月に囚われた男のレビュー・感想・評価
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悲しい物語の中に垣間見える温かさ
事故のあとに処置室で目覚めたシーンからなんとなく違和感を感じていたのだが、すぐにその違和感が正しいということがわかる。
しかし、なんとも悲しく切ない映画だ。
「信じていた記憶も借り物の記憶であるということ」
「実は帰る家がないということ」
という真実を知ったときの絶望感は想像するだけで恐ろしい。
ただ、実は我々サラリーマンも似たようなものなのかもしれない。
ボロボロになるまで働かせられる、会社にとって代替の利く存在。そういうことに気付かせないような会社側の周到な仕組み。日常から抜けだすことはできない。悲しいね。
そんな中にも「クローン同士の思いやり」「ロボの思いやり」が見られ、
悲しい話の中にも温かさを感じることができて、ほんとよい映画だった。
純度100パーセント、ロックウェルを堪能すべき快作
ダンカン・ジョーンズが長編映画デビューを果たしたSF作品。多くをCGが描き出してしまうこの時代にあえてミニチュアを多用している点、近未来の話しながら普遍的なテーマが介在している点など、この手のジャンルのファンのみならず、幅広い観客を惹きつける魅力に満ちている。
企画立ち上げ時のエピソードも興味深い。もともと他の映画の主演にサム・ロックウェルを据えようと、熱心に口説き落としにかかっていたジョーンズ。だが話はまとまらず「もしも君がSFを撮る機会があれば、ぜひまた声をかけて」と告げられたのだとか。その言葉を真に受けて、彼はすぐさま前々から着想していたSFを一気に書き上げ、その脚本をロックウェルに届けたのだそう。まさにロックウェルのために書かれたラブレターのごとき一本というわけだ。主演、ロックウェル。共演も、助演もロックウェル。これほど彼の魅力が純度100パーセントで堪能できる作品も他にない。
王道のSFも、アイデアと演出次第でこれだけ斬新になる
デヴィッド・ボウイの息子ダンカン・ジョーンズ監督・脚本(共同脚本:ネイサン・パーカー)によるSFスリラー。何と本作が長編初監督作だというから驚きだ。
3年間の月面基地での1人孤独な任務も、残すところあと2週間。男は妻子の待つ地球への帰還を心待ちにするも、作業中の事故で負傷。目を覚ました彼は、事故現場に疑問を持ちーー。
低予算ながらもアイデアの素晴らしさ、確かな脚本力によるストーリーテリング、主演のサム・ロックウェルの演技力によって、最後まで目が離せない圧巻の一作!
また、原題はシンプルに『MOON』だが、この邦題は本作を的確に表しており非常に優秀。
電力制限や食糧不足、排気ガスによる大気汚染等、地球は様々な問題を孕んでおり、エネルギー資源は底を突きかけていた。しかし、世界最大の核燃料生産者ルナ社は、太陽エネルギーを含んだ石を月の裏側で発掘し、地球のエネルギーの7割を供給。地球は再び豊かな惑星へと蘇った。
ルナ社が月面に建設した採掘作業用の基地では、3年間の雇用契約で作業員がたった1人で作業を行っていた。
主人公のサム・ベルは、孤独な月面での作業に苦しみながらも、地球に残した妻のテスと3歳になる娘イヴの待つ家に帰る事を心の支えに、任期満了まで残り2週間という所まで来ていた。通信装置の故障によって、地球との直接通信が不可能という状況から、会社や家族とのやり取りはビデオメッセージのみ。
サムは頭痛や幻覚といった体調不良により、誤って熱湯で右手を火傷してしまう。それでも、唯一の相棒である人工知能ガーティから治療を受け、懸命に採掘作業に当たる。しかし、不慮の事故によって採掘車に入る直前に移動車が大破。右目を負傷し、そのまま意識を失ってしまう。
目が覚めると、サムは基地の診察台の上。ガーティによれば、事故で眠っていたのだという。しかし、眠っていた期間は短いとガーティは言うが、右目の負傷や右手の火傷の跡は無い。更に、直接通信が不可能なはずの基地内で、ガーティと会社が直接通信している光景を目の当たりにしてしまう。
不信感を募らせたサムは、強引に事故現場へと向かい、車内に乗り込む。するとそこには、意識を失ったもう1人の自分が居た。
意識を取り戻したサム(1人目)は、もう一人のサム(2人目)といがみ合いながらも、徐々に月面作業に隠されたルナ社の陰謀に迫ってゆく。
ラストで物語としての決着をキチンと着けつつも、随所に考察の余地を残した興味深い脚本が気に入った。
それは、サムのオリジナルは何処に居るのか?という点だ。
ガーティの話によると、オリジナルのサムは月面着陸時の事故で亡くなっているという。しかし、この“真の1人目”とも言うべきサムもまた、クローンである可能性があるのだ。何故なら、サム(1人目)が通信装置を持って妨害電波の放たれていない地点で地球との交信を試みた際、既に15歳となっていたイヴの側には「パパ」と呼ばれる存在が居たからだ。
つまり、オリジナルのサムは自身の遺伝子をルナ社に提供する事で既に報酬を得ており、地球で普通に家族と生活していた可能性があるのだ。でなければ、月面基地にあれだけのクローンが用意されていた事の説明が付かない。地下に建設されたクローンの保管場所は、明らかに月面基地の建設時に計画的に設けられたものだろう。もし、着陸時の遺体からクローンを複製したのだとすると、イヴの言う「パパ」が顔を出しても良さそうなものだ。しかし、顔は見えない。オリジナルのサムか、あるいはテスが生前に再婚した相手かは、観客の判断に委ねるしかないのだ。
しかし、もしそうなのだとすると、ビデオメッセージでのテスのバツの悪そうな会話も頷ける。真相を知っているからこそ、クローンのサムに対する罪悪感から不自然な振る舞いになったのではないか?
サム(1人目)によると、元々短気な性格が災いして、テスは一度半年間実家に帰っていたと語っていたが、それだけがあの態度の理由だとするには少々弱いようにも感じられる。
もう一つ気がかりなのが、テスのビデオメッセージの画面の構図だ。部屋の奥の空間、すりガラスの奥に誰かが居るようにも感じられるのだ。こうした絶妙なバランスで成り立っているサムのオリジナルに関する疑問点がこの作品の面白い所だ。
あれだけ再会を待ち望んでいたテスは既に亡くなっており、3歳だと思っていた娘は15歳になっている。おまけに、娘の側には「パパ」と呼ばれる保護者まで居る。深い絶望に包まれながら、「帰りたい」と涙するサム(1人目)の姿はあまりにも切ない。
月面に佇む移動車とその奥に見える地球のショットは、まるで絵画のような美しさを放つと同時に、サム(1人目)の置かれた悲痛な状況をも鮮明に映し出す。このシーンは間違いなく本作の白眉だ。
このルナ社のクローン技術による究極の人件費削減が恐ろしい。1人の人間を複製し、事故や任期満了毎に新しいクローンを目覚めさせ、延々と作業を続けさせる。「ようやく帰れる!」と、期待で胸を膨らませてポッドに乗り込む以前のサム達は、恐らくその瞬間にポッド内で蒸発させられたかで廃棄処分させられていたのだと思う。
また、もしオリジナルのサムも生きているのだとするのなら、ルナ社と同じくらい恐ろしい存在なのかもしれない。
クライマックスでのサム(2人目)による、「我々はプログラムじゃない。人間だ。」という台詞や、冒頭の“Where are we now?(今の僕らは?)”というフレーズが象徴するように、彼らもまた意識と意思を持ち生きているのだ。作業を滞りなく行う為だろうが、記憶の移植まで済まされているのが何とも悲しい。“知識”として確かに自分の中にあるのに、“経験”としては存在しないのだから。
また、トイレの壁に描かれていた残りの任務日数を示すニッコリマーク。アレも果たして何人目のサムが描いたものなのか。こうした細かな部分にまで考察の余地が与えられているのは、実に面白いし、考えていて楽しい。
この複数人のサムを演じ分けたサム・ロックウェルの演技力の凄まじさを忘れてはならない。特に、病気からか次第に衰弱していくサム(1人目)の姿が印象深い。ともすれば、クローンは個体毎に平均寿命が予め設定されているのでは?とすら思わせてくれる。
そう考えると、サム(2人目)は1人目の事故により急遽覚醒させられたが、この先の人生にどれほどの猶予が残されているのだろうか?まるで『ブレード・ランナー』のレプリカントを見ているようだ。他にも、月面基地は『エイリアン』のノストロモ号の船内を彷彿とさせるし、人工知能のガーティは『2001年宇宙の旅』のHALの真逆で非常に友好的と、数々のSF映画の名作達を思い起こさせる。
ラスト、無事地球に辿り着いたサム(2人目)はルナ社の悪事を告発し、真実が白日の下に晒される。サム(2人目)が全てを終えた時、サム(1人目)が望んだような旅に出られる事を祈らずにはいられない。彼にとっての“オリジナル”としての人生は、きっとその瞬間に始まるのだから。
公開当時に鑑賞してたが、何となく覚えてなくて再度鑑賞。 見返すとや...
公開当時に鑑賞してたが、何となく覚えてなくて再度鑑賞。
見返すとやっぱり面白い映画、ケヴィン・スペイシーが声やってたのを今回気づいた
素晴らしい完成度
クローンという今やSFという映画ジャンルのなかで陳腐にもなりつつある王道のテーマ、現実を知りアイデンティティや希望が消えてゆく様を見るのは本当に辛かった
だが、映画『ガタカ』と同様にラストには魂は救済されたのか?
そう捉えられるとするならばある意味ではハッピーエンドなのかもしれない
ガーディの人間らしさ、無機質なパネルに映る顔文字という制約のなかで彼のあふれる感情に涙させられた
アンニョンヒ カセヨ♥ 手塚治虫先生の作品だね。
ネタバレさせると完全に面白くなくなる。
あの『スティング』の様な話と思うべきだ。二度は絶対に見られない。 一回見たら『アンニョンヒ カセヨ(ケセヨ)』だね。
相当に『2001年宇宙の旅』を意識しているが、内容は全く違う時代遅れのお話。幾らヘリウムと言えど、これだけのプロジェクトを一つの民間会社だけで、まかなえる訳がない。
ヘリウムをエネルギーに使ったとして、この月面でのエネルギーはどうやってまかなうか?
全く出鱈目すぎる。
月からエネルギーを供給するなら、もっと地球環境を考え、先ずは人類の文化そのものを向上させる以外ない。月の物質で地球環境のバランスが崩れ、その影響で今の地球環境は維持できない。外から手を加えるのは、そもそも、人工的と分からねば。生物の生態系自体が崩れて、必ず絶滅危惧種が出現する。そして、それが人間自体かもしれない。
インド ジャイプルにて。2023年11月2日19時20分
1人2役!(3役かw)
月で3年1人で働く男が後少しで帰れるってところで事故に。
ただ事故にあった記憶がゼロ。
どういう訳か不審に思って、AIロボットが止める中、事故現場に。
するとなぜか自分とウリ2つの顔の男が倒れていた。
とりあえず治療するも、どちらも自分が本物で相手がクローンと思うけど、実はどちらもクローン。さらに他にもたくさんのクローン達がいることを知る。
これ、ロックウェルがずっと一人で演じててほんと圧巻。
そしてAIロボットの声、ケヴィンスパイシーやから絶対裏切ると思ったけど、同じ人工知能だからか見方してくれるいいやつっ🤣
気軽に本格サスペンスを楽しめる良作
これは予想外に見応えのある映画でした。
登場人物はほぼ一人+ロボット1台。
それでこれだけのストーリーを作り上げたのは見事👏
何かがおかしい。
そういう雰囲気を感じながら突然現れる“謎の人物”。
90分で手軽に見れるサクっと本格サスペンス。
ほぼ一人で全て演じきったサム・ロックウェルの演技力が凄い。
そしてロボットの言動が無機質なのに妙に人間くさいというか、言葉選びが巧妙なのが映画全体のミステリーな雰囲気を押し上げています👍
唯一寂しいのは華のヒロインがいない事でしょうか(笑)
何も検索しないで観て下さい。
デヴィッド・ボウイの息子が監督で、前から観たかった作品です。
月で採掘作業をする男、不可思議な現象、感じる違和感、
この基地、この任務、には、実は秘密があり…
って話です。
ネタバレしないよう、何も検索しないで観て下さい。
面白かった♪
雰囲気を味わうだけでした
ケビン・スペイシーはロボットの声で出演だから、ひょっとして登場人物はサム・ロックウェル1人なのか?下手すれば淡々としてて退屈な映画に思えてしまうかもしれないし、どうなのかな...そんなこと思いながら観始めました。
案の定、宇宙系によくある流れで退屈だったが、目覚まし時計の音(曲)がチェズニー・ホークス / The One And Only で少し嬉しくなった。マイケル・J・フォックス / ドク・ハリウッドを思い出した人も居ると思うんだけどな。
映画自体は、あらすじを読まないと何のため月に滞在してるのか、わかりにくい気はする。「2001年宇宙の旅」みたいに少しずつ異変がある展開に思え、空間や余韻に浸るような感じ。
「二人」になってからは少し面白みは出てきたけど、クローンだったら宇宙じゃなくても作れる内容と思っちゃって、個人的には引き込まれる程じゃなかった。何か特筆する現象があるわけではなく、脱出して会社のやり方に背く、真相を突き止めるような流れ。アクションやハラハラドキドキは無なので、私にとっては昔の曲を思い出しただけで、あくまで雰囲気を味わう映画でした。
【月資源採掘のために、会社に”囚われた”男が、自らの任務、存在意義に疑念を持って行くSFサスペンスミステリー。秀逸で、驚きの物語設定を堪能したい作品である。】
ー 秀逸で、驚きの物語設定である。
月面で孤独な生活を送る男、サム(サム・ロックウェル)が自らの任務に秘められた謎に迫ってゆくSFサスペンスミステリー。ー
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・所属するルナ社のために、3年もの長きに亘り妻子と別れ、月資源採掘業務を遂行するサム。相棒は、人口知能ロボットガーティのみ・・。
・だが、ある日採掘中に事故に遭ったサム。
治療室で目覚めたサムは、”もう一人の元気なサム”の姿を見て愕然とする。
・沈鬱と言っても良い全編に流れる短調の音楽も、作品の風合を高めている。
・所属するルナ社が事故を知り、送ったイライザ号。それは、サムを助けるためではなく、”次の”サムを任務に就けるために地球から遣って来るというシニカル且つスリリングな設定。
・何よりも、哀しいのはサム自身が”自分はオリジナルなのか・・”と疑念を持つシーンである。
・故障していた筈の通信で久しぶりにあった小さかった筈のイヴは大きくなっていて、今まで会話していた妻は既に亡くなっていると知った時のサムの表情。
<緊迫感漲る演出とリアリティ溢れるSF描写、巧みなストーリーテリングに驚いた作品。>
近い将来にあり得なくもない世界
一人で全てを演じるサム・ロックウェルも凄いが、脚本も凄いと思った。
月の裏側で行われる、資本家によるクローンの人権蹂躙。こんな事態も近い将来に起きないとは言えない。ラストまで固唾をのんで見てしまった。
派手さはないんだけど、引き込まれる
4年半ぶりに鑑賞。
4年半前、軽い病気して自宅療養してる時、なにか映画でも観て気を紛らせたいんだけど、なんとなく①女っ気がない②宇宙を感じる ものがよくって、これとか、2001年宇宙の旅、未知との遭遇、なんぞを観てました。(でもSFはもともとかなり門外漢なんで、まだまだ観てないものだらけ)
この映画、SFコーナーの、たとえばスター・ウォーズシリーズの圧迫感に圧倒されたりなんかして途方に暮れかけた時に、ふと目に入って借りたんですけど、アタリでした。
スジもいいし、音楽もいいです。あとガーティ(AIロボット)とか服とかがけっこう年季を現してというか、けっこうリアルな汚れが目立ってるのもいいですね。初めて観た時は、けっこう(スリラーとしての)怖さを感じました。ただ、この映画、ネタバレ状態で観るとさほどドキドキできない、ということが今回わかりました、、
でもそれにしてもSFって、CGと音楽と模型と演者の気迫だけでリアリティ出そうとする訳だから、すごいなぁ、、
ガーティの声がなにげにケビン・スペイシー、っていう、おまけみたいな、一粒で二度美味しい感もあります(笑)
4年半前にどっかで読んだんですけど、「ルナ産業」が韓国の会社っぽい(「サラン地区」とか)、っていうのは、制作の09年当時、アメリカや日本でなく将来的に宇宙進出しちゃうのは韓国じゃね?みたいな空気が出始めてたのもあるらしいです。
引き込まれる
宇宙基地や宇宙船に独りぼっちというのは他にもあるけど、何が起きるかの期待を持った見ていると、なるほどの展開。分かりやすいが、一つ一つのシーンやセリフがきちんとつなげてあって、こういう構成は好き。ナゾの女性が座っていたシーンだけが不可解だったな。
ただ、クローンの人生は切なすぎる。3年を我慢して家族に会えず死んでしまうのがきつい。彼は真実を知らなかっただけが救いか。
月に囚われた男に囚われた男
この作品、もう何度見てるだろう?
たまーに気づくとみたくなるんです、1番はじめはサムロックウェルという名俳優のことをよく知らずに見てましたね。
何度見ても泣けるこの設定、最近1人シチュエーション物漁りしてますがこの映画ははずせないね
ガーティがまたロボットのはずなのに感情があるようでシンプルなのにぐっとくるんですよね〜
ラストもスカッとする終わり方がよいんですよ〜
この映画、初めてみたときはかなり驚いたけど何度見てもちょっとしたB級感のある作り、月と宇宙船内など色々ツボにハマる要素ありで。名作です
全90件中、1~20件目を表示