サロゲート : 映画評論・批評
2010年1月12日更新
2010年1月22日よりTOHOシネマズスカラ座ほかにてロードショー
身体的接触が希少になった世界の危うさを痛感させられるSFサスペンス
「ターミネーター3」のジョナサン・モストウ監督が、かつてない方法でロボットを活用する近未来社会の危機を描くSFサスペンス。
遠くない未来。人々は意思も感覚もリンク可能な分身ロボット(サロゲート)を持ち、社会生活を代行させていた。自宅のマシンに座り、意識をサロゲートに飛ばせば、代わりに働いてくれる。しかも、事故や犯罪でサロゲートが破壊されそうになると、リンクは自動的に解除され、本人には害が及ばない。安心して危険な冒険やスポーツも楽しめるのだ。
しかし、男女2体のサロゲートが何者かに破壊され、持ち主たちも死亡する事件が発生。FBI捜査官グリアーは、事件の謎を追う。
街の人々はみなサロゲートで、グリアーを演じるブルース・ウィリスも若々しい金髪の分身姿で登場。役者たちの微妙に違和感のあるロボット演技はおかしいし、「ターミネーター」を思い出させるアクションも楽しい。
だが、グリアーが謹慎処分を受け、サロゲートを使えずに生身のブルース・ウィリスが捜査を始めると、ユートピアに隠された殺伐とした真実が露にされていく。生身では外出もできず、自室に引きこもって誰とも素顔で向き合えない人々。身体的接触が希少になった世界の危うさを痛感させられる。ただ、容姿や身体能力など、サロゲートを選ぶ際の規則などは不明。サロゲートに反対する人権組織の有り様も不明瞭で、物語に深みがないのが惜しい。とはいえ、傷つき疲れたグリアーが癒されるラストは感動的だ。
(山口直樹)