「過去も未来も星座も。」時をかける少女 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
過去も未来も星座も。
初版・原田知世の頃は角川映画の全盛時代だった。
どちらかというとかなりの薬師丸派だった自分は^^;
セーラー服や機関銃やヤクザ稼業に興味が出ても?
次に出てきた原田知世に何の関心も湧かなかった。
しかしのちに何度も映画化されたこの物語を改めて
観てみるとどの作品も毎回よくできた話なのである。
原作がいいから?あ、それはもちろんあるんだけど…。
細田版・アニメもとても良かった。なんだか泣けた。
なんだろう、一貫して流れているテーマのようなもの。
昭和の風情?味わい?昔懐かしい感覚がよみがえる。
ドラマの完成度が決して高いというわけではないが、
観ていて心がキュンとなるのだ。こんな私ですらねぇ^^;
私は過去へも未来へもタイムリープはできないが、
もしもそれができたとして、その時代を経験したとして、
今まで体験したことのないような想いを抱えたとしても
おそらく現代に帰ってくる方を選んだと思う、やっぱり。
(まさにバック・トゥ・ザ・フューチャーだな♪)
しかし今回、自分の未来でなく、誰かの未来を守りたい
というのが理由となる後半がかなり切なさを感じさせる。
'70年代、といえばすぐ神田川とか拓郎とか^^;
あまりにベタな材料が出過ぎる感のある描き方だが、
ゴテツと芳山和子の恋愛距離感、涼太がとる態度など、
あの頃の男女関係がそのまま顕れているのが嬉しい。
そう、今みたいに道端で抱き合ったりキスなどできない、
下校の際、正門の外で待ち合わせて一緒に帰るだけで
噂になるようなものが「付き合う」という恋愛関係だった。
当時の和子を演じた石橋杏奈がまさにハマリ役!で、
それがのちに自分の母となる女性だと納得するあかり。
大切な母の願いを叶えたい一心でタイムリープに挑む、
素直で能天気なあかりを演じた仲里依紗が素晴らしい。
偶然出会った涼太とのやりとりの中で、当時の恋愛を
自らが体験し、どんどん女らしくなっていく成長ぶりが
愛おしくて、ラストのぽろぽろ涙にはこちらまで感涙…。
記憶に残る、というのはやはり哀しいことなんだろうか。
どんなに忘れようとしても消せない想いは確かにある。
脳が忘れてても、身体が反応するのはそこなんだろう。
あんな風に消されなくても人間はやがて過去を忘れる。
辛いことはより早く、幸せなことはゆっくり時間をかけて。
運命の残酷さは、吾朗おじちゃんの一言に集約される。
でも、どんなに短くても生きた証はどこかに絶対に残る。
桜の散り具合を観ながらそんな風に思った。
(時を越えて語り継がれる作品が増えて欲しい今日この頃)