劇場公開日 2009年9月26日

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空気人形 : インタビュー

2009年9月18日更新

心を持ってしまった空気人形が、孤独な人たちと触れ合い、やがてひとりの青年と恋に落ちる姿を描く本作について、是枝監督と主演のぺ・ドゥナを直撃。ペ・ドゥナ曰く「運命の出会い」を果たした2人が、撮影の舞台裏や互いの素顔を明かしてくれた。(取材・文:平井万里子)

是枝裕和監督&ペ・ドゥナ インタビュー
「撮影中、ここまでブレなかったのはショックなぐらい」(是枝)
「是枝監督との出会いはまさに運命的なものでした」(ぺ・ドゥナ)

それぞれが「空気人形」に寄せた思いとは?
それぞれが「空気人形」に寄せた思いとは?

――是枝監督はデビュー作「幻の光」以来の原作ものになりましたが、映画化までの経緯を教えてください。

是枝:「原作の『空気人形が、抜けてしまった空気を自分の好きな人に吹き込まれて満たされる』というシーンが非常に官能的で、ぜひ映画にしたいというところからスタートしました。他人の息で満たされる、つまり空虚感は自分だけでは埋められない。もっと言うと、自分の中に感じる他人の息が『心』なのだという哲学的な問いも感じましたね。また、息という映画的なモチーフを介してセックスが描けるのも魅力的で、その前後の人形の感情をオリジナルでどのぐらい作れるか?というのが勝負でした」

国や言葉を超えて、息の合ったコラボーションを見せた ペ・ドゥナ(左)と是枝監督
国や言葉を超えて、息の合ったコラボーションを見せた ペ・ドゥナ(左)と是枝監督

ぺ・ドゥナ:「あのシーンは、監督の思い入れも深かったので、表には出さなかったけどとても緊張しました。監督のためにも本当にいいシーンを撮りたいと思いました」

是枝:「監督としては『逃げない』というのもテーマでした。裸もそうだし、主人公が空気人形であることによって起きる感情の振り幅が大事。オブラートに包んでしまうと、普通の人形でいいじゃんって話になる。感情を押し殺す人間との対比も際立たせたかったので、空気人形の感情にはリミッターをかけたくなかったんです」

――撮影に入る前には、本読みに相当時間をかけたそうですね。

是枝:「説明することで台本を咀嚼できたし、ペ・ドゥナさんも人形としてのプロセスを掴んだと思います。誤解がまったくなかったので、安心して撮影ができました。ここまでブレがないのはちょっとショックなぐらい。逆に言うと、彼女が『ここはどういう気持ちなのか?』と悩んで聞いてきたシーンがふたつあって、とりあえず撮影はしましたが、全体の流れを見ると彼女の指摘通り、違和感があったので本編には残していません」

ぺ・ドゥナ:「私は理性より心で動くタイプ。台本を読むときにも、まず頭の中で自分なりの映画を撮ってみるんです。演技するときは、すでにその人物の『心』になっているので、おかしいなと思う部分に関しては直感が働きました」

――撮影中に知った、お互いの素顔を暴露してください。

ぺ・ドゥナ:「(監督に向かって日本語で)ダイジョウブデス?」

今というタイミングで是枝監督と出会えたのは 運命的だったと語る
今というタイミングで是枝監督と出会えたのは 運命的だったと語る

是枝:「お先にどうぞ。聞いてから考えるよ(笑)」

ぺ・ドゥナ:「監督は海外の映画祭にも招かれていて、世界的に注目されている巨匠なのに、『映画祭に行く目的は、おいしいものを食べることだよ』って言ってました(笑)」

是枝:「ペ・ドゥナはお芋とピーナッツクリームが大好き。すごく普通な感じでいいと思います」

ぺ・ドゥナ:「ウフフ(笑)。監督は常に周りを観察していますよね。私も俳優として、どんな監督に対しても、何らかのインスピレーションを提供できたら光栄だと思っていますが、監督はそんなところまでちゃんと見ていたんですね(笑)」

――この出会いは、お2人にとってどんなものですか?

是枝:「撮影監督のリー・ピンビンさんもそうですが、奇跡的なタイミングで、稀有な出会い方ができた。何かがちょっとずれると、全然違う作品になったと思います」

ぺ・ドゥナ:「以前の自分だったら、出演を躊躇していたかもしれない。でも、俳優としての準備ができ、これをやっても自信がもてるかなと思っていたちょうどその時に、お会いできたような気がします。まさに運命的な出会いですね」

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