ダーク・シャドウ : 映画評論・批評
2012年5月15日更新
2012年5月19日より丸の内ルーブルほかにてロードショー
バートン&デップによる、愉しいアイデア満載の快作
余裕にあふれ、とてつもなく楽しく暗く、泣かせるアイデアもふんだんに盛り込まれた快作だ!
ティム・バートン×ジョニー・デップというアクの強い幻惑コンビによる過去の作品群、あるいはバートン単独作を思い浮かべても、「ダーク・シャドウ」はビジュアル面だけでなく、久しぶりに<お話>そのものに人を酔わせるものがあるといっていいだろう。
アメリカ・メイン州の寒々とした港町が舞台。街を築いた有力者の息子のジョニー・デップを振られた腹いせにバンパイアに変え棺桶埋葬する魔女にエバ・グリーン、性格の悪そうな顔に実にお似合い。200年後の<1972年>に工事があり、デップは掘り起こされるが、当然ウラシマ状態である。時代は変わっても憎っくきグリーンが姿を変え、街を牛耳っていた。デップの子孫はというと……実に頼りない!
デップが目覚めた<1972年>という年号が重要である。今年、「悪夢へようこそ 第2章」でまさにバンパイアの如く(というか彼も「SUCK サック」でバンパイアに扮したばかり)復活した伝説のショック・ロッカー=アリス・クーパーのアクト再現が可能となったからだ。しかも、彼を自宅の宴に招待したのはロックに狂うクロエ・モレッツ。生足モレッツをどう登場させ、デップに紹介するか、バートンは少女俳優に微笑ましいぐらい気を遣っている。このモレッツには秘密があり、それは……おっとお楽しみは劇場で。とにかく過去と(映画の)現在、そして不死の時空がストーリーには魅力的に織り込まれている。女房(ヘレナ・ボナム・カーター)には勝てない、という家庭安泰の法則をバートンは最後に用意する(笑)。
(滝本誠)