ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない : インタビュー
「ホームレス中学生」「KIDS」の小池徹平が「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」で演じるのは、母親の死をきっかけに8年間のニート生活に終止符を打ち、プログラマの資格を取得してIT企業に就職した主人公・マ男。過酷な労働環境とくせ者ばかりの上司、同僚が揃った“ブラック会社”で奮闘するマ男を熱演した小池にインタビューを行った。(取材・文:編集部)
小池徹平 インタビュー
「キャストはみんな自由で、B型の集まりのようだった」
――原作は2ちゃんねるの書き込みで話題になった話ですが、初めて脚本を読んだ印象は?
「僕は原作を読まずに脚本から入ったのですが、まず非常にタイトルが長いと感じました(笑)。『ブラック会社』ってどんなだろう? 重い映画なんじゃないか? と予想していたんですが、タイトルと全然違う内容になっています。サラリーマンとして苛酷な環境で頑張る青年の話で、いじめや引きこもりも描かれているんですが、変に重くならずにCGを取り入れて笑いを狙っているので、良い意味で軽い気持ちで見ることができると思います。展開が早いからテンポもいいし、マ男の成長もちゃんと描かれていて、これは良い映画になると確信しましたね」
――マ男はいじめによる引きこもりが原因でニートになってしまった男ですが、ニートや引きこもりについて何か感じたことはありますか?
「マ男役を演じることになってから意識するようになったんですが、ひとことでニートと言ってもいろいろな人がいると思うんです。将来の夢もなくただ何となく過ごしてニートになった人もいれば、入りたい会社に入れなくて結果的にニートになってしまった人もいるし、人によって感じ方は様々ですよね。実際演じるにあたり、見た目も分かりやすくしようと思って、髪をボサボサにしてずっと家に引きこもっている感じを出しました。そうすることで会社に就職してからの外見と差がつけやすいですからね。ニートのときのマ男は、資格を取っただけで満足しちゃう狭い世界で生きるオタク系の男を意識していました」
――働く意味を問う映画になっていますが、マ男を通じてなぜ働くのかを考えたことはありますか?
「マ男を演じて特に何かが変わったということはありませんが、世の中には自分のやりたい仕事ができない人がいて、こんなに辛い状況で働いている人がいるんだなと考えさせられました。ずっと会社勤めで同じ場所で同じ仲間と何年も働くのも大変だろうなと思います。もちろん僕たちの仕事も大変なこともあるけど、僕がマ男と同じ状況だったら耐えられないと思います。あらためて今の仕事をやっていて良かったと感じました」
――劇中のリーダー(品川裕)や木村(田中圭)のようなタイプの人間が周りにいたらどう接しますか?
「あんな人たちがいたら嫌ですよね。リーダーにはいつもバカバカ言われるし、木村君もいやらしくて嫌味なヤツですからね。はっきり『お前嫌い!』って言っちゃいそうですよ(笑)。でも、もしそれが自分のやりたい仕事だったら耐えるしかないというか、我慢しなきゃいけないと思います。かと言って、実際マ男と同じ状況を耐えられるかどうかは分からないですね。僕は彼より意思が弱いかも(笑)。だってあの会社はひどすぎますよ。マ男は本当に我慢強くてすごい男だと思います」
――劇中に登場するキャラクターはくせ者ばかりですが、撮影現場はどんな雰囲気でしたか?
「ほとんど会社のシーンなので、何日間も密室にこもってまとめ撮りしていたんですが、キャストのみなさんは本当に自由な方ばかりで、B型の集まりのような感じでした。すごく仲も良かったですね。これまでもキャストの仲が良い現場はたくさん見てきたけど、やっぱり年上の方が多いから気を遣う部分もあるんです。例えばみんなで雑談していても、普通は話の輪から抜けるタイミングを探すじゃないですか。でも今回はそういうのをまったく気にしなくていい空気があったし、本当に自由気ままな現場でした」
――劇中では、実質的なリーダーは藤田さん(田辺誠一)でしたが、撮影現場でのキャストの関係はどんな感じでしたか?
「キャストはみんなB型タイプだったので(笑)、まとめ役は佐藤監督しかいないんですよ。現場全体を引っ張っているのも監督だったと思います。監督とは10代の頃からの付き合いなのですごく信頼していたし、いつも明るく盛り上げてくれるので本当に助かりました」
――今回サラリーマン役に初挑戦しましたが、今後これをやってみたいという役柄はありますか?
「まだまだやってないことはたくさんあると思うんですけど、限定しちゃうとそれしかできない役者になりそうで嫌なんですよね。去年『ホームレス中学生』で13歳の中学生役を演じて、実年齢より10歳下だったのですごく不安になったんです。でも実際に完成した作品を見たらすごく良い作品になっていて、やる前から無理と決めつけるのはよくないと実感しました。だからこれからも、もらえる役はどんどん演じていきたいですね。そうやって経験を積んで、自分に合っているものや合わないものを理解して自信がついたら、やりたい役も見えてくるんだと思います。だから今は絞りたくないというのが正直な気持ちです」
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