「出来過ぎた展開がほとんど事実と想像しつつも…」インビクタス 負けざる者たち KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
出来過ぎた展開がほとんど事実と想像しつつも…
あまりにも綺麗に設定が
整い過ぎていたためか、
何故か感動が薄れてしまったかのような
印象の作品。
1964年 マンデラ投獄
1990年 釈放
1994年 大統領に就任
同年 ラグビーチーム名と
ユニフォームの存続で周囲を説得
そしてそのラグビーを通じて
国民の心を一つに
1995年 ワールドカップで南ア優勝
と、結論に向け出来過ぎ感ある展開で、
マンデラ大統領の赦しや寛容の姿勢により、
黒人白人混合の大統領警護チーム内でも、
ラグビーチームと国民の間でも、
黒人の家政婦を雇う主将の家庭内でも、
タクシー運転手と黒人少年の間でも、
ラグビーを通じて国民の融和が進む展開は
作られた物語かと思わされる位だが、
ワールドカップ優勝後に
大統領と主将の間で交わされた会話が
事実であるとのことなので、
かなりのエピソードが
真実に近いものであろうと想像した。
また、
多分にイーストウッド監督の演出以前に、
各エピソードを上手く構成した
原作や脚本の巧妙さがあったのだと思うが、
しかし、あのスタジアムでの
ワールドカップ再現シーンと並行して描く
徐々に進む国民融和の描写は、
監督の才能の賜物なのだろうと思う。
そして、ただただマンデラ大統領の
人間としての器の大きさを
認識させられる映画だったが、
投獄前は武装闘争にまで走った彼が、
刑務所内で白人文化を学んだものとしても、
具体的にどのようにして
不屈の魂と寛容の心を獲得出来たのか、
興味は尽きない。
ただ、スンナリと感動の世界に
浸れなかったのは、
この映画で描かれた期間においては
彼の人格が完成され尽しており、
家族に関すること以外には
多分にあったであろう人間としての苦悩が
ほとんど描かれなかったことが、
私的には映画としての感動が薄れてしまった
理由だったかも知れない。