「無臭のイーストウッド。」インビクタス 負けざる者たち ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
無臭のイーストウッド。
あのイーストウッド卿が描いた作品にしては、
まったく彼の臭いが(すいません、こっちの字で^^;)
漂ってこないストレートで爽快な作品だった。
私もそうだけど彼のファンからすれば、
お~そうきましたか。という印象を持った気がする。
いや~別に彼がひねくれ爺とかそういうことでなくて、
(言ってますけども^^;)
今回はマンデラという偉大人物を掘り下げるにあたり、
自らがへりくだって演出してみました…という感じか。
よく纏まっているし、本当に爽やかなラストを迎える。
第一こんなラストが珍しい(実話なんだから当然です)
というわけで、あのグラン・トリノから一転、
何でもこなしてしまう卿が、また佳作を撮ってしまった。
自分の身内に銃を突きつけていた人間を警護に付け、
国家の恥とまで言われた差別象徴チームを援護する。
マンデラという人は、どれだけ器が大きいんだとまで
思えるが裏を返せば根っからの政治家。目先の利益
より将来を見据えた展望策を練るような人物だった。
これだけ国民のことを考えていても、自身の家族
問題は解決できないまま…という部分がとても切ない。
そんな彼の信念を知れば、フランソワも共感するはず。
今までこんな人物に逢ったことがない。と語るシーン、
本当にその通りだと思った。だから国が変わったのだ。
マンデラとは私生活でも交流のあるM・フリーマンは
彼がのり移ったかのような会心の演技。素晴らしい!
フランソワ役のM・デイモンは身体から作り込んで、
こちらもまた素晴らしい演技。文句のつけようがない。
たった二時間で全てを描くのは難しいところだが、
そつなく纏めたイーストウッド卿のお手並みも鮮やか。
彼の臭いがした部分といえば(こだわってるな~私も)
冒頭の不穏なワゴン車の猛走シーンと、
ラストの黒人少年と白人警官がにじり寄るシーン。
ドキドキさせといて、スパッと落とす、遊び心?のある
演出手段がやはり巧い(そこが好き)と思わせてくれた。
ただ好き好きでいえば、私は「グラン・トリノ」のが好き。
(加齢に負けざる卿でいて下さい。臭いはいいですから)