武士の家計簿のレビュー・感想・評価
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算用者としての覚悟
堺雅人扮する加賀藩士猪山直之は、息子に言わせると日本一のそろばん侍であった。加賀藩では150人もの算用者を抱えていた。直之のそろばんの腕は上の者も認めていたが、何せ細かいのでチェックは厳しく融通がきかず、帳尻だけ合っていれば良い事に納得がいかなかった。仲間由紀恵扮する駒と祝言した夜でも直之はそろばんをはじいていた。 武芸ではなく算用でしか生きる術がない事が世襲される家柄なんて本来は困った事だが、徳川末期においては刀を捨ててでも生きる技となる方が良かったのかな。古い帳簿をあさって左遷されてしまいそうな始末でもね。借金で大変な猪山家で、親戚とともにする膳に鯛の絵を描いてしのぐ嫁としての駒の器量も大したものだ。
森田監督のエッセンス
地味である。愚直である。極めて森田らしい引き算の制作行程がエンディングの感情の噴出へと誘ってくれる。抑制された表現、演出が観客の共鳴を拒否しながら最後に溢れだす堪えきれない共鳴。職人技である。人生はどこにでもいる人々のよって構成されている。その存在は子と親とその身内に依ってにしか認識されない。市井の人々の地味ではあるがあくまでもその認識の存在こそが熱いリアリティを描き出すと言うことを知らしめす作品となっている。秀作である。
おもしろかった、
例によって、俺の個人的なレビューとしては、登場人物も多くなく(笑)、ストーリーもわかりやすく、純粋に楽しめた。 実話を元にしてるということで、なおさら入り込めて見られた。 話の流れ、展開もおもしろくわかりやすく見ることができたし、また間をあけて見たいと思えた。 しかし、どの時代も、世代の移り変わり、時代の流れ、みんなトシをとっていく、というのは変わりないんだな、と。
実話ベースというところが面白い
磯田さんが好きなので鑑賞しました。 実在した武士の家計簿を元に起こしたお話らしいので、なかなかに興味深かったのですが… 途中眠くなってしまいました。 本で読んでみたいかな。
もう少しメリハリを付けた展開を希望。
幕末の加賀藩で、御算用者として活躍した武士とその家族の物語。 一言で言って、なぜ映画化されたのか良く分からない映画でした。 元々、それ程大きなエピソードがないうえ、その中でも比較的大きなエピソードであった「一揆」や「家財の売却」等も、淡々と描いてしまいました。 正直、「面白い」と思える取っ掛かりすら感じません。 家族愛を描いているのかもしれませんが、それならもう少しエピソードが欲しいところです。 堺雅人と仲間由紀恵の無駄遣い・・・と言った印象です。
ごっぽ石(またはがっぽ石)まで描かれていた!
金沢の人気スポットでもある長町武家屋敷跡。冬には土塀を守る「薦掛け」という名物もありますが、小路の角には突き出た石が置かれてところもあります。今じゃ車から壁を守るために鉄柱を立てたりしてる民家もありますが、この石の目的は、雪道を歩いて下駄の歯に固まった雪を打ちつけて取り除くため。古い道によく見られます・・・車のボディをこすったという苦い体験も。とにかく、そのごっぽ石が猪山家の横の路にも置いてあったことで嬉しくなりました。 登城するカットも数回登場しましたが、現在の金沢城も使われているようでした。映画が公開されてから北陸新幹線が開通したこともあり、人気の観光スポットとなりました。そして下級武士の算用者を描くという珍しい作品。藤沢周平作品でも下級武士がメインとなってはいましたけど、こちらは剣を使わず、あくまでもソロバンで勝負するという内容。日本一の算盤侍を目指すのに仲間たちからは「剣はからっきしのソロバン馬鹿」と揶揄される猪山直之だった・・・ メインとなるのは家族愛と不正を許さない心を持った主人公とその家族。召し抱えられて以降は出費も嵩んで、やがて借金で首が回らなくなったことに気づいた直之。息子のお披露目の儀式に選んだ手段とは・・・ 一番盛り上がるところだと思うのに、なぜか前半部分でその断捨離大作戦と倹約ぶりが描かれていて、後半には家族の不幸もあるものの尻すぼみ状態になったのが非常に残念なところでした。美術も演技もいいのに勿体ない脚本となってる。しかも剣を使わないというテーマもあるのに、息子や孫は海軍に入ってしまうとか・・・まぁ、明治という新しい時代でしたからね。 個人的には、お救い米や「ひもじいわいや」とシュプレヒコールを上げる1857年の米騒動をもっと描いてほしかったし、7人が捕らえられ処刑され七稲地蔵として祀られたことも忘れてはならない。東山茶屋街からちょっと歩けばお地蔵さんが見られます。 【2010年12月映画館にて】 あらためてwowowで鑑賞。タイしか覚えてなかった・・・
家計簿を通して、武士の人生を垣間見る!趣深き映画!
家計簿を通して、家を守り、 新しい明治の世を生き抜いて来た 猪山家代々の歴史を垣間見る。 なんと趣深き映画でしょう! そろばんーそれが猪山家の家業。 加賀藩に算用者として仕える。 猪山家の借金が膨らみ、 存続の危機に瀕したことを受け、 家計簿を付けることに。 祝事の席で、鯛の尾頭が買えず、 絵で鯛を描き、愛でることを考え出したり、 家財道具一式を質に入れたり… 下級武士と言えども、体裁を重んじる この時代には、辛かったに違いない… 息子に算盤と家計簿を通して、 家の収支を教えていく様は、 厳しくも、我々にも通じるものがある。 私も見習わなければ!
コメディ要素はゼロ
一切笑いのない、地味~な映画。 お金のない武士が色んな知恵で日々奮闘するようなコミカルな映画かと、 勝手に想像していたからビックリ。 感動するようなシーンもなく・・・ ただ粛々と日々の仕事を真面目にゆるぎない正義感で勤めあげる。 妻もいい。そんな旦那を理解し支える。…現代ではもう絶滅種か!? ドラマ仕立てではない武士の実像を見た感じがする。
とても地味な映画ですが、
実話がもとになっているとのことですが、よく地味なそろばん侍を主人公に映画化したものだと感心。 とても地味な映画でさして盛り上がりもありませんがストーリーはなかなか深いです。 剣術が大切な時代背景ですが、でもいつの世も知識や専門力と正義感は生きるうえで大きな武器になるものですね。
そろばんが父から子へ受け継がれる
江戸時代後期、そろばんを手に藩の財務を管理する、算用武士の生活を描く。実在する書物が元となるノンフィクション映画。
父は仕事に対して熱心で、周囲から「そろばん馬鹿」と呼ばれるほど生真面目な人間だった。藩内の米の横流しがあった際も、台帳から上役の不正も見抜いた。家の膨らんだ借金が発覚した際も、思い切った考えと完璧な家計簿で見事に借金を返済した。祖父が亡くなった際も葬儀費用の記帳につとめていた。
息子(主人公)は、そんなそろばんばかり父の姿を見ながら、父の考え方や指導に対し不満や疑問を持つようになるが、算用武士の家系を見習い、自分も算用武士として、藩に仕えるようになる。父の厳しい教えもあり、能力をかわれ、新政府軍の財務管理を任されるようになる。
バカ真面目でこだわりが強い父であるが、自分自身の芯や正義をしっかりと持っており、家族に愛情を持っている父だった。最終的には、息子もそんな父のことを理解できるまで成長したのではないかと感じた。
無理矢理指導しているように見えて、息子の将来のことを一番に考えている点が素晴らしい。
そろばん侍
磯田道史の原作を映画化。 お家芸の算術で家を守り、算術で子を育てた男の生涯を描く。 地味な内容だが、江戸末期の武士たちの生活を再現した興味深い作品。 とはいえ、ホントに地味。 チャンバラ無し、感動なし(?) 個人的には、歴史好きなぶん興味深く見れたけど、時代モノ等に興味の無い人には退屈な作品かも( ^_^ ;)
今にも通じる話
正直音楽は暗いし、算盤(そろばん)の音がどうもドキドキするし。 自分の婚礼の日の夜も、親の葬式の夜でも、日々経費の計算を欠かさない。 「こんな細かい奴、いやだー」と、思いましたが。 経費を日々計算をし、管理するって。今の家計簿にも通じる話かもって。 父・直之が幼い息子に問う場面。 直之:「このままでは経費が不足する。さあどうする?」 息子:「来月の分から、持ってくればいいと思います」 直之:「それでは、来月が苦しいぞ。」 なんだか自分のことを言われているようで、胸が痛いです。 また「お救い米」の経費が合わないのは、横流しがあった云々も。 いわゆるかつての「裏金」事件にも通じる 。 なので、時代劇ながら今風な側面も結構ありました。 算盤侍が"お家芸”の猪山家。 後半はちょっと人情的な場面もあり。 「兵隊はたくさんいるが、算術ができるのはお前しかいない」。 そんな幹部のセリフが印象的でした。 仲間由紀恵さんの妻(のちに母)が。 実にしっとり&しっかりの役がドンピシャで拍手。 私も日々レシートを家計簿につけ、週ごとに計算する日々。 猪山家のように、売れるものも結構売ったし。 いつかこの努力が、報われるといいなあ(脱線しました、失礼)
【算盤侍の矜持を故森田芳光監督が丁寧に描く。侍映画の新たな有り様を見出した記念碑的な作品。断捨離作品でもある。】
森田芳光監督&堺雅人主演の切り合いが全く出てこない”断捨離”時代劇。 当時は、現在ほど脚光を浴びていなかった磯田道史著「武士の家計簿”加賀藩御算用者”の幕末維新」が原作。 傾いた猪山家を立て直すために、加賀藩の御算用者だった猪山直之は、徹底的な倹約術を展開する。 ・母の豪華な着物は売り・・ ・父の道楽品も売り・・ ・息子の元服式の料理の鯛は睨み鯛ならぬ、和紙に書いた鯛で代用・・。 けれど、それが面白かった。 今作以降、徐々に時代劇大作は減り ”算盤侍”時代劇が増えて来たのは、2019年現在、万民が知っている事。 当時は、地味だとか批判もあったが、今になれば故森田芳光監督の先見の明に頭を下げる。 今作のパンフレットも算盤の絵柄・大きさで作られており、読みごたえがあったなあ。 <2011年1月9日 劇場にて鑑賞>
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