劇場公開日 2010年7月17日

借りぐらしのアリエッティ : インタビュー

2010年7月12日更新

神木隆之介&鈴木敏夫プロデューサー インタビュー(2)

心臓病を患っている翔は、心が病んでいる現代人のメタファー?
心臓病を患っている翔は、心が病んでいる現代人のメタファー?

――では、そのカオナシに似ているという米林監督と宮崎監督で共通点みたいなものはありましたか?

神木:「僕は今回一日しかアフレコに携わってないので、あまり分からないんです。だから、共通点というのはまだ見つかってないですね。観察しきれてないんです」

鈴木:「そういえば、隆くんは絵を描くの好きだったよね。今は描かなくなったの?」

神木:「大好きです。昔は好きでよく電車を描いてたんですが、小学校6年生を境に僕は一切電車の話はしなくなったんです。たしか、『千と千尋』のころも鈴木さんには延々と電車の話をしていたと思うんですけど、ちょうどその頃に、ドラマで共演していた子達に電車の話をしていたとき、『分かった分かった、もういい』って言われたんですよね(笑)。それが、心に残っていたんです」

翔の大叔母・貞子
翔の大叔母・貞子

鈴木:「傷ついたんだね」

神木:「自分が知っていて、相手が知らないことをあまり無理に押しつけないほうがいいんだなあということを学んだんです(笑)。そこから一切電車の話をすることは無くなりましたね」

鈴木:「でも、自分が好きなことを人に喋ることはやったほうがいいよ。それは大事なことなんだよね。どうしてかというと、宮崎駿がそうだから。第1次世界大戦ってあったでしょう? 宮崎さんはあの時代の戦闘機が大好きなの。誰も興味を持ってないのに、戦闘機の話ばかりするのよ。でもみんなしょうがなく諦めて聞くのよ。だから、話したほうがいいよ」

神木:「そうですか(笑)。じゃあ、電車の話を解禁します」

――絵描きとしてスタジオジブリに入りたい気持ちはありますか?

神木:「それは難しいと思いますけど、もっと上手に絵を描きたいという気持ちはありますよね。生きているような絵を描けたらって思います」

鈴木:「生きているような絵っていい言葉だね」

神木:「大げさに画家を目指すとかそういうことではないんですけどね。ひまなときに描くじゃないですか。そういうときに描いていて、上手く描けなかったり、自分の思うように描けなかったりするときがあるんで」

一家の大黒柱として アリエッティを優しく見つめる父親ポッド
一家の大黒柱として アリエッティを優しく見つめる父親ポッド

鈴木:「宮崎駿だって、絵を描き始めたのは高校2年生なんだよ。だから今の隆くんと同じだよ。宮さんはそこから絵の先生について毎日絵を描き始めるわけ。しかも、彼が絵の勉強したのは井の頭公園。絵の先生のところで習いつつ、毎日井の頭公園にも行って、歩いてる人、動物、すべてをスケッチしたんだって。それをずーっとやり続けたの。それが今の宮崎駿を作っているのよ」

神木:「そうなんですか。希望が持てました(笑)」

鈴木:「やっぱり観察なのよ。何となく描くのではなく、しっかり見て描く。これが絵が上手くなる近道ですよ」

――神木さんは、今回アリエッティ役の志田さんと3年ぶりの共演でしたね。

神木:「3年前に共演したときは、ドラマのスペシャルから連ドラまでずっと一緒でした。たしかに久しぶりでしたけど、そんなに久しぶりという感じもしないです。今回のアフレコでは、お互いに知っていたので、一緒にやっていて安心感みたいなものもありましたね。でも面と向かってお芝居をしているわけではないので、変な感じがしました。お互い画面に向かって話しているというのは不思議な感じですね」

宮崎アニメのヒロインの系譜を しっかりと受け継いでいるアリエッティ
宮崎アニメのヒロインの系譜を しっかりと受け継いでいるアリエッティ

――もし神木さんが、翔だとして、もしアリエッティみたいな存在を見つけたらどうしますか?

神木:「仲良くなって一緒に遊びたいですね。どういう風な生活しているのかも知りたいですし、自分の知らない世界を知ることができるような気がします」

――最後に鈴木さんに伺いたいのですが、映画を見てもっとも印象に残ったのが、アリエッティ一家の勤勉な姿です。彼らはいつも働いているんですが、あの毅然とした姿は、やはりスタジオジブリとしての社会へのメッセージだったのですか?

鈴木:「この原作『床の下の小人たち』の特徴って、このジャンルの話では珍しく魔法が出てこないことで、人間と比較するとただ小さいだけなんです。それから、もうひとつ大きな特徴は、お金が出てこないということ。なんでもお金を出せば手に入るのが今の人間ですが、アリエッティたちの世界にはお金がない。だから色んなことをやらなければサバイバルできないんですよね。毎日、本当に一生懸命やらなかったら生きていけない世界。でもそれは、ついこの間までの人間の姿だったんじゃないかなあという気がするんです」

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