「青春時代は自分探しの助走距離。もう一歩前へ…」ソラニン 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
青春時代は自分探しの助走距離。もう一歩前へ…
青春時代は自分探しの助走距離。もう一歩前へ…。
宮崎あおいと高良健吾。意外と音楽系の映画に出演の多い2人の主演コンビ。でも、高良健吾は(これは予告編ではっきりと観客側に知らされているので、書いても大丈夫だと判断しました)途中で居なくなってしまうので、実質的には宮崎あおいの単独主演作品と観て良いか。
音楽を通して、若者達の将来に対する不安感・自分の進むべき道を模索する…とゆう内容自体には、それ程の新鮮味は感じられない。
られないのだが。主に宮崎あおいの独白によって語られて行く、高良健吾との恋愛模様は、なかなか切ない物が有り。若さ故に脆く崩れ易い2人をハラハラしながら観てしまう。
しかし、これを音楽映画として観てしまうと。『フィッシュストーリー』や、『BANDAGE バンデイジ』の時の様な、楽曲に魅力的な面が足らず。尚且つ、肝心の演奏部分を編集上でしっかりと見せていない辺りは、かなり不満が残る。
上記2本の作品が、“才能が有りながら”早すぎて売れなかった。また“総ての消えて行った”バンドに対する鎮魂歌の意味も込められていたのと比べてしまうと、音楽的にはどうしても評価を下げざるをえなくなる。
重箱の隅を突っつく訳では無いのですが。事故の前だけ画面が高良健吾目線になるのも、個人的にはちょっと納得がいかなかった。まぁ、有りなんですけどね…。
だから観る側としては、あくまでも恋愛映画を観る…と言った心構えで観るのが良いのでしょう。
一応人気コミックの映画化とゆう事で、おそらく原作に則した内容・画面作りかと思います。
多分ですが、過去を振り向かず、前を向いて行こう…(引きずらずに…)って事を訴えているのでしょう。原作のファンならば納得するとは思うのですが…。例えば財津和夫演じるお父さんがやって来る場面。
残されたギターを…おそらく原作に於いては、主人公が“過去との決別”を示す重要な場面だと思います。画面構成等も同じなのではないでしょうか。
原作のファンならばおそらくグッと来るところでしょうが、映画を観に来る総ての人が決して原作のファンでは無いだけに…。そんな原作ファン以外の人に取ってこの場面では、“主人公はまだ未練を残して居る”と観てしまってもおかしく無い場面かと思いますね。
そう言えば、桐谷健太が触れ合うお爺さんのエピソード。永年連れ添ったお婆さんに対する愛情溢れる場面として、おそらく原作には印象に残る場面として登場するので、どうしても外せない場面なのでしょうね。
しかし、原作を知らない者から観ると、ちょっと浮き上がって見えてしまったのが正直なところでした。
全編でじっくりと構えたドラマ作りをしているだけに、ちょっと惜しい気がしました。
但し、そんな意見をも吹き飛ばす魅力的な場面も有りました。それが同じバンド仲間の桐谷健太と近藤洋一です。
この2人の友情と、過ぎ去って行ってしまう青春への熱き想いは、多くの観客から共感を抱かれると思います。
2人の登場する場面が、この作品を魅力的に見せていたと思いましたね。
(2010年4月3日TOHOシネマズ西新井/スクリーン5)