抱擁のかけら : インタビュー
昨年、「それでも恋するバルセロナ」でアカデミー助演女優賞を受賞したペネロペ・クルスの主演最新作「抱擁のかけら」が、今週末に日本公開を迎える。ペネロペにとって、「ライブ・フレッシュ」「オール・アバウト・マイ・マザー」「ボルベール/帰郷」に続く、4度目のコラボレーションとなるペドロ・アルモドバル監督による本作は、14年前に起きたある事件をきっかけに、名前を変えて生きている1人の映画監督の心の崩壊と再生を描いた複雑な愛の物語。本作で映画監督の人生を狂わす“運命の女”を好演したペネロペに、「お互いに最高のコンビ」と認め合うアルモドバル監督との仕事や、オスカーを受賞したときの感想などを聞いた。(取材・文:猿渡由紀)
ペネロペ・クルス インタビュー
「ペドロは友達で、家族のようでもあるわ」
――「抱擁のかけら」は、ペドロ・アルモドバル監督との4度目のコラボレーションになりますね。彼との仕事は、今も新鮮ですか?
「ペドロは毎回、私にまったく違うキャラクターを与えてくれる。彼の映画で演じた4人のキャラクタ−は、似ても似つかないわ。彼がそんなすばらしいイマジネーションを持っていることにも、私にはそれができると信頼してくれることにも、感謝の気持ちを強く感じる。彼は友達で、家族のようでもあるわ。彼とそんな関係を築けたのは、宝くじに当たったような幸運なことよ」
――アルモドバル監督の仕事のしかたには、どんな特徴がありますか?
「彼は細かいところまですごくこだわるの。すべての色、すべての素材を、全部自分で選ぶ。私がこの映画で着る衣装のいくつかは、彼が自分で見つけたものよ。パリから『あのシーンのドレスを見つけたよ』と喜んで電話をしてきてくれたわ(笑)。彼の映画では、撮影開始前に長い準備期間が必要。リハーサルもするわ。この映画でも3、4カ月をリハーサルに費やした」
――リハーサルは好きですか?
「リハーサルをやるかどうかは、映画によって違う。リハーサルをやる時間がないプロジェクトもあるし、現場で即興を好む監督もいるわ。リハーサルが絶対に必要な作品もある。たとえば、この後に私が出た『NINE』みたいにね。俳優はどちらのやり方も経験すべきだと思うわ」
――「抱擁のかけら」の直後に、ミュージカル「NINE」の現場に入られたのですよね?
「1カ月しか間がなかったの。その1カ月は、体を休め、『NINE』のためのリサーチをしたわ。それからまたリハーサルに入ったの。『NINE』の現場では1日12時間もダンスをした。幸い、誰も怪我をしなかったけれどね。あの映画も、最高の共演者に恵まれた、すばらしい作品だった。ロブ・マーシャル監督が、あのチームワークを築いてくれたのよ」
――「それでも恋するバルセロナ」で、09年のオスカー助演女優賞に輝きました。受賞した瞬間、どんなことを感じましたか?
「信じられない体験だったわ。舞台に上がった瞬間に、これまで私を支えてくれた人、私を信じ続けてくれた人、友達、家族、それらの人々の顔がいっせいに浮かんできたの。あの夜何が起こったのか、冷静に思い出せるには何カ月もかかったけれどね」
――オスカー像は、今どこに置いてあるのですか?
「永遠の置き場所は、まだ決められないでいるの。一番いい場所を見つけてあげたくて。最初のころはうれしくて、どこにも置いていきたくなかったから、いろんなところに連れて行ったのよ。だから彼はいろんな都市を訪れたことになるわ。今、ここには連れて来ていないけれどね。ちょっと休ませてあげているのよ(笑)」