劇場公開日 2010年9月11日

悪人のレビュー・感想・評価

全227件中、1~20件目を表示

4.5人は集い、そして散じる

2011年10月1日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

李相日(リ・サンイル)監督作品の映像は、綺麗とは言い難い。けれども、美しいはずだ、美しくあってほしいと思わずにいられない。幕切れの二人の顔は、一瞬直視し難いほどにやつれてすさんでいる。それでも、二人の表情は美しい。そんな思いへ観る者を衝き動かす、感情のほとばしりを秘めている。
取り返しのつかない過ち、引き返せない道行き。絶望に押し潰されそうになりながらさ迷う彼らに一筋の光を与えるのは、ふと出会った見ず知らずの人の言動だ。たとえば、無愛想なバス運転手の一言が、突然逃亡犯の身内となった老女を現実世界に繋ぎとめる。それは、胸がすっとする、清涼剤のようなワンシーンだった。極め付けは、娘を失った父の独白。搾り出すような彼の言葉は、渇いた大地に降る雨のように、感情を失い渇いた若者の心にしみていく。
しかし、父はその言葉をいちばん大切だった娘に伝えることはできなかった。(李監督の長編デビュー作「ボーダーライン」で、主人公の少年の心を揺り動かしたのは、たまたま知り合った冴えない中年ヤクザ(本作では主人公のおじ役の光石研が演じている。)との不器用な語らいだったことが思い出される。)本当に大切なことは、身近な人ではなく、行きずりの人から教わるもの。逆を言えば、本当に伝えたいことは、一番に伝えたい人に伝えられない、そんな不条理さを内包しているのかもしれない。
その時、言わずにいられなかった、伝えずにいられなかった言葉。そんなかけがえのない言葉に出会えるのは、理屈や思惑を越えた、偶然とも運命ともいえる巡り会わせゆえ、なのだ。

それにしても気になるのは、「フラガール」の李監督と言われても、「スクラップ・ヘブン」の李監督と言われないことだ。「スクラップ・ヘブン」は、加瀬亮、オダギリジョー、栗山千明による、閉塞的な社会から抜け出し、対決しようとする若者を描いた群像劇であり、「ボーダーライン」と同様に本作と地続きの作品と言える。本作を機に、父を殺した少年のロードムービー「ボーダーライン」は再評価の動きがあったが、「スクラップ・ヘブン」が描いた世界には、まだ世の中がついていけていないようだ。
私は、李監督の「次」が待ちどおしい。李監督作品を観ると、いつもそう思う。
映画には、大別すると「予想される大団円的結末に危なげなく向かう作品」、「あっと驚く結末を備えた瞬発力のある作品」、「どこに向かっているかが最後まで読み取れず、それでいて観る者をひきつける積み重ねから成る作品」があるように思う。李監督は、もちろん最後のタイプ。だからこそ、私は「次」が気になってしまう。李監督はどこに向かっていくのだろう?と。
「スクラップ・ヘブン」で語り切れなかったことを、「悪人」は語ろうとしている。けれども、語り尽くされてはいない。続きは、きっとまだ見ぬ「次」にある。

コメントする (0件)
共感した! 3件)
cma

4.5李相日の容赦ない追い込み方に瞠目

2020年11月1日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

2010年に鑑賞した作品としては、1位。
李相日監督は、いつだって手がける作品に説得力を持たせており、今作は彼のキャリアのなかでも3本の指に入る出来栄えになっていると、個人的には感じている。
妻夫木聡と深津絵里が素晴らしいのは言うまでもない。岡田将生と満島ひかりが軽薄な役どころを見事に演じ切り、樹木希林さんと柄本明はどこまでも作品に寄り添った演技で観る者の心を打ちのめしてくれる。
それにしても、灯台のシーンは寒かっただろうなあ…。あの容赦のない追い込み方に瞠目させられてしまう。次はどんな作品で、誰をどのように追い込んで、作品世界を構築していくのか楽しみでならない。

コメントする (0件)
共感した! 9件)
大塚史貴

3.5皆少しずつ悪人

2025年9月23日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

原作は、朝日新聞に2006年から10ヶ月連載された同名小説。出会い系で出会った男女の物語。佳乃の自慢話で1日の連載が終わるような進み方で、暗くて長い印象だった。映画にもその雰囲気が出ている。
解体のシーン、台所の窓に黒い影が近づき、バリバリに壊されていく。暴力的に見せつけることで、殺伐とした空気が漂う。
祐一の祖母は、夫の世話を孫に丸投げして、息抜きしている。祐一は自分を捨てた母親から、なけなしの金を奪う。佳乃は、増尾から受けた仕打ちを祐一のせいにする。
光代は恋人を失いたくないから、祐一を引き止めた。
大なり小なりの悪が絡み合って物語は進み、佳乃の父が増尾に向かう。最後、突き放すことで、その流れを断ち切ったように見えた。
2人の逃避行のシーン、ポロロンというメロディがメロドラマのようで安っぽかった。
祐一は「光代に早く会っていれば」と言ったが、佳乃の事が無ければ、会ったかどうか分からない。
俳優たちの演技が圧巻。特に妻夫木聡の祐一は、連載を読んで想像した、そのものだった。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
hk

4.5さすが受賞作品

2025年9月10日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

難しい

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 0件)
もちこ

4.0本当の悪人は誰なんだろう。

2025年9月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

ドキドキ

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 0件)
蜷川吝塀

3.5もっと抑えた表現になればいいのに

2025年9月5日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

癒される

ドキドキ

美しいシーンが沢山あります。
醜いシーン、醜い生き方を何度か見せられる。
ふとした偶然的な出会いや不運で人生を翻弄される中懸命に生きる市井の人を描く作風は好きです。
説明的な表現を削ぎ落として欲しい。

感性としてはフェリーニの初期作品の「道」や「カリビアの夜」、あるいはヴィスコンティの初期作品「郵便配達は二度ベルを鳴らす」「若者のすべて」やマイケル・カコヤニスの「その男ゾルバ」。
邦画なら成瀬巳喜男や今村昌平の作品を思いますが、昔の映画は残酷。生易しくない。淡々と説明なしに現実として描く。
この監督はまだ完成形に至っていない。過渡期です。
「国宝」は進化したがまだまだ完成形ではない。
もう少し俯瞰的に観る事も必要。

この映画の深津さんはいい。
満島ひかりは嫌な役を成り切って演じましたね。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
Kenku

5.0悪人はひょっとして私達だったのかも知れません

2025年9月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悪人

2010年 東宝

悲しい
物語でした

地方の出口のない閉塞感
海のない町のように
海があっても、
それ以上どこにもいけないと感じるように
都会のような華やかなものもない
そもそも若者が少ないから車やネットがなければ、若者が顔を合わせることもできない
自転車しかなく、仕事と部屋との往復だけの生活ならば、それは孤独そのもの、牢獄のようなものです

仕事も少なく、やりがいを持って働ける仕事はない
働く場があるだけでまし
無論、男女の出逢いなどあるわけもない
生きているのだか、死んでいるのだかわからない毎日
それで若者といえるのだろうか?
若い日々は永遠に続くようでそうではない
焦ったところでどうにもならない現実
都会にいけないのは、彼等、彼女等なりに理由がある
誰だってこんな田舎を捨てて都会に行きたいのはあたり前だ
いつの間にか30代、いや40代になってしまう
先の見えない真っ暗な人生
いや先は見えてる
真っ暗だと

こんな東京とは全く違う地方の若者の生活が、まず活写されます

九州の福岡、佐賀、長崎の辺りとすぐわかりますが、町の様子は日本全国中ありふれた
光景で、日本のどこにでもある地方のことだと示しています

2025年の今
公開当時よりこういう状況は一層進んでしまっています

灯台
針路はこちらだと指し示す存在です

光代には、祐一は灯台の光そのものでした
この光を見失ったら、真っ暗な海の真っ只中でまた漂流してしまう

家庭を持つ普通の幸せな生活には絶対たどり着けなくなってしまう
子供をもつならタイムリミットも迫っている
そんな恐怖にとらわれたのだと思います
それが愛なのか?違うものなのか?本人にもわからないでしょう
とにかく幸せの方向を指し示していたのでず
体の中から熱く燃え上がるような思いだったのだと思います

祐一は母に灯台で置き去りにされ捨てられた子供です

それに反して、灯台に戻ってきた光代は自分を捨てなかった
本当に自分を愛してくれた女性だと、祐一は心の底が熱くなるほど感動したことと思います
その一方で母に捨てられた記憶はこう叫ぶのです
そんな訳がない!
自分は悪人なのだから、捨てられて当たり前の男なのだ
殺されそうになったなら光代だって逃げるはずだと彼は光代の首をしめます
彼女に罪がおよばないように狂言でやったことではないでしょう
でも光代は殺されることを受け入れようとしていました
祐一は母から捨てられた灯台で、確かな別の愛を得たと確信したのです
光代と祐一の二人にとっては、初めて生きていて良かったと思えた瞬間だったかもしれません
痺れるような愛の成就だったと思いました

誰が悪人?
それは一人を殺し、一人は殺人未遂した祐一に間違いありません
しかし、祐一と光代をこのような形でしか出逢うことが出来ない社会にした大人達のせいであるのかも知れません
きっと普通に出逢えていたなら良い恋愛をして二十代で家庭を持てたはずの二人です
子供もいたことでしょう
祐一は真面目に働き良い父になったことでしょう
こういう出逢いしか出来ない夢も希望もない21世紀にした世の中のせいです

祐一を捨てた母に代わって育てた祖母?
殺された佳乃をあのような娘に育ててしまった両親?
そんな訳がありません
祐一を捨てた母?
遠因はあるかも知れません
でもみんな、祐一をそのような運命に追いやろうとは誰も思ってはいないのです
彼等、彼女達なりにその時は自分たちにできる精一杯に生きてきただけだと思います

都会の大学生のくず男には、祐一と光代の関係は、理解できない純粋さだと思います

都会に暮らす私達も同じです
祐一の祖母に群がるマスコミのように、この事件がもし現実にあったとしたら、そのニュースをテレビでみて、悪い男がいるもんだとその背景を何も考えずに言っているに違いありません
都会の繁栄と地方の衰亡は裏表です
都会の自分達が幸せに暮らしているのは、地方の衰亡の上にあることなど考えたこともありもしません

悪人はひょっとして私達だったのかも知れません

深津絵里の美しさに驚嘆させられました

コメントする (0件)
共感した! 1件)
あき240

2.0共感できず

2025年8月31日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

感動できそうで、させてくれない。共感できそうで、させてくれない。嫌な奴が一杯出てきて悲しい気分にさせられる。すっきりさせてくれない。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
nob

5.0イケメンなら稀代の悪であってもヤマトンチュは許してしまう?

2025年8月30日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 0件)
マサシ

3.0未来の自分、周りの人のために今の行動を考える

2025年8月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

国宝を見たので、久しぶりに鑑賞した

悪人にならないために、悪人を作らないために人と
のコミュニケーションの取り方、自分の行動に伴う影響、責任について考えた。

誰かにとっての悪人がいて、誰かのために悪人になる人もいて、

きっと私も誰かの悪人になっているかもしれないと思った

傷つけられたから誰かを傷つけることは何のためにもならない。

既視なのもあるかもしれないけど、演出がゆったりしていて観ていてキツく感じる時もあった、好みの問題もあるし、どちらがいい訳でもないと思うけど
国宝は3時間あってもテンポが良くて、だからウケたのかなあ

久石譲の音楽が良くて、堕ちていくけど静謐で、悪いのに心地よくて、怖かった

コメントする (0件)
共感した! 1件)
@R3X

5.0深津絵里さんの演技

2025年8月17日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

知的

人間の悪さ、優しさ、虚しさが絡み合い、暗い内容ですが、妻夫木くんの儚い演技、なんといっても深津さんの圧倒的な演技によって美しい物語に昇華されます。
周りを固める名優の方々も流石の演技力で、感情が揺さぶられ続けます。説得力のあるストーリーと綺麗な風景、演技、スクリーンで観たかった映画です。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
映画野郎

5.0勇気を だして

2025年8月16日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

みた 静かに沈む余韻 色んな側面から 丁寧に紡がれていた 未熟な若者達の 危うさよ 真っ直ぐな 九州弁 ダサくとも 悔しくとも 真面目に生きた方が 美しい 公開から15年 提示された様々な問題は より深みを増している 世間的には そう でも your story  あなただけの 物語 も ある

コメントする (0件)
共感した! 2件)
Sophia

4.0感動等は無いが、俳優たちの熱演を引き出す演出力には感服

2025年8月13日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

ドキドキ

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする 1件)
共感した! 10件)
Kazu Ann

4.0善悪の境界を越えたとき

aさん
2025年8月10日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

殺人は悪いことだけど殺人犯=悪人なのか

誰が善人で誰が悪人とか一片をみては言えない

でも、殺人を犯してしまったことで
どんな人でも「悪いやつ」になってしまう

それくらいに殺人は重い

コメントする (0件)
共感した! 3件)
a

3.0原作未読。 正直な感想を言うと、私には刺さらなかった。増田や佳乃が...

2025年7月27日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

原作未読。
正直な感想を言うと、私には刺さらなかった。増田や佳乃が悪人で、祐一と光代が本当は善人? そういう風にしかとらえられない描き方だと思った。
善人が悪いことをしてしまうのだが、彼ら彼女らの背景があまり描かれていないため、絵空事のような、「本当は心優しい殺人犯と孤独な女性の悲恋」という、定型的な物語にしかなってないような・・・。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
hato

3.5後味が悪い・・・。心がある程度元気な時に観ないとツライ。

2025年7月15日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

直前に映画館で「国宝」を観たからか、李相日監督の作品ということでAmazonPrimeのおすすめに出来てきたのかも。この映画の宣材(?)で、妻夫木聡と深津絵里が出ている写真は何度か見ていたけど、暗い映画だよな・・・と思い、どちらかといえば敬遠していた。が、その予感は間違えていなかった。

灯台の太陽が昇るシーンと事件との対比。朝日が美しすぎるからこそ、そこにできる影がより深くなる、というか。そういう映画だとはいえ、この、やるせなさが、最後に残る後味の悪さの根本なのだけれど、僕にはうまく消化できない。

決して悪い作品というわけじゃなく、どの俳優さんも素晴らしいけど、作品の内容自体が、観る人を選ばさせている、と思う。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
しの

4.5本当の悪人は

2025年7月9日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:TV地上波、VOD

泣ける

悲しい

ドキドキ

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 4件)
qq

5.0とても苦しい

2025年7月2日
PCから投稿

思ってた以上に、めためたに重いストーリーでやられました。
すべてにおいてレベルが高いです。

主要な登場人物の演技も素晴らしい。
特に深津絵里、樹木希林、柄本明
妻夫木聡は共感できなさ過ぎて評価しきれないと感じました。
ということは逆説的にいうとやはり素晴らしいのですね。
あと岡田将生にもなんか賞あげてほしい。

無理やりに注文つけるとすれば
健康食品のパートでしょうか。
これを入れる意味はなんとか理解できたのですが
ちょっとさすがに食傷気味というか・・・。

また、個人的に
ひとつ前に観た作品内での方言の使い方がすごく引っかかったのですが
この作品では気になりませんでした。
九州地方の人はこの俳優陣の演技をどう感じたのかなという興味はあります。

コメントする (0件)
共感した! 3件)
うまぶち

3.5深津絵里の美しさを堪能する映画

2025年6月29日
PCから投稿

とにかく深津絵里が化け物レベルに美しい。
なんだろうこの人。
美しさと可愛さの同居具合が神レベル。

ストーリー、キャラにはあまり感情移入できなかった。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
totococoro

4.5悪人は人が作る

2025年6月19日
PCから投稿

公開時に鑑賞して15年後の再鑑賞
その時よりも、重いものが押し寄せた。
前回は「愛」を強く感じたが
今回は終始「孤独」が強くあった。

孤独の世界から見た偽物と本物
「悪人は人が作る」

行き場の見つからない青年、
狭い生活圏を往復する女、
悪人を作り上げた女、
薄っぺらい大学生と薄い絆の仲間、
去るバスに一礼する老婆、
マフラー、見開いた眼、
大切な人、守るべき人、
喪失感と幻を追う人、
言葉の要らない言葉、世間、
演じた各俳優は素晴らしかった。

”大切な人の幸せを見る幸福感”
もっと早く出会っていれば…。

最後の澄んだ目は本物だと思った。

コメントする (0件)
共感した! 3件)
星組
PR U-NEXTで本編を観る