「イーストウッドへの過度な期待からか…」インビクタス 負けざる者たち ikuradonさんの映画レビュー(感想・評価)
イーストウッドへの過度な期待からか…
クリント・イーストウッド×モーガン・フリーマンといったら、オスカー鉄板の名コンビ。しかし、残念ながら今年のオスカーへのノミネートはなかった。失礼な話、ちょっと納得がいく。イーストウッドの持つ安定したクオリティーはあるが、ハリウッドのA級監督ならみな無難にこのレベルを撮れるだろう。イーストウッドへの過度な期待からか、何だかパっとしない。あのネルソン・マンデラを描くのだから、皆が知っていること以上を描く、それを作り手は覚悟しないといけないだろう。
題材はこの2人にとってパーフェクト。映画化するダイナミズムもある。だが、この手の話はどうしても説教っぽくなりがちだ。もちろんこの実話自体は信じられないようなミラクルのお話なのだけど、あまりにもマンデラの成し遂げていることが著名すぎるのか、なんとも予定調和に感じてしまう。贅沢だけどさ。
しかしながら、マンデラの生涯をただ単純に伝記映画化したわけではない。同国ラグビーチームの再生という、捻りが本作にはある。実はこの企画自体は、フリーマンがイーストウッドに持ちかけたそう。当初、マンデラの自伝を映画化する企画があったとき、マンデラ自身が演じてほしい俳優にフリーマンを指名している。それを受けて、フリーマンはずっとマンデラを演じるときを待っていた。マンデラの自伝映画は生半可なものじゃないが、この”ラグビーチーム再生”を主軸にすることで、物語としての瞬発力とユニークさが具わった。名監督のもとには、名プロデューサーが集まるのだなと再認識。それともその逆か。どちらにせよ、裏方を含めたチームワークが要なのだ、この映画のラグビーチームのように。
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