劇場公開日 2010年4月3日

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「優等生の、空」ソラニン ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0優等生の、空

2011年5月8日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

次回作「僕等がいた」が注目を集めている三木孝浩監督が、宮崎あおい、高良健吾を主演に迎えて描く、青春音楽映画。

この作品を冷静に採点するとしたら、8割を優に超えるだろう。観客が注目している人気俳優陣の的確な配置、短い会話を通して個々の登場人物の性格を浮かび上がらせる堅実な演出、そして意外に聞けるライブシーン、宮崎あおいに歌わせる話題作り。

娯楽として観客に提供する作品としては、無駄をぎりぎりまで削り落とす事に成功した端正な芸術品として完成している。実際、興行の面では満足のいく結果を収めたはずだ。商品として、企画として正しく優等生として評価すべき一品だろう。

だが・・である。これだけの心躍らせる要素をぶち込んだ映画であるはずなのに、突き刺さらない。明日には、忘れてしまうだろう。何故だろう。どこも、駄作として蹴落とす部分が見当たらないのに。何故だろう。

優等生が、10年後の同窓会で皆の記憶から弾かれているという事に、どこか似ているのかもしれない。

頭は決して良くないのに、顔が飛びぬけて整っている男。ニキビ顔で、性格も悪いのに、足だけは速かった女性。地味だけど、声が綺麗なあの娘。いつも人の思い出話に挙がるのは、そんな連中だ。荒い、醜い。だけど、それを補って余りある強烈な輝きがある。そんな、人間達。

この作品は・・・どっちなんだろうか。代用可能な秀才か、歪な個性か。

本作には、空の描写が幾度となく描きこまれる。雲、青、雨。それら一つ一つは美しく、無駄が無い。でも、きっと明日も、明後日も、似たような空が広がっている。別に、特別じゃない・・。「これ」じゃなくても良い。優等生が見つめた空は、自らの本質も、無色透明さも無意識に主張する。ただただ、映画を愛するものとして悲しさばかり溢れてくるのは、気のせいか。

ダックス奮闘{ふんとう}