世界には耐えられまいと諭す世代交代の詩でもある。

(清水節)

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