大昔に、子供の頃に一度鑑賞。
漫画家の蛭子能収も、この映画が好きだと言ってました。
映画って、大人の俳優さんたちが主演するものだと思っていた僕には「ただの女の子が自由奔放に映っている本作」は不思議に面白く、またこの目に物珍しく映ったのを覚えています。
今回再鑑賞。
とにかくガブリエル叔父さんの妻、アルベルティーヌの御尊顔が、たじたじとするほどに圧倒的ですよね!
「フィオール製の香水バルブーズ」を振りまくガブリエル叔父さんとザジの出会いは、オステリッツ駅。
( ⇒地上駅はフランス国鉄で、地下にはメトロです )。
カット割りの慌ただしさと、フイルムの早回し。この編集の妙技で、終始落ち着かせないストーリー。
叔父さんとカフェの大家さん、そしてタクシー運転手を煙に巻いて、ザジはパリの街中を走ります。
みそっ歯の おかっぱ娘よ(笑)
いまでこそ、女の子を主人公にした作品は、洋邦ともに、枚挙にいとまがないですが、
「手をつながれるのが嫌いな子」って、いるんですよねー。
しかし、じっくりゆっくりと人間を撮るルイ・マルが、こんなドタバタな異作を残すとはね・・
娘や孫に手を焼いて、目を回した経験がないと、こういうのはきっと撮れないだろうと思います。
だから僕はルイ・マルのことがまた少し好きになる。
そして、旅先で予定していた交通が、ストやら自然災害やらで止まっていた時の、焦って困った体験は、誰しも有るでしょう。
けれども、
何の気の迷いで作られたこの「おふざけ作品」なのかと思いきや、
よく見れば、逆光の絵は、異様で不吉ですし、サスペンスを感じます。まさしくこの監督のものです。
= エッフェル塔のエレベーター(フランス語ではリフト)、
= 同じくエッフェル塔の、望遠レンズで画面一杯になる非常階段のシーン、
= 舞台のセリ、
= やっと動いた地下鉄駅のエスカレーター。
つまり、「登り下り」と、「地下道への潜航」。
これらシュールレアリスムな映像の中に、あの3年前の「死刑台のエレベーター」の残像を、確かに、ここにもかしこにも見せているのです。
後年、僕はヨーロッパを一人で旅したっけ。もちろんパリではこの地下鉄にも乗った。
アール・デコ調の装飾のある地下鉄の出入り口。entrée とsortie 。
階段をくだって、バイオリン弾きの前を通り、狭いホームから車内に乗り込めば、ピンクの よれよれのTシャツを着ている女の子が列車を運転していた。20代だろう。金髪のパリジェンヌだった。
後ろの窓から彼女の背中を見つめた。
あ、ザジだったのかもね。
・ ・
しかーし!
いかんせん長い。長過ぎる。
「93分」とは信じられない。
【前半】は、ザジとガブリエル叔父さんと、そしてパリの街と車こそがこの映画の主人公。
【中盤】はエッフェル塔を舞台に吟遊詩人の名シーン。
でもそのあとの
【後半】は、蛇足だと想うがなぁ。
人しか映らないので、もう観る価値は ??です。観客をうんざりさせる、延々と続くあの大騒ぎは、フイルムにする必然性があるのだろうか?
エッフェル塔のくだりで、そこで《FINE》にしちゃう短編で良かったのに・・
コメディもこれだけ長いと、さすがにもう狂気でしかなく、
終わってみれば地下鉄が一度も登場しなかった「地下鉄のザジ」なのであった。
(※)
・・・・・・・・・・・・
【メモ】
(※) 地下鉄は最後にほんの一瞬だけ写る。それも地下ではなくて地上を走行中であり、お目当てのザジ本人は寝ているというサイケな始末。
あと、トリビアとしては
本作のロケ中にエッフェル塔からの投身自殺があり、スロー・コマ送り再生すると「脚」が写っているとの事。
わからなかった。
パリの思い出の僕のレビューは
「あの頃エッフェル塔の下で」
「エッフェル塔 創造者の愛」他。